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部活の悩み、優樹

「物足りないわね」

「あれだけ食べたのにか?」

「甘いものは別腹なのよ」


女の子がよく言うことだ。物足りないというセリフは俺が使うべきだ。和成を黙らせるためにケーキを消費してしまって1個も食べていない。


「そのすべての原因はこいつにあるわ」

「そうだ。全部和成が悪い」

「暴れ出したのはお前らだろ!」


原因を作ったのはお前だろ。

店から追い出されるとさっきみたいな行列はもうなく閑散としていた。いるのは俺と和成と優樹と有紀さんだけだ。だが、何か妙な目線を感じるのは気のせいだろうか?最近、女の子とよく絡むようになってから神経質になっているようだ。


「さて、広いところに移動したことだしこれでのびのびと和成を私刑にできるな」

「そのとおりね」

「一旦落ち着けよ!」


お前が落ち着け。


「有紀も何か言ってくれ!それにほとんどお前の嘘が原因だろ!」


いや、お前が有紀さんと付き合っているということがすべての原因だ。


「じゃあ、このおなかの子供はどうすればいいでしゅか?」

「待て!これはさすがに嘘だからな!」


ふむふむ、なるほど。


「これは嘘なんだな」


和成の顔が真っ青になる。何かまずいことを言ってしまったという顔をしている。


「つまりそれ以外は嘘じゃないのよね?事実なのよね?」

「・・・・・・・・」


和成は反論できないようだ。もし、俺がこういう状況になってしまったらどうするか。真東高校の体制を知ってから女の子とそういうことをしていたことがばれたらどうするか。俺はすでにシュミレーション済みだ。女の子と長くいっしょにいるために対策積みだ。だが、この状況では俺の行ってきたシュミレーションではどう対処することもできない。よって、和成に残された道はただひとつ。

逃亡である。


「逃がすか!」


俺は足を延ばして和成の足を引っ掛けて転ばせる。和成は走ることのみを考えていたせいか頭から派手に転んだ。そこに優樹のローキックが炸裂した。ちなみに今日の色は水色だ。今日も優樹のパンツが見れてなんかホッとした。これから綾見家にいると習慣になりそうだ。

あ。ちなみに和成は死んだから(嘘)。


「勝手に殺すな」

「とどめをさし損ねたわね」


優樹の蹴りにより再び和成撃沈。素直にやられたふりをしていれば追加攻撃をされないで済んだのにな。俺はまた優樹のパンツが見れたので儲けものだ。


「フフ。優樹しゃんも大胆でしゅね」

「え?何が?」


言われるまでもないだろ。そんなサービスを繰り返していたら変な男が寄ってくるぞ、なんて言ったら俺の命が危ない。


「それにしても優樹しゃんが男の人とこんなところにいるのも意外でしゅ」

「ま・・・・・・・・まぁ・・・・・・」

「あんなに男の人といるのを拒んでいたのに」


男といるのを拒んでいた?どういうことだ?


「ああ、有紀。こいつの前であまり言わないでほしいな~」

「何ででしゅか?」


優樹は何か俺に訊かれたらまずいことでも隠しているのだろうか?そういう風には見えない。優華は何か隠していそうな感じはするが優樹にはそういうのがなさそうだ。何というかイメージで嘘が下手そうだ。


「今日も部活サボったでしゅか?」

「う・・・・・・うん」

「みんな優樹しゃんの活躍を期待してるでしゅよ。練習しないと期待に応えられないでしゅよ」


そういえば、優樹は部活をさぼって俺のところまで迎えに来ていた。いや、女の子が自分のことよりも俺のことを優先してきてくれることは非常にうれしいことこの上ないのだが、今改めて考えてみると謎だ。優華の話だと県大会を制覇している逸材が練習に参加せずこんなところをプラプラしていることを学校側が許すはずがない。


「もういいじゃない。部活は・・・・・・・」


何かおかしい。そんな気がした。


「しょ、翔平帰るわよ」


そういって俺の手を引く。


「ちょっと待てよ」


まるで有紀さんから逃げるようにずかずかと歩いていく。走ってはいない。でも、その足取りは明らかに早かった。有紀さんは俺たちの方を笑顔で手を振っていた。

エスカレーターに乗った時点で優樹は手を離した。しばらく俺たちは無言だった。

綾見家まではバスで帰宅する。誰もいないバス停で俺たちはバスを待つ。日は沈んでいる。西の空がオレンジ色をしているが空は暗く夜を迎えようとしている。俺たちの間にも何か暗い壁みたいなものがあった。有紀さんが作ったものだということは確かだ。

すると優樹の方から聞いてきた。


「何で何も聞かないの?」

「いや、訊かない方がいいかな?っと思ったわけだが」


女の子の気持ちは分からない。経験値不足。だが、今の状況は相手が男でも同じだ。何か人に聞かれたくないことを誰かが誤って話してしまった。それを言及することはよろしくない。これは人生においての経験で得た状況判断だ。


「別に聞いてもいいわよ。隠すの苦手だし」


優樹は顔をあげている。見た目だけでも元気を出している。だが、俺には分かる。優樹は元気がない。


「じゃあ、訊くぞ。なんで部活に行かない?」

「男がいるのよ。あたしに気のある男」


ほう。優樹の女の子としての素質を分かっている男もやはりこの世にいるのか。


「そいつは部活の部長なのよ。部長の言うことは絶対。下級生なら当たり前よね」


まぁ、誰もが経験することだろう。俺は逆に男ばかり慕われてうんざりしていた。


「で、付き合えって言われたのよ」

「うん、その部長を殺そう」

「落ち着きなさい」


おっと。すまない。取り乱してしまった。目の前に彼女のいる男がいたら構わず破局に追い込ませる性格が治っていないようだ。これもすべては女難期が長すぎたための反動だ。


「もちろん断ったわ。あたしのことを女っぽくないっていう連中と付き合うのは嫌よ」


そいつが優樹のことを女っぽくないと言っているのか?


「ジャッジメントに連絡しないと」

「だから、落ち着きなさい」


別に俺がジャッジメントの第3班副班長でゴイン伍長と呼ばれていることとは関係ないからな。


「結局あんたもあの集団のメンバーの一員だったんかい!」


あれ?聞こえてた?

ちなみに真東高校の生徒の全員がジャッジメントに加担しているぞ。自然と摂理という奴だな。誰もが入る気がなかったはずなのに気付いたら入っていたみたいな感じだ。


「それで、その部長はしつこく付きまとうのよね。有紀を含む女の子たちが私のことを心配してくれたんだけど相手は倍以上のがたいの持ち主よ。いくら言っても力でどうにでもできてしまう。どうしようもなかったのよ」

「それで部活をさぼっていたと?」

「あんたを迎えに行く口実を作ってね」


そのせいで俺は一体何回死にかけたことやら。


「でも、何回かは迎えに来なかったから部活には全く行っていないわけじゃないんだろ?」

「顧問が来る曜日が決まってるのよ。顧問がいれば、そいつも下手なことはできない」


なるほど、顧問でいつでも助けを求めることが出来るからか。


「お姉ちゃんたちは知らないのよ。あんまり心配かけたくないし」


優樹はなんというかなんでも抱え込むようだな。誰かに相談すれば、きっといい方法が見つかるはずだ。


「でも、俺には話してくれたな」

「そういう状況になったしね」


有紀さんはきっと優樹がこのことを誰にも話していないことを感覚で分かっていたのかもしれない。それで頼れそうな男が目の前に現れたから優樹からこの問題を言わせるように仕向けたということか。有紀さん恐るべし。


「じゃあ、俺が何とかしてやるよ」

「いくら相手が年下でもあんたじゃ相手にならないわ」


そうれに関しては大丈夫だ。常に真東高校という名の戦場で戦っているんだぞ。そんな青臭い中防なんぞに負けはしない。つもりである。


「心配するなよ。俺たちのタフさは優樹も見てるだろ?」


そういって俺は優樹の頭を優しくなでる。なんとなくそういう状況だったからだぞ。決して女の子に触りたいからではないぞ。


「そ、そうね。なら、頼ってみようかしら」


顔を赤くして俯いて言った。そういうちょっとしたかわいい仕草がいい!いつもは強がっていてなんでも暴力をしてくるところは女の子っぽくないがだからこそ女の子みたいな仕草が異常にかわいく見える。誰か同意してくれ!

バスがやって来た。俺と優樹は乗り込む。

ここで気になっていたことを話す。ずっと、感じていた視線。ジャッジメントじゃないのか?奴らならすぐに俺と優樹の間に入ってくるはずだ。でも、警戒していたが出てこない。これはおかしい。

こういう時、話していた内容のことが大抵おこるものだ。漫画とかの世界でもそうだが現実でもよく存在する。例えば、誰かの悪口を陰で言っているとこに限ってそいつが突然現れたりとか、噂をすれば現れたとかよくあることだ。だから、もしかしたらこの視線はおそらく・・・・・・・・。

考えすぎだな。

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