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女神とともに転移した世界がまるで地獄(エロゲ)でした  作者: 瑞木美海
序章 地獄へのいざない
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01現状把握と非情な現実

やっと本編です。読んで楽しんで貰えると嬉しいです

 真っ暗な空間にいた。


 何故?と考えた瞬間に、下から薄ぼんやりした影がゆっくり浮かんでくるのが見える。

 さっきまで何もなかったはずなんだけどな。


「やあ、こんにちは」

随分明るい声だ。

明瞭で聞き取りやすい声だから、爽やかなお兄さんって感じで好感もてるね。


「どうも、こんにちは」


 反射的にそう返して、こんな真っ暗な中でこんにちはは微妙だと思い始めた。


「やぁ、中々素直な感じで結構。君は瑞木美孝(みずきよしたか)君で間違いないよね?僕は木暮武志(こぐれたけし)というんだけど」

にこやかに本人確認を開始された。

会ったことない人に名前を知られているってなんか怖い。


「……一応そうなんですが…木暮さん、貴方は何者なんですか?」

と当然の疑問を口にする。


「ん?あぁ、随分落ち着いているから覚悟を完了してるのかと思ったら、単に記憶が不明瞭なんだね」

落ち着き払った声で続けられた小暮さんの言葉に、僕の頬を無意識に涙が流れていた。


「は?…あれ?」


「落ち着いて話を聞いてくれると有り難いんだけど…君はね。鉄骨に押し潰されて息絶えたんだよ。しかも運悪くとかでなく…自分から……だね」

少しの呆れと憐憫を含んだ声は、変わらず明るく落ち着き払ったものに聞こえた。


「へ?自分…から?」

そう言った自分の声を聞きながら、僕はある光景を思い出し始めた。


 薄汚れた老犬が工事現場に入り込んで疲れ切った様子で座っている。

 と、そこにクレーンから外れて二本の鉄骨が落ちてくるのが見えた。

 運んでいた一輪車を投げ捨てて犬のもとへ走り込んだ。

 勢いもそのままに抱え込んで、土のう袋を投げるように犬を砂山に放り投げて安全を確保。

 記憶は…

 そこまでだ。


「バイトを始めてすぐに、土のう袋を運びまくったからな。流れるような美しいフォームだったと思いたいなぁ。その後はどうなったんだろ、さっきの話だと僕がここにいるってことは死んだってことですか」


「ん?思い出した?そう、君は犬を助けて鉄骨に胸を貫かれ、押し潰されて亡くなったんだよ。ちなみにフォームはまだまだだったと言っておこうか」

ちっ、結構頑張って力をつけたんだけどな…

まだまだか!


「ということは此処は死後の世界ってことですか?」


 思わず最大限の声で確認してしまった。


「もちろんそうだよ。ただし、君の場合は事情が少し特殊だからここにいるんだけどね」

そこで初めて、木暮さんが端正な顔の額に眉を寄せて話始めた。


「実は君が助けた老犬ね…寿命だったんだよね……身体中を癌におかされて、後5分程で命が尽きるというその寸前に、鉄骨で押し潰されて死ぬべき運命だったんだ」

えっと…

声は落ち着いて聞こえるけど、トーンが下がり気味に聞こえるんですけど…


「つまり、君が助けたことによって、君は本来のほほんと数十年生きるはずの命を散らし、老犬は地獄の5分間を味わい尽くしてからここに来たんだよね」


「えっと…それって、まさか?」


「うん、残念ながら非常に無意味…というか、彼女にとっては辛い時間が増しただけって事だね」

最後は淡々と言われました。


「はぁ…」


僕の口からはため息しかでない。


「まぁ、そうなるよね。でも、君も良かれと思ってやったことだから気にしてもしょうがないよ。うん、しょうがない!」

また、明瞭な明るい声で告げられた。


「いや、そう言うならそんなこと教えてくれなくていいでしょう。すごい落ち込みますよ」

どんな責め苦だよ。


「いやぁ、悪いね。確かに…普通なら君には何も告げずに輪廻の輪の中に放り込んで、僕の仕事はお仕舞いなんだよ」

はははっ。

明るく厳しい事をおっしゃる。


「だって、さっき君も言ったように、理由聞いても落ち込むだけで誰も喜ばないからね。今回の事例は稀だけど、寿命の誰かを助けて代わりに死んじゃう事例自体は数十年に1回位はあるし、気にしても仕方ないから、いつもはさっさと輪廻の輪に戻って貰うよ」

…結構事務的なんですね木暮さん。

…でも……

数十年に1回は自分的にはかなり稀だと感じるけどな。


「というと、今回はどんな稀な話の為に僕の心が削られたって言うんですかい?」


「うん。実はね。僕がこの仕事を始めてから最初の事例になるんだけど…あぁ、僕が何者かまだ答えてなかったね。察しはついてるかな?…神と呼ばれてるよ」

まぁ、輪廻とか言ってましたしね。

想定通りではあります。


「やっぱそうですよね。わかってました…それはそれとして、初事例ってのは具体的に何なんです?」


「物分かりがよくて結構だね。実は…君が助けた彼女、つまり老犬は大地母神なんだ。具体的には、異世界に、ある仕事の為に生まれ変わる準備をしていた八百万の神の一柱で、名前はセーフって言うんだけどね」

何故八百万の神の名前がセーフなのか全くわからないんだけど…


「えっと…よくも苦しませてくれたなとご立腹ということですか?」


「いや、神がそんなこと言うってどんだけ心狭いんだ?って話だよね…そうじゃないよ」

心を削って弱らせてから殺るって話じゃないのか…

良かった。


「彼女が、君に恩を感じたから転生する仕事先の異世界に、一緒に連れて行きたいと言ってるんだよ。もちろん、君が承諾することが前提…なんだけどさ」

これは…

異世界転生もののテンプレが来たってことですよね!!

次の話は13日の18時に予約するつもりです。気に入って貰えたら幸いです

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