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俺は女の子と絡むのが難しい時期にある  作者: 駿河留守
女難期の俺と女の子たち
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四女、綾見優奈

「お帰りです。お兄ちゃん」


・・・・・・俺はお兄ちゃんになった覚えはない。俺はひとりっこだ。だから、妹がいた記憶はない。

優華を連れて家に帰ると鍵が開いていた。優美さんでもいるのだろうと思い扉を開けると10歳くらいの女の子がいた。ツンテールの童顔。その容姿は将来を期待させる。きっとこの子は美人になるだろう。そんなひまわりのような笑顔を持つかわいい女の子。だが、大きな疑問がひとつ。この子誰?何で家にいるの?


「優奈じゃない」

「お帰りです。優華お姉ちゃん」

優華が詰まらずに普通に話したというどうでもいい驚きと優美さんの妹がまた現れた。優華同様唐突だ。


「翔平君、お帰り。あら、優華もいっしょだったの?」

「うん」

なんだこの反則的な姉妹は。欠点が見当たらない。完璧すぎるしまいだ。こんな容姿端麗の姉妹を見たことがない。だが、この世界は常にバランスがとられている。一方が優秀だともう一方が不優秀である傾向にある。この姉妹は4人。まだ、ひとり会っていない。つまり、その子がすごくブサイクである可能性がある。でも、この姉妹を見ていると俺が考えたその法則が待違っているような気がしてならない。


「ほら。あいさつしなさい」

「えっと、綾見優奈です。10歳です」


え、笑顔が天使だー!

まだ、この世の絶望というものを知らない汚れのない純粋な瞳。真東校には彼女が出来ない作らせないという負のオーラに包まれてみんながみんな希望も夢もない絶望に染まった瞳をしているがこの子は違う。優美さん、優華同様に吸い込まれそうなきれいな瞳にそんな純粋さ混ざっている。この子が魔王で世界征服を企んでいても絶対に倒せない。ゲームオーバーしそうだ。


「や、安那翔平です。16歳です」

「優華は自己紹介した?」

「・・・・・・・し、した」


優華は人によって話し方が変わるみたいだな。いわゆる人見知りということだな。優美さんや優奈ちゃんの時は言葉がスラスラと出てきていたが俺の時は聞き取るのが難しい。


「後、会ってないのは優樹かしら」

「初めて聞くのでまだ会ってないですね」

「綾見優樹。中学2年生だから今は13歳かな?部活動が忙しくてなかなか会えないけど、会った時はよろしくね」

「は、はい」


長女の優美さん。次女の優華。四女の優奈ちゃん。これでもし三女の優樹も同じようなルックスを持っているのなら俺は神様を恨む。なんでこの姉妹ばかりに施しを与えるのですか。俺には何かいいところはないんですか!

だが、俺の嘆きは神様には届かない。


「さぁ、翔平君も上がって。おやつを用意したわ」

「・・・・・・あ、ありがとうございます」

「どうしたの?」

「なんでもないですよ」


この世界について考えています。邪魔しないでください。


「手をちゃんと洗いなさよ」


お母さんみたいなことを言っている。いや、俺の母さんになったんだけどね。実感がない。18歳となると大学に通っていてもおかしくない年だ。彼氏を作ってまだまだ遊びたい年頃でもあるはずだ。そんな優美さんはなぜ俺よりもおやじを選んだんだ。俺は選ばれなかったことよりもおやじに負けたことに腹立たしい。

いろいろと許せないことが積み重なる。だが、その積み重ねた許せないことが一気に崩れる。

二階の自室にバックを放り投げて手を洗いリビングを向かう。そこはまるで俺の家じゃないみたいだった。俺の家に女の子が3人もいる状況。しかも全員かわいい。優奈ちゃんは小学生を見てほとんどの大人が抱く感情のかわいいだからな。俺の守備範囲に小学生は含まれてないぞ。ロリコンじゃないぞ。


「翔平君も食べないの?」

「食べま~す」


ケーキが用意されている。久々のケーキだ。常に家計は火の車だった。だから、こんな高級なものを食べる機会なんてなかった。今日はいい日でもある。ケーキが食べられるし、こんなに女の子に囲まれている。それが法律上肉親でもうれしい。最高だ。俺が待ち望んでいた状況だ。ぎこちないがすぐになれるさ。ここで女の子とどう接すればいいのかを学んで経験値を貯めて次につなげよう。

逆に悪い日でもある。いくら肉親と言っても奴らは納得しない。それがマジで恐怖だ。

さて、ケーキの置いてあるリビングのテーブルに向かう。その時、俺は何か強烈な威圧感に襲われる。右端から黒いオーラを感じる。普通の黒ではない。紫を含んだいかにも暗黒のようなオーラを感じる。俺の右端は台所だ。俺はなぜか恐る恐る台所を見る。

そこは暗黒界の入り口だった。

すまない。表現を大胆にし過ぎた。状況を説明しよう。台所が異常に散らかっていた。フライパンはそのままコンロの上に放置してあって油が固まっている。皿が流し台に大量に積まれていて冷蔵庫に入っていないとおかしいはずの食材がまな板の上や床に放置してある。いろんなキッチンや床に液体がこぼれている。その散らかりっぷりはまるでそこだけ世界が違うようだった。優美さんたちがいるところがヘブンだとすれば台所がヘルになっている。

いやいや、おかしいだろ!今朝まで優美さんがいてめっちゃ清潔な感じだったのに、一体俺が学校に行っていた10時間近くで一体何があった!


「どうしたの?翔平君」


呼ばれたのにすぐに来ない俺を心配した優美さんがやって来た。何でそんな平気な顔をしているのか。何でそんな笑顔でいられるのか。もしかして俺には見えてないのか。あの暗黒界が優美さんは見えてないのか。優美さんだけじゃない。優華に優奈ちゃんは気付いてないのか。

 思い切って訊いてみよう。


「あの優美さん」

「何?」

「台所がまるでそこだけ世界が違うかのように散らかってるんですけど」

「そうね。ちょっと散らかってるわね」


どこがちょっと?


「後で片付けるいっしょにケーキ食べましょ」

「・・・・・・は、はい」


その言葉信用していいんだよな。明らかに朝飯を作るたえに使ったものが放置されているような気がするが信用してもいいんだよな。

とりあえず、ケーキを食べる。優奈ちゃんはほっぺにクリームを大量につけながら食べている。それを姉の優美さんが世話をする。なんとも和ましい光景だ。だが、その背後に異様な存在感を示す台所に散らかりよう。俺は一体どうすればいい。優華も見えてるよな。

急に見られて恥ずかしいのか顔を赤くして目線を外す。

訊いてみるか。


「なぁ、優華」

「な・・・・・・・何?」

「あの台所をどう思う?」

「・・・・・・・・・・・普通」


うん、分かった。こいつらおかしい。

あれが普通?ふざけるな!

俺は鉄壁症とかでもないぞ。だが、あの散らかり方は普通じゃない。おかしいだろ。大目に見て料理をした直後だったら許そう。だが、このケーキは明らかに市販の物だ。優美さんの手作りではない。少なくとも台所を使ったとすれば、昼飯の時だ。昼飯の時間を12時としてももう4時間は立ってるぞ。優美さんはどこか出かけたのか?


「優美さん」

「どうしたの?翔平君?」


ダメだ。俺にはこんなきれいで清潔そうな人があんな暗黒界を作ったという疑いを掛けられない。良心が痛むよ。だが、その疑いを晴らすためにも聞かないといけない。


「あの優美さん。今日はどこかに出かけました?」

「出かけたわよ。ケーキを買いに」


それは分かる。


「それ以外でこの家から出ましたか?」

「出てないわよ」

「そのケーキを買いに行くのにどれくらいかかりました?」

「ご近所にケーキ屋さんがあったからそこまで行って買ってきてすぐに戻って来たからどのくらいかかったかしら」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうしたの?」


近所のケーキ屋は知っている。歩いて10分くらいのところにある。行って帰ってきて20分。ケーキを選ぶのに多く見積もっても10分。外出時間は30分。あと、3時間と30分間の間になぜ片付けをしなかった!いくらでもやる時間あっただろ!


「あの優美さん。あの台所はいつからあんな状態に?」


落ち着くんだ。翔平。もしかしたら、昼飯を食べたのがすごく遅かったのかもしれない。もしかしたら、秘密裏に創作料理の研究をしていたのかもしれない。そうだ。こんな人がまさか片付けられない人の訳ないだろ。


「朝から」


片づけられない人だった~!


「え?朝からあんな感じ?」

「お昼ご飯を食べた後に朝より少し汚くなったかな?」


少しじゃないだろ!どういう感覚してんだ!

やばいよ。神様はちゃんとこのルックス性格の完璧な美少女優美さんにも補正を加えていた!綾見優美さんは片づけられない女なのか。だが、落ち着け。まだ、片づけられない女なのか証明されていないぞ。

俺はケーキを食べつくす。味わってない。味何て分からなかった。俺はケーキよりも女の子だ。目の前の完璧な女の子が完璧じゃないのかもしれないパニック。ケーキをのんびり食べている場合じゃない!


「ごちそう様」

「すごい勢いで食べたね」

「ケーキの早食いに挑戦しているもので」

「その割には食べ終わったのは最後だけどね」


優美さんは食べ終わったケーキの皿とフォークを回収して台所に運んでいく。ここまでは普通だ。

でその皿を・・・・・台所に・・・・・置いてある・・・・・フライパンの上に置いた。はい!そこ、おかしい!


「さて、みんなでゲームでもしましょうか」

「待て待て待て待て待てー!」

「どうしたの?急に騒いで?」

「どうしたもこうしたもないですよ!なんで片付けしないんですか!」

「・・・・・・・・ん~?」

「どうしてそこで首をかしげる!」

「む・・・・・・・無駄だと・・・・・思うよ」


優華がそんなことを言っているような気がした。さすが俺の耳。女の子の言葉ならすべて聞き取る。俺がこんなに騒いでいても。


「お姉ちゃんは・・・・・・その・・・・・・片づけをしたことないか」

「へ?」

「う・・・・・うちは全部当番制で・・・・・・その・・・・・お姉ちゃんは・・・・・掃除とかの担当じゃ・・・・・・ないから・・・・・・・やったこと・・・・・ない」

「え?じゃ、じゃあ。いつも誰があれを片づけるんだ?」

「優樹」


優樹超かわいそうなんだけど。


「掃除と・・・・・・か・・・整頓とは・・・・優樹の当番」


完全に姉二人がやりたくないことを押し付けられているじゃねーか!

まだ見ぬ優樹に同情するよ。


「翔平君もいっしょにゲームでもしましょうよ。暇だったお昼にどんなゲームがあったか把握してるから大丈夫よ」

「いや、そんなことを把握している暇があるなら片づけをしてください」

「なんでよ。だって、あれは」


俺は女の子の言うことは絶対に聞き取る耳を持っている。だが、この優美さんの言うことは訊きとりたくなかった。


「優樹がやることよ」


天使の声から悪魔の発言を聞いてしまったからだ。

これが言うに格差社会という奴だ。

俺はそれを目の当たりにした。

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