世界の広さを知る、翔平
「おかえり~」
「た、ただいまです」
綾見家に戻るとジャージ姿のミッキーさんがソファーでくつろいでいた。胡坐をかいてジャージのチャックを上の方を開放していてなんとも男心を刺激する格好だ。でも、今はそんなことはどうでもいい。いや、どうでもよくないけどそんなことを気にしている場合じゃない。ミッキーさんのような女の子を前にして俺が女の子のことを考えていないということは異常なのだ。もう、天災が起きるくらい異常なのだ。
優華が二階に着替えに行ったのを確認して俺はミッキーさんの隣に座る。
「何?やるの?」
「今はそれどころじゃないです」
だから、胸元のチャックを下ろそうとしないでください。それなりの場所と時間とカメラを用意したらいいですけど。
「あの優華ってなんですけど」
「優華がどうしたの?」
「なんか死地をいくつも乗り越えてきたみたいなヤクザみたいになったんですけど」
「ああ、翔平君もあの優華を見たんだ」
「何ですか?あれは?」
「さぁ~?私もよく知らない。私が最初に見たのは2年位前かな?優奈と優樹と私が変な連中に絡まれてね。そのころは優樹も空手やってなかったのよね。その当時空手をやってた優華が助けに入った時に始めて見た」
その変な連中は一体どうなったのだろう。生きていることを祈ろう。
「優美に聞いた話だけど、あれ空手の試合中に出てきてね相手選手を病院送りにしたのよね。気を付けたほうがいいわよ。普段おとなしい子に限って怒らせると怖いのよ」
怖いとかいうレベルじゃないだろ!もう、恐怖を通り越してる。あのダーク優華は。
「まぁ、母親のいないこの家ではそれぞれ自衛が出来るように空手とか護身術代わりに覚えてるのよね」
そうなると、優華、優樹はともかく優美さんも優奈ちゃんもある程度喧嘩が強いということになるのか。優奈ちゃんはまだいいだろう。優美さんにも優華みたいな一面があったりするのだろうか。これからいっしょに生活していくんだぞ。俺も真剣に体を鍛えたほうがいいかもしれない。
「あの優華の出てくる条件とか知ってます?」
「さぁ?」
マジか・・・・・・。
「でも、めったに出てこないわよ。普通に接していれば大丈夫よ」
「そうなんですか?」
「たぶん。事実、あの優華を私は一回しか見てない。だから大丈夫だって」
そういって俺の背中を強くたたく。
本当に大丈夫だろうか。あの人類最強の兵器を抱えている優華とこれからも普通に過ごしていけるだろうか。不安ばかりが残る。
もう、マイナスのことを考えるのは止そう。いいことを考えるんだ。そうだ。あのダーク優華のおかげでジャッジメントの上層部は壊滅状態に陥ったはずだ。しばらく、俺の安全は保障される。たぶんだけど。
「怪我した人は何人かな?」
「12人です。まぁ、俺としてはこの女の子と過ごせるこの空間が守れそうなのでうれしいんですけど」
なぜそんなことを訊くのか。今までの被害と比べているのだろう。
「そういえば、優奈ちゃんは?」
小学生ならこの時間帯に帰って来ていてもおかしくない。
「二階の自室にいると思うわよ」
「そうですか」
今のところこの家で一番安全なのが優奈ちゃんだ。優華危険。優樹危険。ミッキーさんいろんな意味で危険。安全地帯に逃げるとするか。
制服のまま二階に上がる。優華はおそらく部屋で着替えている途中だろう。覗いていると疑われたら最後だ。なるべく、見ないようにして足早に通り過ぎて優奈ちゃんの部屋をノック。
だが、反応がない。
「優奈ちゃ~ん。入るよ~」
そういってゆっくり扉を開けると部屋の明かりはついてなかった。だが、部屋はテレビの明かりで照らされていた。優奈ちゃんはそのテレビの前に座っていた。手にはコントローラーが握られていて耳にはヘッドホンをしていて外の音が完全にシャットダウンされていた。それはノックも聞こえないはずだ。
後ろから飛びついて驚かそうと思ったがすぐに止めた。
なぜなら優奈ちゃんがテレビでプレイしていたのは俺でもやったことのないゲームだった。画面の女の子が全裸になって優奈ちゃんが動かしているのであろう男がその女の子をひたすらいたぶっている。それは10歳の女の子がやるようなゲームじゃない。どう考えても18禁のゲームだ。エロゲーだ。中でも抜くことに特化した美少女ゲームだ。抜きゲーだ。
優奈ちゃんがどんな顔をしているのか怖くて見れなかった。俺は逃げるようにこっそりと部屋を抜ける。
で、優奈ちゃんの部屋の前でうずくまる。
すると部屋から優華が出来た。俺を見ると心配そうな顔になった。
「だ、大・・・・・・丈夫?」
はっきり言って大丈夫じゃない。
ここでもう一度言っておく。俺は今女の子と絡むのが難しい時期略して女難期という時期にいる。そんな俺が女の子と最近よく絡むようになった。でも、そんな俺は学んだ。俺が描いているような女の子はこの世には存在しないのではないだろうか。この2週間近く綾見4姉妹といっしょにいて思った。男が思っているような女の子はこの世には存在しない。逆に男の方がまともなのかもしれない。俺はまだ世界を知らないひよっこなだけだったのかもしれない。
「優華」
「な、何?」
「世界って広いね」
おそらく優華には俺が何を言っているのか分かっていないだろう。
俺にもよく分からない。




