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目線、優華

この衣装さえなければ、ステージに立つこともできたのに・・・・・・。

これはいい訳。本当は最初からステージに上がる自信も勇気も気力もない。私の周りにはやるべきことと別にやらなくてもいいことの二種類ある。そのやらなくてもいいことをなるべきやらないようにしている。特に人の前に立つことはやりたくない。

えっと、綾見優華です。

私はミッキーちゃんの用意した衣装を見て驚愕した。

こんなものを着て人前に立つことなんてできない。・・・・・・・かわいいけど。

なのでとりあえず着てみた。そうしたらミッキーちゃんも先輩たちもかわいいかわいいと私をちやほやする。私は思わずその場の逃げでした。すると、学園祭にやってきているお客さんが何かの見せ物だと思ったらしく。ものすごい勢いで人が寄って来た。私は野性的に生徒の控室になっていてお客の来ない3階の教室に避難した。扉の開いている教室に駆け込み。机の下に隠れる。

正直、なんであんなことを言い出したのか後悔している。今まで私たちは嫌私はお姉ちゃんがいないと何もできなかった。そんなお姉ちゃんは結婚したのにもかかわらず私を心配して家によく帰ってきていた。新婚旅行の時も心配だからと言って翔平君が代わり言わんばかりに家にやって来た。

こんなんじゃダメだと分かってる。でも、体が言うことを利かない。練習通りにやればきっとうまくいく。分かってる。練習が無駄になる。分かってる。でも・・・・・でも、私には・・・・・・。


「優華」


私の名前を呼ばれて思わず跳び上がって机を頭突きで飛ばしてしまった。

ゆっくり振り返るとそこにはミッキーちゃんではなく翔平君がいた。何でここにいるのかと思ったけど、そうだよね。今日は学園祭なんだからお客さんとしてきていてもおかしくないよね。ってホッとしている場合じゃない!

その私を見る目は明らかにいやらしかった。とりあえず、なるべく見られないように机の陰に身を潜める。

それから翔平君に言われたこと。お姉ちゃんがいないと何もできない私のことをまるで見てきたように分かっていた。それを言われて少し悔しかった。何も見てきていないはずなのになんでも分かっているような口ぶりが非常に不愉快だった。私がどんな思いで練習してきたのか何も知らないくせに。でも、その怒りのせいか。お姉ちゃんと同じように背中を押されたようにミッキーちゃんのところに戻ろうと思った。

そのことに気付いたのはしばらく後のこと。

途中で野次馬に捕まったところを翔平君に助けられながらミッキーちゃんたちのところに戻ることが出来た。最初にミッキーちゃんは逃げ出したことを軽く怒った。怒鳴るようなことはなかった。本当は怒鳴って怒りたい。それをこらえているのはたぶん私のせい。

そして、本番直前。私の意思に反して体が勝手動き逃げ出そうとする。その度にミッキーちゃんに捕まる。

お姉ちゃんのために作った歌なのにそのお姉ちゃんがいない。これはやるべきことでもない。だからやりたくない。その事ばかり頭で流れる。

でも、時間は刻々と過ぎていく。実行委員の人に呼ばれてみんな準備を始める。するとミッキーちゃんが全員を集めて「円陣を組もう」と言い出した。


「ほら、言い出しっぺ。何か掛け声よろしく」


ミッキーちゃんに言われてあたふたする。そこで思う。これは確かに私が言いだしたもの。それに先輩たちは文句ひとつ言わずに付き合ってくれた。その先輩たちのためにやるべきことをやらないといけない。


「えっと、た、楽しみましょう!」

『おー!』


私は結局誰かの力を借りないと何もできない。

ここに戻ってこれたのは翔平君のおかげでステージに立つことが出来たのはミッキーちゃんのおかげ。でも、そのまでだった。

いざステージに立つ。目の前はまだ垂れ幕しかない。でも、緊張で足がまるで別の生き物ようだ。想像してしまう。この膜の向こうに人がいると思うと次何をすればいいのか分からなくなる。

何をするんだっけ?最初はどのコードをだっけ?何でここにいるんだろ?

垂れ幕が上がり明かりが灯る。その出私が見た物。それは人、人、人、人、人。

頭の中が真っ白になった。みんな何か話している。でも、聞こえない。今の私は体はステージにある。でも、意識はそこになかった。会場がざわついてきた。それを見た先輩たちが動き出した。

私には結局無理なんだ。どうせ演奏もうまくいかない。失敗する。あのまま逃げていればこんな思いをしなくて済んだのに・・・・・・。


「ダメ・・・・・・だ」


その時だった。


「優華!」


その声だけは意識の抜けていた私にも聞こえた。声は会場の後方入り口付近。

私の知っている男の子。翔平君だ。

でも、私が一番驚いたのはその隣にいた人だった。ここに立とうという最大の勇気をくれた人物。私のお姉ちゃん。優美お姉ちゃんだ。

帰ってこれないはずだった。何でそこいるのか分からない。幽霊?幻覚?それでも来てくれてうれしい。それが夢だったとしても。

言うことの利かなかった体が急に軽くなって動きだした。

やっぱり、お姉ちゃんには敵わない

お姉ちゃんがいないと私は何もできない。いや、私はもうお姉ちゃんには頼らないよ。

ここから誰でも私の意思で。

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