118ゴブリン狩りと星になった短剣
「さてと、準備を始めるか…」
みんなが馬車でここに到着するまでは、8分程度か…
まぁ、準備の時間としては十分だな。
まずは位置決めと拠点作成だ。
うちの仲間内では僕との相性値が、既に全員300を超えてるからな…
そこを考慮してと、でも、あまり近づくと危険だしなぁ。
悩む…
「よしっ、200m地点にしよう!!大地の精霊よ………」
一方、移動の馬車の途上、メルーが瑞木から聞いた予定を伝えようとしていた。
「みな、聞いてくれ。瑞木さんから聞いている予定を伝える!!漏らさず聞いてくれ!!」
良く通る声が4台の馬車に響き渡る。
不思議と馬車の走る音の中でも耳に届く声だった。
「おう、よろしく頼むぜ」
エースが返す。
「うん、これから我らは、ゴブリンの集結しつつある場所の近くまで、馬車で乗り付ける。そこには敵の攻撃が届かないシェルターを作って置くとのこと。まずはその中で待機せよ!!とのことだ」
「はぁ?待機?何でだ?」
天河だけでなく皆が疑問に思ったことだった。
戦う覚悟なら出来ているつもりなのだ…
「我らが弱いからだ!!まず、待機して、瑞木さんの戦い方を観察し、戦い方を学べと仰せなのだ!!あとは、全員に渡した範囲観測を試し、これに慣れよ!!」
メルーの怒りを、あらわにした言葉だった…
「ゴブリンなんだろ?集まっても大したことないんじゃないのか?」
秋虎が軽口を口にした途端、その首の裏をリーフが掴んで持ち上げる。
「集結しつつある数は、1000頭です!!しかも、さらに多く集結中だそうですが!!それでも、まだ軽口が叩けるのですか?この中で、その数のゴブリンと渡り合えるのは今のところ私だけのはずですが?」
リーフが目線の位置まで吊り上げ秋虎を見据えて話す。
「せ…1000ですか?ご冗談を…」
猫のように背中を丸め、顔面蒼白で聞き返す。
「秋虎!!元騎士団の貴方が何を言っているのですか!!私がその類いの冗談を一度でも言った事がありますか!!」
「あ…ありません…でも、そんな数を瑞木は一人で相手にするんでしょう。そんなこと…完全に自殺行為ですよね?俺たちも死ににいくだけなんじゃ…」
ガタガタ震えだし、カチカチと歯がかち合う音をさせながら、振り絞るように告げる秋虎は、完全に萎縮している。
「愚かなことを…集結したゴブリンの次の行動を考えれば、何が起きるかわかるでしょう?」
心底の憐れみがそこにはあった…
そして、その場の全員の脳裏に、蹂躙されるラードの町がよぎる。
「逃げ場は無いんですね?」
君里が問う。
「無い!!当たり前でしょう。何処に行く気なんです!!そんな場所など無いことは、身に染みているでしょう」
「ははっ!!何を沈んでるんだい?皆。私たちは凄く幸運なんだよ!?大丈夫に決まってる」
陽気な朱音の声が響いた。
「何を根拠にそんなことを言うのよ?訳がわからないわよ?」
直が疑問を投げ掛ける。
「敢えて言うよ。私たちのご主人様の瑞木さんは、根拠もなくさっきみたいな指示をする人かい?さっきの指示は、私たちが強くなるための努力をしろって言ってるだけだ!!」
目を輝かせて言葉を紡ぐ。
「つまり…何さ?」
道緒も口を開いた。
「つまり、微塵も負ける気なんて無いんだよ!!私たちのレベルを上げ、戦い方を見せて、有用性を示し、戦闘に慣れさせる…ついでに範囲観測を使って、索敵も練習させようっていう。訓練を実戦でしようっていう事さ!!極楽じゃないか!!なぁメルー?リーフ様のように私たちも戦えるようになるってことだろ?」
笑みすら浮かべながら皆に告げる。
「そうです。私も瑞木さんを信じていますよ。あの身のこなしを見れば、信じるに足ります。因みに合図があったら、全員で、短剣を投げ始めることと聞いていますから、実地訓練もありますからね」
淡々とメルーは皆に伝える。
納得したものもいる。
絶望に打ちひしがれるものもいた。
しかし、馬車は容赦なくひた走り、セーフが叫ぶ。
「さぁ!!ここの坂を登りきったところに、シェルターがあるからね!!気を付けないと落ちるから十分注意しな。私は瑞木と合流するから、もう行くよ!!」
セーフが飛び去ると、みんな不思議に思い、顔を見合せる。
「なぁ、ここはラードだぜ?なんで、こんなに長い坂があるんだよ?」
「そうよね?あと、落ちるって何処に?ラードは平原の国よ?」
そんな言葉を交わすうちに、瑞木の待っている頂上に、4台の荷馬車が到着した。
慣れない坂道に、馬はバテバテになっている。
「良く来たね!!待ってたよ!!」
のほほんとした雰囲気すら漂わせて、瑞木が声をかけるが、皆、その先に見えている光景に釘付けになっていた。
「瑞木さん!!これは…絶景ですね…魔法ですか?」
そりゃそうさ。
「あぁ、綱芳さん…もちろん、いつもの様に大地の精霊に頑張って貰いましたよ」
「精霊魔法か!!」
そうだよ。
「こんなところに崖なんて無かったですよね?」
まぁ、騎士団なら走り回った場所だしね…
「そうですね。リーフさんが知ってるこの場所は、平原の一角だったはずですよ?今は50m程隆起させ、シェルターを作り、更に周りを柵で囲んでありますけどね!!」
「簡単に仰いますが…来るまでの道程も考えると、気が遠くなりそうな範囲の大工事なんですけど?」
それなりに疲れたけどね…
「そんなの…皆の安全の為なんだから、どうって事無いですよ。って、まぁ僕も大地の精霊にお願いしてる身なんですけどね。ははっ…」
「はぅっ!!ダメです…そんな…衝撃が強すぎます。そこでそんな殺し文句と笑顔…」
何言ってるんです?
「ふぅ…瑞木、周りを見てみな…」
なんかあった?
「なんか特殊な事でも起きたかい?セーフ…」
見回すと自分を中心に、男も女も関係なく、皆、熱い視線を投げ掛けてきている…
「人たらしって奴だねえ。まぁ、自覚なしって位が花だ」
人たらしって、玲子さんにも言われたなぁ。
「感動してくれたの?」
「端的に言ってそうだね。指示をくれてやんな。あと、面子の中で一番最低の相性は415で春臣だ。ここに着てぐっと上がったよ。参考にしな!!まぁ私が見てるから大丈夫だけどね!」
「よっしゃ、経験値が届く範囲が増えたってことだね。移動範囲が増えるのはありがたいぜ!!」
「おう、その通りだよ!!」
「じゃ、僕はいくよ。今後の参考にしっかり見てね!!あとは朱音さんの指示には絶対服従!!この人に従えば必ず生き残れる!!従わなかった人はお仕置きを覚悟して。最後に、合図したら、短剣の投擲で敵を倒して。短剣が4本あるから1頭は倒したいね。4頭以上倒せたら、出来る範囲でご褒美を用意しよう!!」
ご褒美の辺りで、皆の目の色が変わったが…
まぁ、良いでしょう…
「頑張ってね」
「「「はい!!」」」
全員で唱和され、すごい音量だったが、外には聞こえない!!
風の精霊のお陰だ。
「いってきます」
そう言って、セーフと共に崖から降りる。
とは言っても僕は落ちるって、表現の方が正確だけど…
身体能力的には、ジャンプで既にこれ位の高度に楽々達しちゃうから別に苦もないしね。
でも…
皆は心配させちゃったみたい…
聞こえないけど泣き叫んでる子達がいる。
笑って手を振ると、リーフさんが皆に説明したらしい。
ホッとした顔が見えたので、次の行動に移った。
「行くかな」
地面スレスレの所で爪先で横方向に蹴って移動開始。
接敵までは直線距離で200mだから、1秒もかからずに移動できちゃうけど、みんなは慣れていないから見失っちゃうよね。
3秒かけて50mの距離まで接近して、戦闘開始!
「地味に行きますか!!」「頑張んな!!」
収納から短剣を6本取り出して立ち止まる。
ゴブリン達は、まだ気付いていない。
整列して、密度の濃い辺りに目掛けて、コボルト謹製の短剣を投擲開始!
「1投目、思いっきり行ってみるか」
「直線上には3キロ以上離れてたら何もいないように見えるけど…気持ち上向きに投げな!!」
「わかった!!」
並んでいるゴブリン達の頭部を狙って、投げる…
キュン!!
僕の手を離れた短剣は、文字通り一直線に突き進み、最初のゴブリンの頭部を破壊した。
更に同一線上にいるゴブリンの頭が次々に爆裂していく。
超速度で物体が通りすぎている為に、切ったあとに衝撃を残し、飛び散らせているのだ。
こうして、首から上の無くなったゴブリンが一列分78頭出来上がった。
「やりすぎだよ、瑞木。短剣はどうなったかねぇ…」
遥か彼方を飛んでいく短剣は、既に短剣の形を保っていない。
超速度で空気の中を突き進む影響で、摩擦熱によって、全体を溶かし、蒸発し始めていた。
第2宇宙速度を軽々と突破している短剣は、刀身がなくなり自重が2%になりながらも、とうとう大気圏外まで到達した。
重力から解き放たれた短剣を見たものはいない。
「見たものはいない。じゃねえよ。大丈夫なのかよ?」
「だからわからないっていうのさ!!第2宇宙速度を軽々と突破しているのは間違いないし、計算上、大気圏外まで行くだろうさ。でも、私の観測域はまだ、そこまで行ってないからね!!わからないもんはわからないよ!!とにかく、力加減をして投げな!!」
まぁ、仰る通りです。
「さて、第2投は攻撃に気付いて、こっちにくるやつらに向かって投げますかね…」
今度は、初速を第1宇宙速度くらいでいってみるか。
なるべく、密度の濃いところっ!!
フォン!!
今度は、爆裂までは起こらない。
一直線に進む短剣は、その直線上のゴブリンの頭を貫き続け、少しずつ速度を低下させていく。
50頭辺りを過ぎ、勢いを減らした短剣は、最後に65頭目のゴブリンの額に突き刺さって止まった。
「ふむ、これくらいが良いかな?」
「まぁ、妥当な線だね…それはそうと、囲まれるよ?」
囲む?
「もう倒したよ…」
近付いてきていた12頭のゴブリンは全て槍で頭を貫いて葬っておいた。
そのまま、収納に入れ込む。
周りに、余裕が出来たので、8回短剣を投擲した。
その後、また、すり抜けて詰めかけてきたゴブリンを槍で倒す。
「セーフ、状況は?」
一旦、槍での排除のみに集中しながら話し掛ける。
「討伐総数は、約700頭だよ。集合していた奴等の約半数が死んだね。でも、ゴブリンヘビーやラージ辺りもこっちに移動し始めてるから、合図を出すには頃合いじゃないかい?」
そうだね…
「合図をよろしく!!待機してくれている皆に、レベルアップした力を感じて貰おう!!僕はこのまま、こいつらを引っ張って高台から狙いやすい位置まで移動するよ!!」
「はいよ!!」
セーフが詠唱すると、その手から光が溢れ、皆への合図が開始される。
「じゃ、僕もあっちに行きますか」
ゴブリンが着いてこれる程度の速度で移動開始。
しかし、ステータスの数値が見難くなったなぁと思ったら、少し改善したみたい…
ま、これ位でいいか…
瑞木美孝18才
レベル41(79)
体力値52462(780)=4100万
魔力値52504(780)=4100万
力52767(780)=4100万
知力52540(780)=4100万
俊敏さ52546(780)=4100万
器用さ52512(780)=4100万
幸運値52546(780)=4100万
魅力524730(780)=4億
風6286(780)=520万
水5765(780)=450万
火4675(780)=360万
土5628(780)=440万
光3211(780)=250万
称号
貧乳も好き?、童貞、心清き者、地母神の養い子、殺害童貞喪失、狩人、精霊の親友、コボルトの天敵、難病の克服者、皆のアイドル、鳥人
スキル
超鑑定
他種族言語理解
スキル取得補正
緊急避難
レベル・スキルリセット
収納ポケット
レベルアップ時の魅力値上昇十倍補正
叱咤激励
大声
降霊術
精霊魔法信頼級
交渉・召喚魔法上級
解体・身体強化・範囲観測中級
回復・催眠・風・火魔法・馬術初級
武装レベル:槍21、剣8、投擲103、打撃1、短剣95
妻
リーフ、恵美、セーフ
相性
綱芳(563)さやか(742)恵美(1732)武司(95)玲子(55)朱音(3402)メルー(701)道緒(536)直(701)メアリー(641)燕(551)レモン(547)流々(597)里乃(662)リーフ(4369)奈美枝(203)御影(621)ユリア(682)枩李花(691)霞(763)他39名(平均601)
天河(632)春臣(582)君里(562)秋虎(617)アーサー(359)太陽(79)七海(71)エース(633)他19名平均(576)
精霊:風(16,9)水(14,5)火(11,7)土(14,3)光(7,9)闇(12,0)
奴隷
朱音・メルー・道緒・直・メアリー・燕・レモン・流々・里乃・リーフ・御影・恵美・ユリア・枩李花・霞他39人
天河・春臣・君里・秋虎・エース他19人
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