33腕相撲と恵美の告白
「こんなスゴい力があるなら荷馬車なんて要らないじゃないですか。大事なことなので二回言いましたよ」
ご立腹ですね。
「目立ちたくないんです。殺されるのはゴメンですから。しかも、昨日までは僕は非常に弱かったんです。こんな力は隠しておくに限るでしょう」
「またまた、ご冗談が過ぎますよ」
いや当たり前でしょう。
「自殺願望があるとでも?」
「いや、そちらではなく弱かったなんておっしゃるから」
あぁそっちか。
「真実ですよ?僕は昨日までレベル1でしたから。さやかさんもご存じです。昨日カードを作った時にレベル6でしたから」
「「は?」」
二人とも驚いてるね。
当然ではあるか。
「あんまりいじめてやるんじゃないよ」
セーフ、だって、まだご飯中なのです。
お腹減ったのですよ。
固まった二人を放っておいて食事を再開する。
「美味しいなぁ。恵美さんのご飯最高です。明日は皆に味わって貰えると思うと楽しみですね」
「ありがとうございます。でもレベル1って?兄さんから聞きましたけど、今日だけで三百頭以上狩ったんですよね?」
回復した。
まだ食べ終わってないのですが…
「食べながら話しても良いですか?行儀悪くて申し訳ないんですけど…お腹減ってて」
「あっ、ごめんなさい。私としたことが、食事の邪魔をするなんて」
恐縮してるね。
まぁいいっすよ。
「食べながらで良ければお話ししますよ?」
「ありがとうございます」
好奇心には勝てなかったらしい。
「狩った頭数でしたっけ?多分四百位ですかね」
「兄さんのホラ話じゃないんですね。でも、昨日はレベル1だったんでしょ?どうやって狩ったんですか?」
「別に戦いは四百vs一じゃないですよ?1つのグループは多くて七頭ですから、各々のグループごとで倒してます」
「具体的には?」
「索敵して見つけて、近付かれるまでは投擲で数を減らしておいて、槍や剣で接近戦ですね」
「合理的な動きなんですね。肉の解体作業みたいに手順が決まっていて、綺麗にさばいていく感じですね」
「ある意味そうですね。倒した後は、頸動脈を切って血抜きしながら、左耳を切る所まででルーチン化してますね」
「倒してすぐ血抜きしてるんですか!!?」
疑問を持つところか?
「もちろん。すぐ血抜きしないと肉が臭くなって不味いじゃないですか」
「いやいや、規格外の話ですよ?血抜きは街に帰ってからが鉄則なんですから」
なんで?
「理由を聞いても?」
「コボルトですよ、コボルト」
綱芳さん復活したんすか。
「コボルトがどうかしたんですか?」
「瑞木さんらしくないなぁ。奴等は血の匂いに凄く敏感じゃないですか。血抜きなんかしてたら、ウヨウヨ集まって来ちゃうでしょ」
何をおっしゃる。
「当たり前でしょう。今日もそうやって集めましたよね」
「兄貴の説明が分かりにくいのよ。コボルトが大量に現れ続けて、疲労や人数不足で全滅しますからみんなやらないんですよ」
「は?一回の戦闘って一分くらいですよね?しかもパーティが一般的だと聞きましたが…サクッと倒して移動すれば簡単にいけませんかね」
「いいえ。普通はフォーメーションをとって、倒すのに五分から十分かかりますから、不可能ですね」
長っ。
「僕の場合初戦は、オーク二頭とゴブリン二頭で一分かかってませんよ」
「規格外の戦闘力ですね。それなら、血抜きをしても大丈夫ですね」
綱芳さん、アンタが言うな。
「慣れたので、今日は逆におびき寄せて倒しましたが。でも、綱芳さんの方が強いじゃないですか」
ステータス的には完全に真実だ。
「あはははっ。瑞木さん、冗談にしてもキツいですよ。兄貴が可哀想だ」
何をおっしゃる。
「そういう冗談は止めてください」
綱芳さん怒ってるが冗談じゃないし!!
「わかりました、綱芳さん腕相撲してみましょう。僕は綱芳さんに勝てませんから、ただし本気でやって下さいよ」
「本気でやっても勝てる気しませんけどね」
マジなのか?
「ごちそうさま。さあ、行きますよ」
「何処へ?」
「薪を割る処へですよ。テーブルを割りたくないですから」
「そんなに力がかかると?」
「良く言いますね。僕よりも綱芳さんの力が心配なんですよ?」
「有り得ないと思いますけどね」
本気出せば多分貴方の楽勝だ。
みんなで薪割り場所に移動。
「ちょっと場所を借りますよ。土で台を作りますからね」
「「精霊魔法ですね!!」」
二人して声デカッ。
「そうです。ただ声は抑えてください。我が友、大地の精霊よ、我が意をくみ、我が前に台を生成したまえクリエイション」
大地の精霊が現れ、土で台を造り出していく。
薪も取り込んで、左手で握るバーまで再現。
芸が細かいな。
「「おおおおお」」
出来上がる様を榊兄妹が、両手をグッと握り込んで叫んでる…
二人して同じリアクションだ。
血は争えない。
「さあ、始めましょう」
「凄く本格的な台になりましたけど、崩れたりしませんか?」
「大丈夫な強度になってるはずですけどね。一回だけだし崩れても構わないでしょう?アームレスリングバーでも始めるなら、頑張りますけど?」
「流石にそれはイロモノ過ぎる気がします」
「はい、手を置いて。始めますよ」
「俺が瑞木さんに敵うわけ無いのに…でも、ここまで場を整えられたら、やるしかありませんね」
「兄貴…安心して負けていいぞ。声かけはあたしがしてやるからさ」
三人ともが持ち場について、恵美さんが笑顔のままでスタートの合図をする。
「レディ…ゴーッ」
二人ともの右手に力が入る。
筋肉が隆起し、作った台にも強い負荷がかかりはじめた。
「綱芳さん。まだ本気出してないでしょ?僕だったら瞬殺かと思ったら、いい勝負になってるし」
「瑞木さんこそ、手を抜いてないですか?」
「僕は結構限界間近ですよ。喋るのキツいです」
「嘘ですよね」
言いつつ力を込める綱芳さん。
やるからには、真剣にやる。
負けるつもりでやるってのは失礼だからね。
「真剣にやってますよ」
限界まで力を込める。
渾身の力を込めても、綱芳さんの腕は微動だにしない。
何か手はないかな。
「うおおおおお!!」
雄叫びをあげてしまった。
腕だけでなく全身全霊で力の限り振り絞る。
少しだけ、押せた気がする。
でもまだまだ全然足りねえし!!
くっそぉ!!悔しいな!!
身体強化とか目覚めねぇかな。
あっ1つ思い付いた!
「頑張るぞ!!」
叱咤激励のスキルだ。
おぉスキルの発動が感じられる。
気合い入ってきた!!
「ぬおおおおお」
響く雄叫び。
綱芳さんだ。
しまった全員にかけてたらしい。
僕を含めた恵美さんも気合いが凄い。
ぐいぐいと押され始めた。
もうホントに身体強化しかねえよ。
我が体に身体強化よ宿れ!!
「最後にふりしぼるぜっ!!」
と声を出した途端に、ベキッと音を立てて左手のバーが、双方共にぶち折れた。
支えがなくなり、僕の手の甲が台へとついてしまう。
ポーン。スキル取得【身体強化初級】
えっ?
このタイミングなの!?
「試合終了」
「くっそぉ、負けたーっ!!」
「嘘でしょ?」
綱芳さんだ。
いい加減にしてくれよ!!
「これで嘘ならどれだけ演技派なんですか、僕は!!二人ともバーを折ってるし」
「そうですね。すみません」
ふらふらと帰っていく綱芳さん。
なんだっていうのさ。
「ごめんなさい瑞木さん。あれには理由があるのよ。冒険者の時の嫌な思い出が…」
そうか。
まぁ色々あるよね。
「気にしてませんよ」
「実は昔…」
おう!!
「待ってください。それは綱芳さんから直接聞きますよ。知られたくないかもしれないですし」
「そうですよね。兄弟だからって勝手に話して良い訳じゃないですもんね」
そのとおりだ。
「まぁ。これで綱芳さんの強さは確認出来たと思います」
「目で見ても半信半疑ですけどね」
何があったんだよ…
まぁ聞かないけどね。
「ちょっとこれを見てください。折れたバーです。樫の木ですよね?メッチャ堅いんですよ。持ってみてください」
バーを渡す。
「ビクともしないわ」
当然です。
「余りに堅すぎて、薪にならずに打ち捨てられてたから拝借したんですからね」
「斧でも?」
「そうですね」
「それを素手でぶち折ったと?」
「ええ」
「凄いですね。瑞木さん!!」
アレ?
「綱芳さんもですってば!!」
「わかってますよ。それでお話ってまだ迷惑じゃないですか?」
何が聞きたいの?
「良いですけど」
「さっきの続きを店で聞きたいんです」
「物好きですね。戦闘の話なんか面白いですか?」
「そうですね。姉さんと一緒で物好きなんですよ。きっと」
何?
「確かにデート中は色々聞かれましたよ。可愛かったなぁ」
「へーそうなんですか。是非私も聞きたいわ」
アレ?
視線に凄味が増しましたけど何か?
しかも腕を組んで胸を押し付けてどうしたんですか?
僕は貧乳属性なのであまり嬉しくは無いのですが…
それはそれとして感触は凄いですね。
フルフルと二の腕に触れる感触は良いものです。
極上のマシュマロかな。
僕は差別はしないので良いものは良いと評価するのですよ。
欲情は皆無ですけどね。
「瑞木さん?」
店に戻ったらしい。
胸の評価に集中しすぎた。
「いや、結構なおてまえで」
「もしかして、胸の事?気に入ってくれたのかな。姉さんに勝てるのは唯一胸だけなんですよね」
いや、ごめんなさい。
私は胸もさやかさんの方が好みでございます。
「それで、何を聞きたいですか?」
「話をそらしましたね」
何の事でしょう。
聞きたいと言ったのは貴女ですやん。
「精霊魔法をどうやって使えるようになったんですか?」
「詠唱ですよ?」
「精霊魔法の詠唱なんてどこで手に入れたんですか?伝説の魔法ですよ?」
「偶然なんですけどね。レストの魔法に」「ちょっと待ちな」
セーフだ。
「ちょっと待って」
「この子は良いと思うけど、聞かれたらなんでも答えるのは止めときな。せめて奴隷契約を交わした子のみにするべきだね」
そうだね。
伝説の魔法だものね。
「お待たせ。この事は他言無用にしてね。」「もちろん」「詠唱に精霊への祈りを入れたら使えたんだよ」
「そうなんですか。慈悲深き水の精霊よ。私の願いを聞き届けてください。って感じですか?」
水の精霊が現れた。
空中で聞き耳をたてている。
「おお出来たね!!恵美さんの願いを言わなきゃ。その為に出てきたんだもの」
「私にも出来た!!えっ?そうか。んー。瑞木さんの心が欲しい…とか?」
何言ってんのこの子!!
水の精霊が、それ無理のジェスチャーをして消える。
「いきなり何言ってるんですか?僕が本気にしたらどうするんですか!!」
「良いですよ。どうぞ」
「意味わかって言ってます?とその前に精霊にありがとうと感謝してください。彼等には人格がありますから」
「水の精霊さんありがとうね。瑞木さんと上手くいくように力を貸してくれると嬉しいわ」
何言っちゃってんのこの子!!
ホントに何を言い出しちゃったの!?
そんなことしたら、精霊が頑張っちゃう可能性大じゃん。
「ストップ!!本気なんですね。わかりました。二つお話があります」
「はい」
素直だな。
「一つは僕はさやかさんに告白して保留中です。他の人ならともかく、妹の恵美さんとそういう関係になるのはキツいです。さやかさんとの結果が出るまで保留したいです」
「思うところがないでもないけど…まぁ良いわ」
「良かった。あと申し訳ないです。僕はさやかさんの様な胸が好きなので、貴女の胸に興味を持てそうにありません。誤解がありそうなので一応伝えておきます」
「そうなの。男は皆、兄さんも含めて私の胸を見てくるの。そういうのが無くて好きになったんだけど、ますます気に入ったわ。もし好きになってもらったら、私自身の魅力って事でしょ。燃えるわ」
可愛いじゃん。
瑞木美孝18才
レベル28(1)
体力値215(1)=215
魔力値219(1)=219
力339(1)=339
知力231(1)=231
俊敏さ214(1)=214
器用さ220(1)=220
幸運値250(1)=250
魅力437(1)=437
風10(1)=10
称号
貧乳好き、童貞、心清き者、地母神の養い子、殺害童貞喪失、狩人、精霊の親友、コボルトの天敵
スキル
鑑定、他種族言語理解、スキル取得補正、レベルリセット、緊急避難、スキルリセット、収納ポケット、レベルアップ時の魅力値上昇十倍補正、範囲観測初級、叱咤激励、大声、槍レベル13、剣レベル8、投擲レベル19、打撃レベル1、短剣レベル20、解体・交渉・召喚中級、精霊魔法信頼級、回復・催眠・風魔法・馬術・身体強化初級、降霊術
相性
綱芳(340)さやか(653)恵美(455)風の精霊(5,8)武司(70)
奴隷
なし
設定
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