やっぱりかわいい、優華
さっそくだが俺は見つけてしまった。こんな簡単に見つかるなんて思っていなかった。優華のことだから人目の使いない教室かどこかに隠れているだろうと思った。校舎の3階は展示や模擬店などはやっておらず、生徒の控室になっている。だから、人はほとんどいない。派手な格好をした優華が身を隠すにはうってつけの場所だ。と名探偵っぽく推理してこの3階に来てみたらひとつだけ教室の扉が開いていたので覗いてみたら白と黒を基調としたメイド服姿の女の子が机の影から見えた。顔の確認はしていないがミッキーさんの衣装と特徴が合致することから優華だと思った。
「優華」
俺が声を掛けるとびっくりして机に頭をぶつける。ドンという音が聞こえると机はそのまま派手な音を立て倒れた。中身は空っぽのようだ。そのせいで優華の頭突きで机が倒れたのだ。そのおかげで優華の衣装を一足早く見ることが出来た。
最初に会った時は根暗で大人しい女の子というイメージが強くそのイメージは今でも健在だ。そんな優華が白と黒のメイド服を着ている。髪の毛もステージ用にセットされていていつも見えない目元がはっきり見える。うっすら化粧もしていていつもり明るく見える。その容姿は優美さんをも超える。いや、いつもの印象自体が薄い。そんな子がこんな飾りをたくさんつけて目立つようなことをしている。そのギャップがいい。いや、俺にこんな回りくどいことを考える必要はない。
優華はかわいい!
優華は俺を見るとひとまずホッとする。それから姿を見られたくないのか。机の影に再び身を隠す。
「おい、優華」
「み・・・・・見ないで」
両手でなるべき服装を見せないようにうずくまる。その姿萌えます。
「なんで?すごくかわいいぞ」
思わず言ってしまった。すると優華はまるで火山が噴火するかのように真っ赤になった。
「あ・・・・・ありが・・・・・とう」
うん、100点だな。その優華の衣装もそうだがこれをチョイスして着させたミッキーさんも100点だ。
「それで優華はこんなところで何してる?」
「か・・・・・かくれんぼ」
間違っていないか。ミッキーさんに見つからないようにしているからな。
それにしてもよく見つからずにここまでたどり着いたものだ。ステージ発表のある体育館は1階で校舎も違う。ミッキーさんが探しに来れない距離までよく逃げてきたものだ。
「ミッキーさんが探してたぞ」
「・・・・・・・・・・・」
うつむいたまま黙り込んでしまった。
優華の衣装を改めて観察する。ミッキーさんの言うとおりでスカートも長めで胸元も出ていない。でも、よく似合っている。この下にあるメイド喫茶に今すぐいって俺にお茶を入れてほしいものだ。もちろん、おいしくなるための呪文もほしい。萌え萌えキューン的なあれだ。
それはさておいて。
「ミッキーさんのところに戻るぞ」
俺が手を引こうをするとその手を拒絶して叩かれた。
いや、こんなこと女難期の俺ならいつもことだけど、こうもはっきりやられると悲しい。
「どうした?今までの練習の成果が無駄になるぞ?」
「・・・・・・・・・・・」
優華は俺に背を向けて体操座りになった。ガンをしてここから動かないつもりのようだ。ここで無理やり連れて行くのは女難期の俺だ。ここは紳士らしく男らしく話し合いで解決しよう。
「どうして逃げ出したんだ?原因はその衣装か?」
「そ・・・・・それも・・・・・ある」
それ以外ってまぁ予想はつく。
「優美さんが来ないからか?」
「・・・・・・・・・・・・」
言葉は返ってこなかった。
引っ込み思案の優華が勇気を振り絞ってただの趣味だったギターを使ったステージ発表をするための決意させたのは優美さんだ。そこにはいなかったがそれでも優美さんの存在は偉大だ。同じ血が半分しか流れていないことを気にしていた優美さんだが妹たちにはこんなにも慕われている。羨ましい限りだ。でも、その優美さんに自立を証明するためのものだ。
「優美さんがいないとできないのか?」
優華がゆっくりと顔をあげる。
「優美さんに自立を証明するどころか優美さんがいないとステージに立てない。これって本当に自立って言うのか?姉離れって言うのか?結局、優華は優美さんがいないと何もできないのか?」
「そんなこと!・・・・・・ない」
思わず振り返るとこみ上げてきたものが急に押し込まれて静かになった。
「ス・・・・・ステージに・・・・・・立つ理由もない今・・・・・・ゆ、勇気を出す必要ないよ。わ、私は・・・・・・その・・・・・・」
ここは誰かが背中を押す必要がある。それは今まで優美さんがやっていたことだ。ならここはひとつ俺が押してやろう。助走をつけるくらいは手伝ってやろう。
「なら、俺のために勇気を出してくれよ」
「え?」
「俺は優華が光り輝くステージの上で元気よくかっこよくそれでもかわいく輝く姿を見たい。あの広い体育館にいる奴らをの頭の中を全員優華でのことでいっぱいにしているところを見たい。見てみたい」
「や、やだよ!恥ずかしい!」
その恥ずかしむ姿も見たい。
「勇気を出せ。俺のために!俺だけじゃない。優樹に優奈ちゃんのためにも。来てるんだぞ。優華を見るために」
「いやいやいや!」
結構頑固なところがあるんだな。1ヶ月近くいっしょにいるが初めて知った。
仕方ない。優美さんあなたの名前を借ります。
「ステージ発表をする勇気をくれたのは優美さんだろ?」
今まで駄々をこねる子供のような優華が収まった。
「最後かもしれない優美さんから貰った力を無駄のするのか?」
「そ・・・・・・それは」
「振り絞れ。その歌は優華だけじゃない。優樹や優奈ちゃんの思いも詰まっている。優華がステージに上がるということは俺が考えている以上に大きくて越えられない壁かもしれない。でも、その壁。優美さんの力を借りないでこえるんだ。俺も足場になる」
「翔平君」
「がんばれ優華。君ならきっとできる」
優華の手を取る。その細くて小さくて今にも壊れそうな手は小刻みに震えていた。
「私にできる?」
「毎日練習してきた姿を見てる。その練習が無駄じゃないことを俺は知ってるぞ」
優華は小さく頷いた。その決心は優美さんによるものよりもはるかに小さくて潰れてしまいそうだった。それでも俺にも優華を押すことが出来た。
「行け、優華」
「うん」
優華はスカートを翻して教室から出て行った。その足取りは重くて安定していない。
「俺だとやっぱり無理だな」
優美さんには敵わない。
そして、ひとつだけいいか。
「よく持った俺の理性・・・・・・」
優華の恥ずかしがる姿。俺に少し心を開いてくれた優華。越えられない壁に当たって俺に頼ろうとする優華。どの優華も基調でレア度が高い。簡単に言えばかわいいのだ。
誰かこれをあのシリアスな場面で吐き出さなかったことをほめてほしい。
すると一つ下の階が何か騒がしい。まぁ、あんな格好をしていればたくさんの人を集めるよな。さて、人ごみに襲われている優華を助けに行くことにしよう。
すると携帯が鳴った。間隔が短かったからメールのようだ。携帯を開きメールの内容を見て思わず笑みがこぼれた。
「やっぱ、俺じゃあ敵わないな」
メールの送信相手。それは・・・・・・。




