学園祭をエンジョイ、翔平
学園祭と言ったら秋というイメージが強いが優華の在籍する東高校は梅雨の手前の時期に行われる。真東高校とほど近いところにある高校同士の学際がかぶらないようにするためというのが目的だと聞いたことがある。学際の時期がかぶると町の治安が安定しないかららしい。主に真東高生のせいだろう。
あれから数日が立ち、優美さんが日本に戻ってくるめどは立っていない。優美さんと同じような状況になった旅行客のほとんどは別の機能している空港に移動して日本に戻ろうとしているらしいが、殺到しすぎてチケットは普通には取れないらしいのだ。優美さんは日本に帰ることを一旦あきらめて海外旅行をあのオヤジと楽しんでいる。とりあえず、おやじは大気圏外からのサテライトキャノンで爆殺してほしいものだ。
優華の人前練習は順調ではなかった。俺の前ではまだましになったがそれ以外は全く上達していないらしい。まぁ、俺も優華の知り合いだし。親戚だし。いっしょに暮してるし。二階からギターの音はしていたので少なからず上達はしているだろう。
さて、その北高祭当日。曜日は日曜日。休日とあってか来客の量は多い。普通ならこういう他校の学祭には制服で来るのが妥当なのだが謹慎中である俺は私服。謹慎中の俺がこんなところで遊んでいたら絶対にあの筋肉先生どもに俺のすべてのエネルギーを持っていく。なのでお忍びだ。ちなみに一人じゃないぞ。ふたりだ。和成とではない。
話によれば、和成は退院して復活したジャッジメントに追われる日々を送っているらしい。俺の時と同じようになっている。違うことと言えば、彼女がいるかいないかの違いだ。謹慎中でなければ、俺のいっしょになって『裁きの時だ!』と言って騒いでいたのに。残念だ。
それで俺といっしょに東高祭に来ている相手は、
「お兄ちゃん。あれが食べたいです」
天使属性の優奈ちゃんである。もちろん、俺がロリコンだから無理やり連れだして来たわけじゃないぞ。さすがにそんな犯罪じみたことはしない。
まぁ、優樹にお守を押し付けられたのだ。あの後も真面目に部活に参加しているらしい。今日は適当に挨拶だけして抜けてくると言っていたので後での合流だ。
だが、こんな優奈ちゃんと二人っきりの場面をジャッジメントが見たらどんな反応するだろうか?一応、ジャッジメントには俺が優樹に利用されて俺がハーレムに見えただけだと説明した。そうしたら奴らは簡単に納得した。
「そうだよね。翔平に女が集まるはずがないもんな」
「あいつは女難期だし」
「翔平の隣に女がいるとこの世の終わりが来たと思って眠れねーよ」
「そうだよ。翔平が彼女を作るには異次元にでも行かないと無理だよな」
とりあえず、そいつら全員眠らせた。
そう思っている奴らがこの光景を見ていないことを祈ろう。
「お兄ちゃん!」
「はいはい」
優奈ちゃんに言われるがままに引っ張りまわされる。優奈ちゃんのお守で出費したお金は後でちゃんと帰ってくるのだろうか?女の子ためならいくら使っても痛くもかゆくもないのだが、現実俺の財布の中身はどんどん減っていく。
「翔平しゃん?」
名前を呼ばれて一瞬背中が凍りついたがその特徴ある話し方には聞き覚えがあった。
「有紀さん」
「どうもでしゅ」
片手にリンゴ飴を持っているところを見ると学園祭をエンジョイしているようだ。ちなみに優奈ちゃんも同じ感じだ。その優奈ちゃんと目が合った。その目線を少し警戒したのか俺の背後に隠れる。
「ロリコンだったでしゅか?」
「誤解だ!」
俺はロリコンじゃない。これは押しつけられたお守だ。あなたの彼氏といっしょにしないでください。
「お兄ちゃんロリコンですか・・・・・・・」
俺と距離を置く優奈ちゃん。
「大丈夫だよ優奈ちゃん。俺はロリコンじゃないし。てか、なんで距離を置くの?というかなんでロリコンっている単語知ってるの?」
「ゲームで見たです。ロリコンにろくな人はいないです。犯罪者です」
「お願いだから俺の知ってる純粋でかわいい優奈ちゃんに戻ってください」
ゲームの世界の情報を出さないでください。
「あれ?翔平に優奈」
「お姉ちゃん!」
優樹登場。合流という約束だったがその手には綿あめがある。
「いるなら連絡しろよ」
「ごめん。つい甘い匂いに誘われてね」
そういって綿あめをかじる。食べた瞬間の甘さを噛みしめて頬に手をついておいしそうな顔をする。普通にしていれば、かわいいのにな。
「何食べたいの?」
「その食べかけなら食べたい」
「あげるわけないでしょ!」
残念だ。優樹の口をつけたところを余すところなく食べてやろうと思ったのに。
「近親相愛ですか?」
「お願いだから優奈ちゃんは小学生が使うような単語を使ってくれ」
そして、俺は優奈ちゃんにゲームを与えた人物を一生に許さない。
「それよりも皆さんは何の目的でここに来たでしゅか?」
そうか。有紀さんは知らないよな。
「優華のステージ発表を見に来たのよ」
「そうだったんでしゅか」
「そういう有紀さんはどういった目的で?」
「和成しゃんとデート」
「ジャッジメントに連絡する」
「そいつらが到着するまでにあたしが探して捕獲しておくわ」
「了解した」
「相変わらずすごい連携でしゅね」
和成の排除には優樹と気がびっくりするほど合うのだ。
「でも、和成しゃんは来ないでしゅよ」
「なんだ」
「何よもう」
「そのジャッジ何たらに追われてて来れないとか」
がんばれジャッジメント。俺は人知れずここで応援しよう。
「ジャッジ何たらってなんですか?」
優奈ちゃんは知らなくてもいい。あんな存在が無駄なだけの組織のことなんて。でも、いつかは知ることになるんだろう。優奈ちゃんが俺の年になるまでにはジャッジメントを解体させるように努力しよう。
「優華しゃんはなんのステージ発表するでしゅか?」
「ギター」
「ギターでしゅか!」
有紀さんは優華のことを知っていたらしいがギターを弾いていることは知らなかった見たいだ。
「いつごろから弾いてたんでしゅか?」
「もうすぐ3年になるわね」
結構やってるな。
「最初はお父さんにも優美にも内緒で弾いてたのよ。あたしは相部屋だから隠しようがなかったみたいだからすぐに教えてくれたわ」
内緒で弾く前にギターなんて言う高価なものをどうやって購入したのか気になる。
「そんな優華が人前に出て演奏して歌うなんて・・・・・・・あたしが緊張してきた」
その気持ちは分からなくもないぞ。優華ならステージの上に立った瞬間、思考停止状態になりかねん。
「ステージ発表までどのくらいあるんでしゅか?」
「1時間近くあるわね」
そうなると暇だな。せっかくだから学園祭をエンジョイしようじゃないか。この女の子たちと一緒にだ。今は邪魔するジャッジメントは和成を追いかけることに必死のはずだ。こっちにかまっている暇はないはずだ。
「有紀。近づかない方がいいわよ。こいつは今変なこと考えてるわ」
「和成しゃんも同じような顔をよくしましゅ。こういう時は女の子の変なことを考えてる時でしゅ」
勝手に俺の頭の中を想像しないでほしい。大方当たってるけど。
「お兄ちゃんあれやるです」
「射的か」
今まで優奈ちゃんは食べ物系や手作りの小物売り場などにばかり興味を示していてお祭りの定番ともいえるゲームはこれが初めてだ。こういうゲームはさすがにテレビゲームほどできないだろう。こっちなら余裕で勝てるだろう。そう信じたい。
「負ける気はないからな」
「あたしもやろうかしら」
「私もやりましゅ」
「4人ですね」
着物姿にコスプレした女の子が参加人数を確認してくる。もう、俺の女難期は終わったんじゃないか?ここはあえて優樹たちを振り切ってひたすらナンパなんて言うのもありかもしれない。どうする?優奈ちゃんはまだ小さいし、親戚だ。優樹も親戚。有紀さんは和成の彼女だ。奪い取りたいが今は面倒だ。
「ああ、4人分こいつが払うから」
「はい?」
何を言っていらっしゃるのかな?
まぁ、ここで射的をさせていれば自然とこいつらを振り切ることも容易だ。
「3人分で」
「あれ?お兄ちゃんはやらないですか?」
「お、俺はちょっと用事を思い出したからこれで」
全力で射的ので店から離れる。
ハハハ!今は邪魔するジャッジメントもいない!和成もいない!優樹もいない!女の子と仲良くなり放題じゃないか!ついに待っていたぞ!この時を!この町に引っ越してきて1年以上!ついに俺にもちゃんとした女の子の友達ができる!いや、彼女が出来る!いままで膨らみに膨らませた妄想シュミレーションを実行するときが来たぞ!
大きく胸を張ってスキップでかわいい女の子を探しに行く。




