閉幕、東高祭
満足。その一言で十分だ。
優華を含む綾見家妹軍団の自立宣言ステージ発表は見事成功で幕を閉じた。我を忘れて人前でテンションマックスで歌いはしゃいでいる姿を俺はばっちりカメラで記録した。といっても華々しい優華の姿を見た新聞部が知り合いである俺にインタビューを求めてきたのだ。その代りとして優華の姿を収めた最高の写真を交換とした条件付きの物だ。
で、それは今俺の手の中にある。女難期である俺の心のオアシスが新たに得た。見つかったらダーク優華に襲われそうだけど。何となくだがあの優華の出現条件がわかった気がする。
優華は一躍東高のアイドル的存在になった。控室の出口でその追いかけ的な奴らに囲まれていた。すぐに控室に逃げていつもの根暗な優華に戻ると追いかけは誰もそれがあのぴかぴかな優華だと誰も気付かなかった。
その優華たちは今姉妹水入らずで学園祭を楽しんでいる。
今の俺は邪魔しないように舞台裏にいる。関係者居合の立入りは禁止されているはずだがミッキーさんの許可を得ている。そのミッキーさんと今は二人っきりだ。女難期の俺が望んでこの状況を作れるはずがない。ミッキーさんに呼ばれてここにいるのだ。だが、ミッキーさんは完全燃焼してしまったのかしばらくうつむいたまま動かなかった。
ミッキーさんにとっても緊張の連続だったのだろう。ステージに立つという当たり前の緊張と優華がしっかりやってくれるかどうかの緊張。疲れるのもなんとなく分かる。
「翔平君ってすごいね」
「え?何ですか?」
聞く態勢になっていなかった。女の子の話したことを聞き返すなんて何をしているんだ俺は。俺自身も疲れていたのかもしれない。無事に優美さんがついてくれてほっとしているのだ。
「すごいよ。ちゃんと優華を連れ戻して優美を連れてくるなんて私にはできないよ」
「それはたまたまですよ」
そうすべてはたまたまなのだ。優華を見つけたのだって偶然だったし、最後の最後まで優美さんが来れるかどうかは微妙だった。
「正直ね。失敗するだろうなって思ってたの」
一見ポジティブなミッキーさんがそんなことを思っていたのか。予想外だ。女難期の安那翔平まだまだ女の子を観察する目がないようだ。もっと鍛えないと。
「優華もずっとあんな状態だし無理だろうなって思ってたの」
確かにそう思うよな。
「翔平が叫んで優美を連れてきたとき・・・・・私ね。適わないなって思ったの。誰にも適わない。優美にも翔平君にも。結局私は優華のために何ができたのかなって」
「俺はミッキーさんを超えたなんて思ってませんよ」
「え?」
「優華があのステージまで行けるように準備とかしてくれたのはあなたじゃないですか。優華は優美さんにも感謝をしていますが、それに負けないくらいミッキーさんにも感謝してますよ。だって、ミッキーさんいなかったらこのコンサート自体がなかったんですから」
ギターを弾いていてもそれを生かす場がない。ミッキーさんが軽音楽部だったからコンサートをやる場があった。
「もっと前向きになってください。俺は明るくて前向きなミッキーさんのほうが好きですよ」
・・・・・・あれ?これって告白?いやいや待てよ!落ち着け!翔平!
するとミッキーさんはくすくすと笑い始めた。
「そうだね」
少し自分の無力さに嫌になっていただけだろう。俺にもあったよ。女の子がどんどん離れていく現実に・・・・・。
「優樹や優華が気に入るのも分かる気がする」
「はい?」
ミッキーさんは元気よく立ち上がった。その姿はいつものミッキーさんだ。
「私も好きだよ。・・・・・・・・翔平君」
・・・・・・・・・っは!ここはどこだ?少し記憶が飛んだぞ。
「何かおごるよ」
「い、いいんですか?」
今何か重要なこと言ったよね。何って言ったんだ。なんで聞いてなかったんだ!
「それにしても姉妹っていいよね。切っても絶対にきれない縁。翔平君にはあの姉妹の間にできたのかな?」
最初は思っていた。この年の変わらない母を母と呼んでいいのか。年の変わらない叔母さんたちとうまくやっていけるのか。心配なんて何もなかった。女難期なんてものは関係なかった。女の子だからって関係なかった。だから、自信を持って言える。
「できましたよ」
東高学園祭を通して優美さんとの間の溝が埋まり、優華、優樹、優奈ちゃんにもいい関係を築いた。女難期である俺にとっても肉親とはいえ赤の他人の女の子とつかんだ新たな関係。大金星だ。そう今思えば、振り返ってみれば俺の周りにはたくさんの女の子がいて、女難期なんて言うものは面影もない。そのことに俺は気づかない。それでも心地はよかった。
こうして東高祭は幕を閉じた。いろんな思いがこもったいいイベントだったと俺は思う。




