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男を見せる、翔平

俺は常に誰かに監視されていたのかもしれない。まぁ、ジャッジメントのブラックリストには俺の名前が刻まれている以上常に刺客に狙われることを想定している。だが、今の奴らは優華によって上層部が入院していて動けない。下級のジャッジメントだけでは命令系統がうまくいかず連携がうまく取れない。だから、それほど脅威じゃない。それに今は好き勝手にやっているか、委員長指示で俺をそれぞれで追っかけていて女の子に絡んだところを襲っているのかのどれかだ。しかし、未だに何のアクションもしてこない。これはどう考えてもおかしい。ジャッジメントじゃない。

バスを降りてバスを見送った後に綾見家に無言で向かう。俺たち以外には客は誰も降りなかった。


「そういえば、あんた女の子と全く話せなくて毎日泣いてたみたいね」


唐突に何を言いだす!


「別にそんなことないし」

「若干涙目になってるわよ」

「誰から聞いたんだよ」

「あの謎の組織」


完全に手懐けていたからな。俺のことを訊いたのだろう。まぁ、俺はよくジャッジメントの裁きに引っかかったものだ。女の子と話したという欲求を丸出しにしていた一年前は毎日のように襲われていたからな。


「その割にはあたしたちといる時間長いわよね」


うれしいことこの上ないのだがそこに必ず邪魔が入る。さっきは和成だった。


「どうしたらもっと同性の友達ができるのよ?」

「優樹はいないのか?」


さっきの有紀さんは友達みたいだったけど。


「まったくじゃないけど、少ないわね。周りには男ばっかりだから。まぁ、それはそれで楽しいけど」

「そう。それはそれで楽しいんだけどな・・・・・・」

「何で共感するの?」


お前には分かるまい。


「それでどうすれば、女の子の友達がたくさんできるか。性別は違うけど同じ状況に陥ってるあんたなら少しは参考になるかなと思ったのよ」


俺も逆にどうしたらそんな異性に囲まれるのか知りたい。

そうだな。今まで俺が男寄せばかりしていた原因は一体なんだろうな?考えてみれば、今までどうして男ばかり寄ってくるのか考えてなかった気がする。何で女の子が寄ってこないかということばかり考えてたし。

振り返ってみる。そもそも、原因ってなんだろうな。

まずは部活だ。入った部活は女の子に人気のありそうなサッカー部だ。だが、それは漫画とかのメディアで得た知識だ。後から聞いた話だとバスケ部が県大会の常連だったらしく女の子に人気があった。サッカー部は弱小中の弱小だった。でも、一応俺のおかげで市大会ではそれなりの成績をとれるまで強くなった。

勉強は女の子の場合は集団に放課後に残ってみんなで勉強していることが多かったらしいと訊いた。だから、いくら学年上位の男がいたところで結束して学力の向上を目指す女の子には俺には必要なかった。

生徒会の場合は単純に俺がホモであるという噂がこけるすべての原因だった。

進学は全部おやじのせい。


「あんたって天才的に的外れのことをしてたのね」

「そんな天才いらない」


今までこういうことを相談する相手がいなかった。だから、的外れのことをしていると気付くことが出来なかった。相談するにも役に立たない男ばかりだった。


「どうすれば女の子ともっと話せるか教えてくれ」

「質問し返してどうするのよ。あたしにも分からないわよ。女の子の友達もあんまりいないし」

「有紀さんは?」

「あの子は変わった子なのよ。特定の友達みたいなのはいないのよね。でも、常にいろんな人といるわね」


きっと和成も有紀さんに遊ばれているんだろう。そうであってほしい。


「じゃなくてどうしたら男が寄ってこない環境を作れて女のことばかり仲良くできるのか考えなさいよ。あたしもその逆を考えてあげるから」


そのことについて欠点ばかりの俺たちにどこまでいい案が出せるのか。まともな案が出ない気しかしない。

でも、優樹が男と関わらない方法がひとつだけある。


「優樹は部活を止めれば解決だな」

「・・・・・・ま、まぁ、そうだけど」


それが出来たら苦労していないって言う顔をしている。簡単じゃないのは分かっている。だが、俺の場合は簡単じゃない。どうあがいても女の子が寄ってくる環境が作れない。


「あんたの場合は学校を変えればいいのよ」

「出来たら苦労しない」


お互いになかなか解決しない問題のようだ。

でも、俺からすれば優樹の問題はあってないようなものだ。だって、女の子らしくないから男ばかりが集まってしまうというのが優樹の悩み。だが、俺からすればちょっとした女の子らしい仕草がかわいいと思うのだ。逆に男らしいからこそ、そこが普通よりも強く引き立つのだ。

体も・・・・・・・なかなかいいと思うし・・・・・・。


「一発殴っておいた方がいいような気がする」

「え!な、なんで?」

「どうして驚くのかな~?」


たまに俺の心の声が漏れているのかもしれない。それもそうか。女の子に対する欲求は他の男よりも強い自信がある。普通なら適当な異性と話していれば満たされるものなのだが俺はその異性と話す機会が異常になさ過ぎたために今もこうして女の子と話しても欲求を完全に満たせない。だから、口に出してしまうことも仕方ない。


「・・・・・・やっぱり蹴る」

「ちょっと待て!」


やっぱり漏れてる!


「だって、あたしと話してても女の子と話したいって言う欲求が満たされないんでしょ?つまりそれってあたしが女の子らしくないってことじゃないの?」


これはまずい!

優樹がいろいろ皮肉れてマイナスなことばかり考えている。ここで俺が何を言っても蹴られることは確定する。

俺は全力で逃げる。今日は日ごろと比べてあまり蹴られていない。それに姉に話したこともないことを話してしまったというストレスもある。この一撃はやばい。そう俺の中の野性の勘が告げている。

背後に迫る優樹に気をとられていた為に前に人がいたことに気付くのが遅れた。そのままぶつかってしまった。

「す、すみません」


ぶつかったが向こうの方が力があり逆に俺が吹き飛ばされてしまった。となるとぶつかってしまった自然とどんな奴だか大体予想がつく。

そいつは俺を見下すように見ていた。体格は服の上からでも分かるくらいしっかりしたものだ。身長は俺よりも高い頭一つ分くらい高い。顔は体格ほど老けてもおらず同じ年くらいに見えた。だが、学ランを着ている。その学ランには見覚えがあった。前に優樹と同じブレザーを着た女の子と一緒に歩ていた学ランの男をぶち殺したいな~と陰から指をくわえていたことがある。それと同じだ。つまり、こいつは優樹と同じ北中生ということになる。


「楽しそうだね、綾見」


あれ?知り合い?


「ど、どうもです」


優樹は顔を引きづっている。目線をなるべく合わせないようにしているのがよく分かる。


「すみませんね。大丈夫ですか?」


がたいの割にはいい奴みたいだ。なんか女の子が怖るようなそういう体つきと目つきをしている。だが、その鋭い目線は敵意だ。すぐに分かった。

手を伸ばして俺を起こすのを手伝うふりをして、俺の体を引っ張りそのまま俺の腹を殴った。肺の中の空気がすべて追い出され一瞬酸欠に襲われた。そいつは俺のその場に投げ捨てるように外壁に叩きつけた。


「まったく僕の女に手を出しちゃダメですよ。それがいくら年上の人でもね」

「翔平!」


呼吸を整えて脳に酸素送り考える。

こいつは優樹の言っていた空手部の部長。優樹を必要につきまわす俺の敵。


「そういえば自己紹介まだでしたね。僕は高見といいます。綾見の部の部長をしています」


ほら俺の予想通りだ。だが、妙にタイミングが良すぎないか?


「最近、部活をさぼるようだったから少し後をつけさせてもらったよ。毎日、こんな男と遊んでいるのかい?僕という男がいると知っていながら。君は最低だね。二股は最低だ」


二股どころか優樹は誰とも付き合ってないよ。お前はただの妄想で俺はただのその場しのぎ。


「今日だけじゃないよね。この男の学校まで迎えに行って家に行ってまったく!」


そういって俺のことを再び蹴る。重さのある強い一撃だった。


「やめて!」

「何を?この男を助けるためかい?なら、もう一発!」


さらに俺のことを蹴る。ピンポイントに同じところを蹴る。再び呼吸が苦しくなる。


「やめてお願い!」

「なら、僕のお願いも訊いてもらおうかな。この男と今後一切口を聞かない。プラス僕の恋人としてしっかり付き合う。簡単じゃないかい?」


何を言っているんだこいつは?

俺はお前とまだ会って3分しかたってないぞ。何俺を差し置いて勝手に話を進めてやがる。それに優樹と一切口を聞くな?それは女難期である俺にケンカを売っているようなものだぞ。


俺は体を起そうとする。


「ちょっと大人しくしててくれます?」


そういって俺の顔面を殴る。再び地面に倒れる。


「翔平!」

「ささ、早くしないとこの人死んじゃいますよ」


倒れた俺に高見は蹴って追撃をしてくる。その蹴りは容赦のないものだった。手加減なんてしていない。

どんどんボロボロになっていく俺を見て優樹は俯いて高見の願いの返事をする。


「わ、分かったわよ」


そう言った時、高見の攻撃が止んだ。


「もう一回お願い」

「だから!あ、あ、あんたと付き合ってもいいわよ・・・・・・・・」


苦渋の決断だった。


「いい判断だよ」


怯える優樹に高見はゆっくり近づいていく。そして、優樹の顔を添うように撫でて髪を頬を擦り付けて匂いをかぐ。優樹はその高見の行動に震え怯えている。いつもの威勢のいい優樹はそこにはいなかった。


「いい匂いだ。部の連中は君を男っぽいというがそんなことないよ。こんなに女の子としての要素が詰まっている卵を全くバカな連中だよね」


高見の手は髪からゆっくりとしたに下がり胸あたりまで持ってきて止まる。


「さすがにここでやるのはまずかな。場所を移動しよう」

「あ、あの翔平は?」

「あのゴミ?無視」


優樹と肩を組んでどこかに去ろうとする姿を俺は目撃した。優樹は俺の方を見ている。その目には恐怖と俺を巻き込んでしまった後悔であふれる涙だった。これから何をされるか分からない。そんな恐怖といっしょに俺のことを心配そうに見ている。


「翔平」

「だ~か~ら~。あのゴミは無視。いい加減にしないとここで犯しちゃうよ。君の恥ずかしい姿をご近所に大公開!これ以上に楽しいことは何もない!」


そんな男として言っていけないことを言った高見に俺の中の女の子に対する扱いにすべてを捧げる俺の奥底から何かが込み上げてきた。

本当はもう動けないはずなのに俺は立ち上がる。

優樹がそれを見ていたせいか高見も気付いて寄って来た。


「たく。しつこいですね」

「せ、先輩。翔平にはもう手を!」

「君と僕の関係を脅かすものは例え君の頼みでも断ち切る」


高見は俺の一番ダメージを受けている箇所。腹部を狙って殴ろうとしてきた。だが、そのピンポイントの攻撃が俺にとっては好都合だった。


「ウラーーー!」

「は?受け止めた?」


俺は高見のパンチを全身で受け止めてしっかりつかんだ。だが、体へのダメージを防いだわけじゃない。思い一撃は腹部を通っている。


「なめん!」


俺が叫ぶ。その威勢に驚いたのか高見は少し引く。そこに俺は頭突きを食らわせる。

高見はふらつきながら俺と距離を置く。脳が揺れる。一瞬、倒れそうなったが踏みとどまる。そして、高見に向かって吐き捨てる。


「俺がこの世で嫌いな物ベスト3を教えてやる!」


指を三本たてて言う。


「は?」


訳の分からないという顔をしているな。正直言おう。俺も何をしているのか分かっていない!


「3位!女の子に囲まれたリア充な男!羨ましくて嫌いだ!爆発しろ!」

「何言ってるの?」


俺もそう思う。


「2位!彼女いる男!邪魔したく仕方ない!蒸発しろ!」

「ちょっと翔平!状況を考えなさい!」


そうだな。状況をもっと考えないといけないな。でも、こっからこいつに言いつけやらないといけない。


「そして!俺の一番嫌いな物1位は!女の声を泣かせる奴!特に嫌がる女の子を無理やり力づくで言うことを訊かせようとして怯える女の子を笑うようなお前みたいな最低底辺クズ男がこの世で一番嫌いだ!このバーカ!」


ただでさえ高見によって呼吸が苦しくなっているのに大声を出し過ぎたせいでさらに呼吸が苦しくなった。全く俺って本当にバカだ。


「・・・・・・・・バカ」


優樹がうれしそうにそう言った。


「先輩は死にたいのかな?僕を怒らせていいことなんてないですよ」


まだ、俺の頭突きで額が痛むのか押さえながら近づいてくる。


「先輩のタフさには驚きました。あれだけのことをされて立ち上がって俺だけ叫べるなんて尊敬しますよ。でも、僕と綾見の楽しい時間を邪魔するなら次は本気で行きますよ」


手をぽきぽきと鳴らしながら拳を構える。

正直言ってもうこいつの攻撃を交わしながらケンカをする元気が残っていない。いくら日ごろ学校で戦争みたいなことをしていて頑丈な体を作っているとはいえケンカ慣れはしていない。

だが、俺は負ける気はしない。こいつはある重要なことを知らないみたいだ。


「何か策があるみたいですね」

「あるよ。お前みたいにただ体つきがいいだけの木偶の坊とは違うんだよ」

「何だって?」


あれ?何か地雷を踏んだみたいな。


「僕は木偶の坊じゃないですよ。そんなこと言うなんて先輩ひどいですね!」


俺の腹部を殴ろうとしてきた。俺は一歩下がると落ちていた空き缶に足をとられて結果的に高見の攻撃を交わした。


「交わさないでください。当たらないじゃないですか」


俺は再び立ち上がる。


「綾見は僕の物ですよ。嫌がろうが泣こうがそれは僕らの都合です。先輩は関係ないでしょ。それに普段強がってる綾見がああやって怯えてる姿を見ていると鳥肌が立ってたまらないんですよ」


・・・・・・・今、お前は地雷を踏んだ。


「やっぱり木偶の坊だな」

「いい加減にしないと殺しますよ」

「それは逆だな。知ってるか?市内の中心からほぼ真東にある高校のことを。そこは男子校でな、女の子と付き合う奴をひたすら邪魔する。手段を選ばないでもない組織があるんだ」

「へぇ~。そんなバカらしい組織があるんですか」


知らないのか。結構市内では有名だぞ。そう考えるとやっぱり木偶の坊だな。


「その組織は全身を黒装束でまとっている。今はとあるカップルの関係を全力で破壊しようと思っている」

「それと関係性が分からないです。いい加減にしてください」

「バカだな。市内からちょうど真東にある男子校は俺。で、そのカップルが俺と優樹だ」

「何が言いたいんですか?」

「だが、その組織も捨てたもんじゃない。女の子と付き合うよりも許せないことがある。それは女の子を泣かせた奴だ」


俺は高見に向かって指をさす。


「意味が分からないです」

「バーカ。俺はずっと監視されてたんだよ」

「は?」


するとようやく高見が気付いた。俺の背後に影を発見したようだ。俺はとっくに気づいてた。奴らはバス停からずっと俺たちをつけていたが妙な男が現れてどうすればいいか戸惑っていたようだ。命令する奴がいないからな。でも、今なら奴らも自分の意思で動く。

黒装束に身を包んだ集団が俺たちを取り囲んでいた。優樹を保護していた。


「綾見離れて!こいつらおかしい!」


だが、優樹は離れなかった。黒装束は優樹を守るように背後に送る。


「教えてやるよ。その組織の名を。たぶん、訊いたことくらいはあるだろ」


俺の手にも黒装束の仮面が渡された。


「ジャッジメントって言うんだよ」


俺も仮面をかぶり顔だけを黒装束になる。


「さぁ!裁きの時だ!テメーら!」

『裁きの時だ!』(ジャッジメントの皆さん)


一斉に俺たちは高見に襲いかかる。

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