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女神とともに転移した世界がまるで地獄(エロゲ)でした  作者: 瑞木美海
第3日目 もう後悔はしない…そのために動き出すと決めたんだ!
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SSメイドさんの野望

楽しんで頂ければ幸いです。

「うちのお嬢様にも困ったものよね…」

ラウール伯爵家につかえるメイド、亜理砂はため息をつく。

もちろん、誰かに聞かれたら大事になるので、口の中で呟く程度にしか発声していない。


「いくら、結婚相手が最低最悪の奴だったからって…何も百合趣味に走ること無いのに…貴族としては一番潰しがきかない方法じゃない」

さらに、自分も恋人役としてとばっちりを被っていた…


「確かに今は、特に不自由を感じる訳じゃないし、行き遅れるような年じゃないんだけどさ…」

あくまで自分は、だ。

お嬢様は今年で25歳なので、貴族の結婚適齢期はとっくに過ぎている。


「私はまだ20歳だから…平民としてはまだね…」

成人が18歳だから、その後の5年間が適齢期って奴だ。

貴族の場合は、世継ぎを残すのが当たり前だから…

適齢期は、15歳からの5年間になるわけだ…


「ちょうど、私が楓加お嬢様に恋人役として、寵愛されたのも5年前なんだよね…」

その時、お嬢様は適齢期ギリギリって状態だったのだ…

まだ、何も知らない子供みたいな15歳の私は、お嬢様に溺れた。

溺れさせられたと言ってもいいと思う。


「どう考えても、じり貧なのよね…ここらで方針転換しないと誰も幸せじゃない未来しか見えないわ…」

今はまだ、お嬢様のお父様が御館様として、伯爵家を取り仕切ってるから、何不自由ない生活が保証されている。

お嬢様の恋人たる私も、随分優遇されている。

って言うか、優遇され過ぎている訳だ。

何せ、使う予定もないのに毎月大金貨2枚の給料と、各種魔法及び剣技等の武芸全般、一般常識などの授業をみっちり受けさせられている。


「普通なメイドに受けさせる授業内容じゃない事位、わかる程度の知識は頂いてるわよ…」

どう考えても、今後のための保険だ…

当主が変わった後に、追い出されるお嬢様を頼むって意味しかあり得ないわよね…


「ぶっちゃけた話、このままなら追い出されるでしょうね…間違いなく!」

何故ならば、受け継ぐ跡取りのお兄様は、お嬢様とは母違いのうえ、年が親と子ほども離れている。

お嬢様は御館様が年若い侍女と作られた子供…

要するに跡継ぎ様からは、目障りな小娘という認識しかない。

しかも、政略結婚に同意しない嫌な小娘だ。

つまり、使用人の中にも、お嬢様の味方はほぼ私だけだ…


「御館様が亡くなった途端に、否応なしに屋敷から叩き出される以外の選択肢なんて無いだろうなぁ…」

だからこそ、私とお嬢様に冒険者として食っていけるだけの教育を施してる訳ですな…

っていうか!!

御館様!

そこまで用意周到にするなら、お嬢様に現実を告げてくださいよ!!


「あなたの娘さんはこの期に及んでも、冒険者の修行は社会勉強の一環だというあなたの言葉を盲信してますよーっ!!」

そうである…

楓加お嬢様は苦手なのだ!!

裏を読むとか、深く考えるとか、深謀遠慮とか。

普通な貴族が生活の中で獲得するであろう、これらの才能に欠落してる。

貴族が生きていくのに必要不可欠な能力を持ち合わせていない時点で、確かにアウトなので、冒険者にしようとする御館様の判断は正しい。


「でもなぁ…欠落してるって言うと、私達も重大な部分で欠落してるのよね…冒険者として…」

そう、私とお嬢様は真面目に訓練を受けている…

けど…

私は各種攻撃魔法全般が得意で、お嬢様は各種補助魔法全般が得意なんだよねぇ…

つまり、2人とも前衛のお仕事は苦手なわけです。

いや、別に我が儘を言ってるつもりはない。

ちゃんと、毎日素振り1000本とランニングと模擬戦闘は欠かしたことが無いのだから…


「要するに前衛職の才能がないのよ…極端に…とすると、考えなきゃいけないのは、どうやって冒険者をするかって事よね…」

普通に考えても、私達の価値は高い。

それこそ、こんなに高品質な魔法士は、そうそういないレベルになってることを知っている…

だけど…

それもこれも、信頼できる前衛職を確保できればって話だ…


「敵を見つけて魔法を立ち上げるまで、防いでくれる前衛がいないと死んじゃうのよね…」

なおかつ、お嬢様なんて、補助魔法全般が得意っていう、超高性能なのに、前衛がいない今の私たちには、使いどころがないお荷物だ…

でも、まぁ…


「ゴブリン位は相手に出来るから…地道にレベルを上げればなんとかなると思うんだけどね…」

問題は、レベルが上がるその前に、ゲスな冒険者の奴等に囲まれて、慰みものにされそうなのよね…

信用に足る仲間を探すのは、並大抵ではない。

騙された時に一番ものを言うのは、腕っぷしという現実から目を背けても意味がないことを亜理砂はわかっていた…


「はぁ…色々物騒な今追い出されたら、色々死ねるわよね…いっその事、お嬢様が百合趣味に見切りをつけて、平民か騎士辺りの男とくっつかないかなぁ」

そうすれば、結婚して、祝いを貰いながら、御館様に援助を貰える状態で冒険者を始められるのよね…

追い出されるのとは、雲泥の差だ。

私も別の男とくっついて、4人パーティーになるもよし、見込みのある奴だったら、私も結婚か妾になって、3人パーティーになってもいいな…

っていうか。

これだけわかってるのに、お嬢様から逃げ出そうとか、罠にはめてやろうとか、思わないのは…

私もあの楓加お嬢様の事が思ったよりも好きなのかなぁ。

まぁいいや…

お嬢様に付き合えるところまで付き合って差し上げますよ…


「しかし、もう御館様も70歳だから…あんまり猶予も無いんだけどね…」

因みにお兄様は57歳です。

はい、楓加お嬢様よりも年上の姪っ子や甥っ子が普通にいますよ…

御館様も、もう少し考えろよなぁ…


 などと、亜理砂が御館様に不遜な意見を持った次の日に事件は起きた。

 いつもの様に、2人で娼館に借りた部屋で行為を致そうとした時の事だった。


「はぁっ!!何?ここの扉から凄い気配がするの!亜理砂!!ぶち破るのよ!!」

いきなり何を?

確かに甘い、疼くような気配を感じるけど…

他の人が使っている部屋に入り込むのは、完全にマナー違反に決まっている。

出入り禁止になるのは、勿論、下手な話になったら、トンでもない賠償に発展しかねない…

ここは、ラード随一と名高い娼館なのだ…

使っている人達だってハンパないのだから。


「止めましょうよ。邪魔して恨まれるのは、嫌ですよ?」

考え事をしながらだったので、強く言えなかったのが悪かったのだろうか…

否!!

既に楓加お嬢様の耳には、何も聞こえていなかったのだ…


「ええい!!まどろっこしいわね!こんな扉位で、私の事を止められる訳無いのよ!!」

えっ?

何かを考える隙を与えられる事無く、楓加が補助魔法を自分にかけて、ドアノブを破壊した。

開け放たれたドアの向こうに見えたのは、楓加と同じような年の青年が、楓加にのし掛かられ、無理やり童貞を奪われている姿だった…


「あぁ…」

言いながら、自分の意思とは無関係に足が進む…

しばらく後には、自分もそのベッドに体を横たえて、愛撫に参加していた…

自分で自分が信じられなかった…


 途中で、童貞だった人が逃げ出そうとして、階段や廊下や別の部屋から別の人が集まって来たので、部屋から出られず、大人しく楓加お嬢様の慰みものになる宣言をして、元のベッドに戻って続きを再開した。

 嫌ではないのかしら?

 彼のお尻を狙った用心棒の3人は壁に投げ飛ばされて、気絶してるので、嫌ではないみたいね…


 カオスと化していた事態に終止符を打ったのは、不可思議な青年だった…

 雰囲気は、思い悩んで重苦しいにも関わらず、受ける印象は年若い、成年になったばかりの年下を感じさせる…

 一言で言えばヤバイやつだった。


「天河……」

何か話しているけど、聞き取れない。

舌を動かすのに忙しくて、言葉を理解することが出来なかった。


「ほいっ!!」

この言葉を聞いた時に、頭から霧が晴れたように、思考がクリアになった。

そして…


「いや…2対1だよ…このお姉さんとは、そこで、呆然としているその子がお相手…だって、この人処女だったし」

と、天河という青年が話すと…


「そうよ…まぁ…男も悪くなかった…わね。…何か腑に落ちないけど。でも、私から誘ったんだしね…もう行くわ。さよなら」

楓加お嬢様がつぶやいて帰ろうとする…

その腕をとって、歩きにくそうな足元をフォローしながら帰途についた。

扉の賠償には金貨2枚が必要だった。

これ位で済んで本当に良かったわ!


「ねぇ、楓加様…今日はどうかしたんですか?」

帰途の途中の馬車の中で聞いてみた…


「え?えぇ…まぁ」

生返事だ…

心を奪われた5年前の私なら泣いてたと思うが、私の目的は既に固まっている!!

そして、その目的には、この状況は願ってもないことだった…

お嬢様は、今日の奴の事を!


「お嬢様!今日の天河っていう人の事が気に入ったんですよね?情報を集めますね!」


「えっ?そんな…あなたの恋敵よ?」

恋敵っていう意味では、楓加お嬢様の方が相応しいかなぁ…

なんせ、私も天河って人の事が気に入ったもの…


「いいんですよ…それよりお嬢様。これで百合趣味に別れをつげて下さい!!」


「貴女は?」

もちろん…


「私も、天河の事を狙いたいと思いますので、気にしなくて良いですよ?ただ、私はお嬢様も好きなんで、今までのように一緒に頑張りましょうね…」


「それだけ、あっさり言われると、一緒に過ごした5年間を嘆きたくなるから…勘弁して、そこだけは」

ふむ、良いけどね。


「わかりました。じゃあ私は情報を収集に行きますよ…」

と言いつつ、私は町へと情報を仕入れに消えた。



「うえーん…天河さんが、私に求婚してくれたけど…変なスイッチが入っちゃって…断っちゃった!!どうしよーうっ!」

情報収集して戻ったらお嬢様が泣いている…

天河が求婚に来たらしい。

このバカツンデレ!!

しかし、天河ってどんな情報網を持ってるのかしら?

名前すら名乗ってないのにどうやって、ここにたどり着いたの?

名前と特徴的な鎧を目印にした私でも、情報収集に手間取ったのに…

恐るべし!!


「今ならまだ間に合います。今日は宴を拠点で開くんですって。そこでもう、こっちから冒険者パーティーに入れなさいと言いに行きましょう!!」


「そのうえで、実力を認めたら結婚してあげるって言うのね?」

って言うか、既に結婚する気満々のくせに…

仕方ない人だなぁ…

でも、ここで突っ込むと面倒くさい方向に切れちゃうから言わない!


「そうと決まれば支度です。いつもの訓練用防具と、実戦用武器を持って出発です!!」

宵闇迫る時間に、2人は馬車でギルド裏の天河の拠点だと情報屋に聞いた場所に向かう…

一世一代の告白をさせる亜理砂の目は真剣そのものだった…

本編の裏話でした。

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