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俺は女の子と絡むのが難しい時期にある  作者: 駿河留守
女難期の俺と女の子たち
5/40

次女、綾見優華

学校からほど近いほぼ隠れ家的なところにある喫茶店に俺は女の子を連れて入る。ちりんちりんと弱々しい鈴の音が最初に客を出迎える。ここのマスターは基本的にまともに仕事をしない。ただでさえ少し暗い店内には誰もいない。

不安になったのか俺の裾を強く握る。

その不安そうな顔と姿。最高です。


「ちょっと待ってろ。マスター!」


俺がそう叫ぶと厨房から出てきた。整えられていない髭にぼさぼさで長い髪を結んでいる中年のおっさんがこの喫茶店のマスターだ。


「翔平じゃねーか。今日はシフトじゃねーぞ。バカかお前は」

「今日は客としてきたんだ。席借りるぞ」

「好きにしやがれ」

「コーヒーを二つくれよ」

「自分でやれ。俺は忙しい」


そういって競馬新聞とテレビとにらめっこする。


「今日こそは勝てよ~」


このマスターは喫茶店の少ない収入と競馬で生計を立てている。いつかつぶれそうな店だが俺たちバイトのおかげで何とか生き残っているという状況だ。

ちなみに競馬は最近勝ちがないらしい。俺には競馬の良さが分からないのでスルーしよう。


「コーヒーでいいか?」

「え・・・・・・・あ。は、はい」


はっきりしない奴だ。俺は厨房に入ってコーヒーメーカーに入っているコーヒーをマグカップに入れる。どこに何があるのかはほぼ把握している。逆に店長であるマスターの方が把握していないことがしばしある。

俺がここでバイトをしているのは女難期を脱するのが目的だ。だが、こんな客が来そうにもないところでなぜバイトをしているのかというとジャッジメント存在だ。それは大通りに面したコンビニで働けば、同じ年の女の子とお近づきになれる。でも、それをジャッジメントが許すはずがない。そこでこの隠れ家のような喫茶店なら店員の女の子とお客の女の子と仲良くなってもジャッジメントにばれないという作戦だった。

しかし、問題はひとつ。女の子がいないということだ。盲点だった。

コーヒーとミルク砂糖の瓶をおぼんにのせて席に運ぶ。

俺たちが座っている席は俺が計算に計算を重ねた席なのだ。隠れ家的なこの喫茶店が、もし見つかったとしても女の子と気軽に話せる席が今俺たちが使っている席なのだ。この喫茶店の窓少ない。よって必ず死角が出来る。そのすべての窓から死角にあるのがこの席なのだ。ここならこの子と気軽に話すことが出来る。完璧だ。

冷静に考えると無駄なところばかりに頭を使っているような気がする。


「お待たせ」

「あ・・・・・・・・どうも・・・・・・です」


ずっと下を向いたままでこっちを見ようとしない。

俺はその子前にコーヒーを置いて正面の席に座る。

俺はとりあえず砂糖を二杯入れてコーヒーを飲む。安物の業務用のコーヒーなのでおいしいとは言えない。俺は子供だから違いは分からない。


「どうした?飲まないのか?」


あまりにも話さないので話しかけてみる。


「あ・・・・・・あの。コーヒー・・・・・・苦手で」

「そ、そうなのか」


これは悪いことをした。女の子の気持ちを割ってやれない俺はやっぱりバカだ。


「オレンジジュースでいいか?」

「う・・・・・・・うん」


俺は再び席を立って厨房へ。


「くっそ!今日も負けだ!」


いつもだろ。

俺はコップを取り出して氷を入れてオレンジジュースを入れる。


「翔平」

「なんだよ」

「あの子はどうした?」

「何か俺に用があるらしい」

「そうか。全く女が寄らないお前にしては珍しいな」

「寄らないんじゃない。寄ってこないんだ」

「言い訳。言い訳」


店長じゃなかったら殴ってた。


「どれ。そのジュースは俺が運ぶとするか」

「別にいい」

「冷たいな~」

「いいから働け」


俺はそう言い残して厨房を出る。


「はい。どうぞ」


コーヒーを俺の席の方に避けてオレンジジュースとストローを正面に置く。

だが、飲むのを躊躇する。


「あの・・・・・・私・・・・・・お金」

「ああ、それは気にしなくてもいいぞ。マスターになすりつける」

「何か言ったか?」


無視しよう。


「で・・・・・・でも・・・・・・・なんかその・・・・・申し訳ないし・・・・・・」


優柔不断な子だな。会話が進まない。なら、俺から切り出そう。進行って言うものは男がするものだ。相手はかなり臆病なところがある。ここは優しく包み込むように話しかけるんだ。


「あのお」

「おい!翔平!」


マスターの響く声に女の子は肩をびくつかせる。

俺は若干いらいらしながら答える


「なんだよ」

「コーヒーが切れそうだ。後で買ってきてくれ」

「ああ、分かったよ」


落ち着け。こういう妨害は今までにもあったじゃないか。いつもことだ。取り乱すな。この子は話にくくなるだろう。


「それで」

「あ!そうだ!翔平!」


いい加減にしろよ。


「なんだ?」

「今週号の雑誌買ってきてくれ!お客さん用の!」


お客さん用じゃなくてお前用だろ。


「分かったよ。だから、少し黙ってろ」


・・・・・いつものことだ。だから落ち着け。


「翔平!」

「ちょっと黙ってろ!」


・・・・・・・あ。

女の子はびくびくしている。落ち着くためにジュースをすごい勢いで飲み始めた。やってしまった。いつもこうだ。せっかく女の子と話す機会がやってきてもこうやって怖がらせてしまう。こんなんだからいつまでたっても女難期から抜けることが出来なんだよ。

とりあえず、後でマスターを殴っておこう。


「あ・・・・・・・・・・あの!」


さっきまで声のトーンが低かった女の子が急に大きな声を出したので俺自身がびっくりした。女の子がすごい困っている。俺があまりにも周りに気をとられていて話がスあ生まないことに少し怒っているのかもしれない。反省しよう。

話を切り出したのは意外にも向こうからだった。


「これ・・・・・あなたです・・・・・・よね」


声のトーンが語尾に行くにつれて聞き取れなくなっていく。まぁ、俺の耳は女の子声がしっかり聞き取れるように改造してあるので問題ない。つまり、この子がもつ写真の人物と俺が一致しているかどうか知りたいわけだ。もし、それが俺じゃなかったすごい申し訳ない。

写真を確認する。


「うん、俺だ」


時期的には去年の夏だな。女の子をナンパするために海に行ってジャッジメントに見事に邪魔された記憶がある。だが、その写真をなぜこの子がもっている。


「これ誰からもらった?」


これは俺のプライバシーに関わる。もしかしたら、俺のイケメンな顔を使って詐欺的なことをネット上でしている奴がいるかもしれない。


「あ、姉・・・・・・・・から・・・・・・もらい・・・まし・・・・・た」


姉からもらった。この子お姉さんなんて俺は知らないぞ。この子の制服は俺の通う真東高校からほど近い東高校の制服だ。リボンの色からして同級生だ。何でそんなに詳しいかって?調べたのさ。どんな状況でも冷静に相手がどんな子なのか把握するためには情報が必要だ。

それでこの子の姉となれば、俺よりも年上であることはほぼ間違いなと言ってもいいだろう。俺に年上で知り合いの異性と言えば、隣のババアか和成の母くらいだ。それ以外に年上の異性って。


「・・・・・・・・・・・あ」


俺はその子の顔をよく観察する。急に見られて恥ずかしいのか顔を赤くして目線をそらす。黒いものを何でも吸い取ってしまいそうなきれいで大きな瞳。その特徴はある人物の特徴に似ている。というかそっくりだ。


「あのもしかして綾見優美さんの妹さん?」

「・・・・・・・は、はい」


ここで俺の中で何かが終わった。それはこの子が法律上叔母に当たる人物であるということだ。それはこの子根暗で暗いがそこに魅力があるこんなかわいい子を彼女とすることが出来ないということだ。法を犯してまで恋人という関係にはなりたいとは思わない。ただでさえジャッジメントのせいで彼女を作りにくい状況なのだ。


「あ・・・・・・・綾見・・・・・・・優華・・・・・です。16歳・・・・・です」

「えっと、安那翔平だ。同じ年だな」


俺の最悪な状況がここに完成した。同級生の叔母。ジャッジメントにはどう説明すればいいのやらか。


「で、その優華は俺に何の用だ?」


そのせいで俺は命の危機にさらされたんだぞ。


「お・・・・・・お姉ちゃん・・・・・・一度・・・・・・・甥っ子に会った方がいいって・・・・・・・言ったから」


優美さんの差し金か。おかげで俺は命の危機にさらされた。家で集合するという選択肢はなかったのか疑問が浮かぶぞ。


「と・・・・・・とりあえず・・・・・・お姉ちゃんの・・・・・家にも・・・・・・・一回・・・・・・・行ってみたかった」


おやじの話に寄れば、おやじは綾見家の家族全員に優美さんとの結婚を承諾しているらしい。おやじとは初対面ではないが、俺の家には一度も来たことがないから行ってみたいということか。では、なんで姉に頼まなかった?俺の命をなんだと思っている。


「お・・・・・お姉ちゃんが・・・・・・甥っ子に案内・・・・・・・してもらいなさいって」


すべての現況は優美さんのせいか。全くいい迷惑だ。

だが、女難期の俺よ。冷静に考えてみろ。これは見方を変えれば、同級生の女の子を家に誘っているということになるぞ。今までの俺にそんなことあったか?あるはずがないだろ。女の子を誘おうと思ったら男しか集まらない俺だぞ。そんなの俺の家についに女の子が遊びに来る。これは大事件だ。銀行強盗が人質をとって立てこもった並みに大事件だ。だが、優華の目的はあくまで優美さんだ。俺ではない。いやいや、目的は関係ない。女の子が俺に家に遊びに来たという事実が大切だ。


「あ・・・・・・あの」

「よしそうと決まればさっそく家に行くぞ!」


俺が勢いよく立ち上がると優華も慌てて立ち上がった。


「マスター。お金はバイト代から」

「分かったよ」


なんか目線が怪しい。優華でも狙っているのか、この独身。

だが、そんなことは気にしないで店を出て家に向かう。

俺はウキウキしている。これは明らかに女難期を抜ける予兆ではないのか?この子とは付き合うことはできないがこの子の友達とかとお近づきになって俺の青春ハッピー計画を実行するんだ。ジャッジメントにどれだけ邪魔されようが俺は耐えてみせる。

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