19レベルアップと血の香り
「兄さん。今日はどうしたのよ?ギルドに来るなんて珍しいじゃない」
さやかさんが訝しげに綱芳さんを見ている。
「あれ?聞いてねえか?瑞木さんとモンスターを狩り集めてくるのさ」
「本気なの?死にに行くの間違いじゃないの?」
「俺は戦わねぇし、危なくなったら逃げる予定さ」
そうだね。
そういう契約だ。
綱芳さんには、補助をしてもらえばそれで十分だね。
「はぁ?聞いてると、寄生虫のように聞こえるんだけど間違いない?」
やばっ。
かなりの怒りが感じられる。
「待って!さやかさん!!僕が荷馬車番を頼んだんですよ。積み込みも大変ですからね。しかも、武司さんから荷馬車を借りてもらったし!」
「あぁ、そういうことなの。兄さん。説明が解りにくいのよ」
あからさまにホッとしたのが見えた。
良かった。
「すまんな。じゃあ、瑞木さん、さっさと行きましょう」
そうですね。
「ではさやかさん、また後で」
「はい」
頬を染めてる。
可愛いなぁ。
出発し、街の門扉を抜ける時に榊さんを探したが見つからなかった。
そのまま10分ほど走り続け、街道から昨日戦闘した場所まで戻る。
「かなり早く着いたな」
「え?こんなに近くまでオークが来てるんですか?」
あれ?
綱芳さんって元冒険者ですよね?
「僕は昨日ここで戦いましたよ?」
「そうですか」
少し怯えたように呟いた。
「じゃあ荷馬車で待機してください」
「わかりました」
綱芳さんが愛用の槍を握りしめる。
兜鎧小手のフル装備だ。
僕は荷馬車を停めた場所から少し離れると、夜の内に確認した詠唱を開始する。
「大地に眠りし精霊よ。我に力を貸し、我が前に穴を穿て。グランドフォール」
目の前に穴が形成される。
土の精霊達が力一杯穴を掘り、みるみる内に直径十メートル深さ十メートルの巨大な穴が形成された。
「やっぱ、強すぎだねえ」
セーフが笑いかけてくる。
「予想通りだから良いけどね」
「まず最大値が知りたかったんだろ?」
そうそう。
「次は埋めてみよう。大地に宿りし友よ、我に力を貸し、我が前の穴を埋めたまえ」
今度は見る間に穴が塞がった。
やっぱり精霊が気に入る言霊の方が動きが速いみたいだ。
「誰だって好きな言葉を聞くのは心地良いよね」
「そりゃそうさ」
その割にはセーフさんとの相性が上がりませんね。
「じゃ今度は小規模に。大地に宿りし精霊よ、我に力を、ミニマムグランドフォール」
今度は三メートルの直径で五十センチの深さの穴になった。
「よしっ!!イメージどおりだ」
「後は奴等を待つだけだね?」
そうなんだけど。
「ただ待つのは勿体ないからね。ちょっと風の精霊に頼んでみようと思ってね」
「何をだい?」
自分の回りにザックからコボルト謹製の短剣を並べ、愛用の剣と槍も置く。
「いくよ。大気に遊びし精霊よ。我が友よ。我が匂いを運び、森の奥まで届けておくれ。ウィンドポーター」
上から体にまとわりつくように風の精霊が降りて、地面に置いた武器を舐めるように過ぎ去っていった。
「頼んだよ」
呟いてセーフを見る。
「昨日手入れしたとはいえ血の匂いが染み付いてるからねえ」
そういうこと。
「索敵はお願い」
「任しとくれ!!」
セーフも気合い十分だね。
「後、することは…馬車をここに近づけとくか」
綱芳さんに合図すると荷馬車を引いてきてくれた。
「これって魔法ですね。スゲー!!スゲーや!!」
いや照れるんだけど。
「ここで血抜きをしてから荷馬車に載せます」
「わかりました。血抜きまではお願いしますよ」
血抜きも苦手なのかな。
「はい」
「瑞木!くるよっ!!」
セーフの声が響いた。
勇ましい声もいいなぁ。
「方角と距離は?」
小声だ。
「荷馬車がある方さ。距離は60。ゴブリンだよ。数は3」
「ゴブリンか。綱芳さん、3つ来ます。よろしく」
「はい…」
走りだし荷馬車を背にしたところでゴブリン3頭が駆け出してきた。
ルーチンワークの様に両手で短剣を投擲。
急所を貫かれた二頭が倒れ、一頭が向かってくる。
槍で喉を一突きして終了。
「仕留めましたぁ」
宣言だけして次の仕事へ。
まず、遠くの二頭から装備品を剥ぎ取って、穴まで運搬。
「まぁ、軽いかな」
頭だけ穴に入れて左耳を回収。
頸動脈を切って血抜きをする。
次は近場の一頭を同様に処理して一息つく。
「綱芳さん血抜きが終わったらよろしくお願いします」
「おぅ、任されました」
「次のお出ましだよ」
セーフの声が飛ぶ。
「了解」
指差す方を見る。
「オークだよ。三匹さ、距離は70」
穴の対角線上か。
引き付けて剣を投げてみるか。
ザックから剣を出し、構えをとって準備完了。
オークが僕らの方を見た瞬間に走り出し、突進してくる。
急速に縮まる距離。
まず一投目。胸を貫いて崩れ落ちた。
二投目。腹に深く刺さるが絶命には至らず。
三投目。頭に突き刺さったまま崩れ落ち、穴に頭を突っ伏して事切れた。
腹を裂いたオークは、近付いて来たところを槍で首をはねて昇天させる。
二頭は近場にあったので、問題なく処置。
胸でしとめたオークだけ引き摺って穴に運んで処置した。
これで剣が6本だね。
短剣や楯もいい感じだ。
「セーフ、どんどん血が溜まるね」
穴の中は血の海だ。
まだ匂いの拡散は必要ないな。
「次はコボルト、数は5だよ」
コボルトのやつらを見る。
連携が厄介だけど1頭ずつなら大したことない。
オークと同じ方角から来ている。
引き付けたいな。
短剣を一番近い二頭に投擲して槍をつかんで走り出す。
「あと三頭」
言いながら首をなで斬り、残り二頭。
斜めに槍を走らせ、あと一頭。
円を描いて下から跳ね上げて終了。
「はい、終わりっと」
こんな感じでその後も、コボルトを中心に倒すこと30分で、合計51を葬ることに成功。
「完全に僕とセーフのコンビの相手にならないね」
「まぁ、魔法すら使ってないからね」
「レベルも7つ上がったし、スキルもサクサク上がって動きが滑らかになってるね…更に弱いものいじめ感が増しそうだ」
「そんな言い方するんじゃないよ。アンタが真剣に戦ってるのは私が一番知ってるよ!!遊ばずに真面目にやってる限り真剣勝負さ。卑下すんじゃないよ」
真剣勝負…
「そうだよな。頑張るよ」
街へと引き返した。
瑞木美孝18才
レベル13(1)
体力値126(1)=126
魔力値128(1)=128
力235(1)=235
知力133(1)=133
俊敏さ126(1)=126
器用さ130(1)=130
幸運値137(1)=137
魅力196(1)=196
称号
貧乳好き、童貞、心清き者、地母神の養い子、殺害童貞喪失、狩人、精霊使い
スキル
鑑定、他種族言語理解、スキル取得補正、レベルリセット、緊急避難、スキルリセット、収納ポケット、レベルアップ時の魅力値上昇十倍補正、範囲観測初級、叱咤激励、槍レベル13、剣レベル6、投擲レベル18、打撃レベル1、解体・交渉・精霊魔法中級、短剣レベル19、召喚魔法・回復魔法・催眠魔法・風魔法初級、降霊術
相性
綱芳(96)さやか(201)
奴隷
なし
設定
一部非表示
楽しんで頂けましたか?また明日18時にお会いできれば幸いです。なお、SSを書き上げれたら、適当な時間にアップするかもしれません。