22レベルアップと榊家
「八時か」
「思ったより早く着いたねぇ」
あぁ、そうだねセーフ。
「でも、まだたどり着けてはいないけどな」
「瑞木さん、なぜここに停まるんですか?」
もちろん。
「目的地であるあそこに敵が集まってるんです」
さっき戦った穴までは百メートルほどの距離がある。
木立があって直接の目視は無理だが、セーフの索敵網では丸裸だ。
「コボルトがすごいことになってるものねぇ」
そぅ。
「だから、ここから詠唱をしながら、荷馬車を進めて、到着時に殲滅したいんです」
「わかりました。合図をされたら、荷馬車を進めれば良いんですね」
打てば響くとはこの事。
「そうです。じゃあ、詠唱しながら肩を叩きますから進んでください」
「わかりました」
「いきますよっ!!大気に遊びし風の友達よ、我に力を与えたまえ。疾駆する刃となりて我が敵の命を刈り取りたまえっ!ウィンドカッター!!」
半分詠った辺りで綱芳さんの肩を叩く。
荷馬車は進み、穴まで六十メートル付近で精霊たちが動き出す。
同時に穴に群がったコボルトが此方を向いた。
「頼むぞウィンドカッター!!」
思わず応援した。
「頑張るんだよ」
セーフまで…
精霊に伝わったらしい。
飛んでいく刃の数が倍になった。
「スゲー」
綱芳さんだ。
穴の周りにいる五十三頭のコボルト。
第一陣の刃がその内の三十の頭を薙ぎ落とした。
威力の落ちた風は、再度血に満たされた穴の中心部で渦巻き、細く研ぎ澄まされて残りのコボルトに襲いかかる。
風の刃が過ぎ去った後、残りのニ十三頭は絶命して立っていた。
頸動脈を切られ、頭を撃ち抜かれ、心臓を貫かれて立ち尽くすコボルト。
荷馬車が近付いて行くと皆ゆっくりと前のめりに倒れていった。
「一撃…」
綱芳さんの瞳に憧れが見えてしまった。
更に称号に【瑞木に心酔】とか足されてる。
止めてください。
そういう趣味はないのですよ。
「随分頑張ってくれたねぇ。礼はキチンというんだよ。風の精霊にさ」
そうだった。
「風の精霊よ、ありがとう」
礼を口にしたら風の精霊が現れて、まとわりついてきた。
純粋に可愛いなコイツ。
「さて、血抜きと積み込みをしますよ」
「はいっ!!」
うぅっ、心酔具合が痛い。
「まぁ、奴にもそういう趣味はないよ。大丈夫さ。憧れだね」
それなら、まぁいいか。
「索敵よろしく」
「はいよ!」
血の海にコボルトの血を更に足す作業に従事し、荷馬車に積み込み終わるまでに、四頭のコボルトが葬列に加わった。
合計五十七頭のコボルトを荷馬車に積んでギルドへと戻る。
かなり重そうなので速度は控え目。
荷馬車の後ろに腰掛け、索敵しながら、ニ十五分の道のりでステータスの確認。
「うおお。5ポイントずつ上がってる」
「やっぱり相性の影響が大きいねぇ」
「そりゃあね。ここまでくれば、自己の奴隷化なんて必要ないレベルだ」
「いや、そうでもないよ」
何故?
「理由は三つ。普通は簡単にはレベルアップなんて無理だよ。」
「そぅだね」
「相性アップが一般的じゃないこと自体の理由が不明だし」
「確かに」
「そもそも、さやかと綱芳の数値はただ事じゃないからね」
「突出してるよね。まだまだ検証しなきゃ。わからないよな」
「そう言えば、綱芳さんもレベルアップしてるね。同一パーティー扱いだ」
「そうだねぇ」
「元からレベルが高かったから朝からの合計で6上がっただけだけど…」
「凄い。瑞木の数値より余裕で高いからね」
そう。
「なんで、冒険者してないんだろうっていう力だよ」
「ただ、スキルは少な目だし、槍のレベルも高くないからね。きっと性格が向いてないんだろうね」
「そう言えば称号に【甘ったれ】ってあったよね」
「そういう性格ってことか。ま、別にそういう生き方の人もいるよね」
「凄いやつだからって戦わなきゃいけないわけじゃないからね」
「槍を握った時の顔を見ると向いてないよね」
そんなことを話ながら門扉を抜けると、武司さんから声をかけられた。
「よう、綱芳止まれよ。瑞木、昨日は稼がせて貰ったぜ、ありがとよ」
「武司さん、おはようございます。荷馬車お借りしてますよ。助かってます」
荷馬車が止まる。
「そりゃあ何よりだ。バカスカにコボルトを狩ってるみたいだな。商人連中にはありがたい話だ」
「でも、まだまだ集まって来てるみたいですよ」
「どんな狩り方をしてるか知らねぇが、簡単には減らねぇさ」
そうなのか。
「また、肉を売り払ったら行ってきますよ」
「頑張るなぁ。気を付けて行ってきな。俺はまた仮眠に戻るぜ」
「ありがとうございます」
「おうよ。綱芳も気を付けて行ってこいよ」
「あぁ、頑張ってくるぜ」
武司さんは綱芳さんの言葉に一瞬目を見開くと、ニヤリと笑みを浮かべ…
手を振りながら仮眠室へと消えていった。
瑞木美孝18才
レベル18(1)
体力値153(1)=153
魔力値156(1)=156
力267(1)=267
知力163(1)=163
俊敏さ151(1)=151
器用さ157(1)=157
幸運値171(1)=171
魅力277(1)=277
称号
貧乳好き、童貞、心清き者、地母神の養い子、殺害童貞喪失、狩人、精霊使い
スキル
鑑定、他種族言語理解、スキル取得補正、レベルリセット、緊急避難、スキルリセット、収納ポケット、レベルアップ時の魅力値上昇十倍補正、範囲観測初級、叱咤激励、槍レベル13、剣レベル8、投擲レベル19、打撃レベル1、解体・交渉中級、精霊魔法上級、短剣レベル20、召喚魔法・回復魔法・催眠魔法・風魔法初級、降霊術
相性
綱芳(240)さやか(261)恵美(92)
奴隷
なし
設定
一部非表示
楽しんで頂けましたか?
また明日の18時にお会いできれば幸いです。