史上最強の少女、優華
その日の放課後である。
「和成。お互いに無事でよかったな」
「俺はほぼお前のせいだろ!」
あの後、俺は生徒が謎の集会をしていると勘付いた先生が教室を訪れて俺の拘束器具を外してくれた。和成はその後、すぐにジャッジメントに見つかり拘束されたものの授業が始まり柔道部、相撲部の顧問などの生徒指導部の先生によって裁きは中断された。その後、ジャッジメントの上層部は生徒指導にきつく注意されたらしく昼休みなどの休み時間に襲ってくることはなかった。
「まぁ、命があってよかったな」
「お前のせいで命が危なかったんだよ!」
俺は和成とともに帰宅するために校門の方に向かう。するともう当たり前のように女子生徒が誰かを待っていた。まぁ、それが優華だから誰を待っているか明白だけど。つか、なんでこう毎日迎えに来てくれるんだ?うれしいけど。
「よかったな。彼女がいて」
そんなデタラメな発言をしないでほしい。あと、笑顔だけど片手に金槌はやめてほしい。
「待っていたぞ」(委員長)
なんでこっちも当たり前のように出現するんだ。
「待っていたぞ」(男子生徒B)
「待っていたぞ」(男子生徒C)
「待っていたぞ」(男子生徒D)
「待っていたぞ」(男子生徒E)
「待っていたぞ」(和成)
「待っていたぞ」(男子生徒F)
和成はさっきまでいっしょにいただろ。
「とりあえず、さっさと裁きの時だ!」(委員長)
だんだん雑になって来てる!
「待て!また生徒指導にしごかれたいのか!」
「そんなもの知るかー!」(委員長)
ダメだ。そこに彼らはいない。あれはたぶん悪魔だ。
「あ・・・・・・・あの」
優華が止めに入るが奴らは止まらない。止まるはずがない。
それでも優華は俺の間に入る。さすがにジャッジメントも動きを止める。
「優華さん退いてください!翔平が始末できません」(委員長)
優華に向かって何言ってやがる!
「え、え?・・・・・・・な、なんで・・・・・・私を?」
どうやらなぜ謎の黒装束が自分の名前を知っているのか優華は驚いているようだ。そうれもそうだ。学校も違う関わりがほとんどない人物から自分のことを言われたそれは驚くだろう。それが女の子なら俺は発狂する。
「その最低底辺野郎の翔平からあなたを守るためにいろいろ調べさせてもらいました」(委員長)
だから、勝手に調べるな。
「決してストーカーではないですよ」(男子生徒A)
「そうだ。綾見優華さん。我々は決して怪しいことはしていない」(男子生徒B)
いや、十分怪しいだろ。
「優華さんが東高校の2年B組で」(男子生徒C)
「以前空手を習っていたことも」(男子生徒D)
「最近、スタイルを気にしてダイエットを始めたことも」(男子生徒E)
「実はウサギの人形がいないと夜寝れないことも」(男子生徒F)
「知っているが決して怪しいものではない」(委員長)
いや、怪しすぎるだろ!
一体どこでそんな情報を手に入れたんだよ!俺も知らないこともあったぞ!
「そいつはあなたを狙っています!我々に突き出すか警察に突き出すかどちらかをする必要があります」(委員長)
警察に突き出す必要があるのはお前らだろ!優華が怖がって俺の後ろでくっ付いて出てこなくなっただけど!うれしいけど動きにくいんだよ!
「翔平!優華さんを拘束していないで解放しろ!さもないと命がないぞ!」(委員長)
「これのどこが拘束しているように見えるんだ!テメーらの目は腐ってんのか!」
「うるさい!優華さんも守るのは我々だ!」(委員長)
守れてねーよ!逆に怯えてるだろ!
「翔平より我々の方が優華さんのことを知っている!」(委員長)
「好きな食べ物も!」(男子生徒A)
「好きな男のタイプも!」(男子生徒B)
「所属している部も!」(男子生徒C)
「趣味も!」(男子生徒D)
「ウエストも!」(男子生徒E)
「バストサイズも!」(男子生徒F)
「みんな知っている!」(委員長)
「いやー!」
俺は初めて優華が大声を上げるのも見た。そんな声をあげた優華は委員長の元に突っ込んでいった。そして、目にも止まらない速さでパンチをお見舞いした。早すぎて拳が見えなかった。一撃で委員長は泡を吹いて倒れた。
ジャッジメント全員が青ざめた。
「な・・・・・・なんで・・・・・・私のこと知ってるの?」
優華は今にも泣きそうだった。体全体が震えていて何かをこらえているようだった。でも、あんな細い体のどこにそれなり体格のいい委員長を一撃で撃沈する力があるんだ。謎すぎるだろ。
「もう・・・・・・・みんな・・・・・・・・みんな・・・・・・冥土によくってやるけんの~」
その時全員が固まった。か細くて今にも消えてしまいそうな優華の声。それはどこか可憐で清楚でいかにも女の子の声だった。でも、そんな声ではなかった。まるでどこかのやくざみたいな声だった。
その声がしたと思ったら優華の震えが止まった。ポケットからシュシュを取り出す。ピンクのふりふりのついたかわいいのもだ。それで髪の毛を束ねる。その後、ヘアピンで出して根暗な前髪を邪魔にならないようにあげて固定する。
そして、見えてきたのはもう誰もが口をそろえて言うだろう。どこからどう見ても美人だ。花にたとえるならバラみたいな美少女だ。でも、その目は明らかに闘争心丸出しだ。
「貴様ら生きてわしの前から帰れるなと思うなよ」
いや、誰だよ!
「翔平。おめーさんはわしのバックを持ってそこで大人しくしときーや。危ないで」
そういってバックを俺の方に投げてくる。
俺は何度も自分の頬をつねる。これは夢じゃないかと確認する。うん、夢じゃない。あれはどこからどう見ても優華だ。根暗な優華だ。でも・・・・・・・あれ?錯覚かな?もう、何度も死地を乗り越えてきたみたいなヤクザさんにしか見えないんだけど。
優華は手をゴキゴキと鳴らしながらジャッジメントに近づいていく。
「ゆ、優華さん?」(男子生徒A)
「わしの名前を気安く呼ぶんやないで!」
優華の欠点を発見した。優華は二重人格だ!
地面を力強く蹴って走り込んでいく。そして。男子生徒Aの腹部を殴る。Aは体がくの字に曲がる。その勢いでAの頭は優華の殴りやすい位置に下がる。そこに優華は肘で思い切り突き殴る。Aはそのまま地面に叩きつけられる。それからピクリとも動かない。
ジャッジメント及び俺まで震えあがった。これはあれだ。優樹と比にならない。優華はめっちゃ強い。しかも、手加減というものを知らない。
優華は近くにいたジャッジメントに向かって跳び上がり踵でジャッジメントの顔面を蹴り飛ばす。何か変な音がしたが生きているのだろうか?
それとスカートの中の色が白だった。レアのような気がするが今はそんなことを言っている場合じゃない。
「お前ら逃げろ!」
俺が叫ぶとジャッジメントが自分の命の危機を感じて各々逃げていく。だが、逃げる相手にももうひとりの優華。ダーク優華と名付けておこう。ダサいと思うならいいのが浮かんだら考えておいてくれ。俺もそれどころじゃない。
ダーク優華は逃げるジャッジメントを背後から蹴り飛ばして馬乗りなって気絶するまで殴り続ける。返り血がべっとりと優華の顔につく。もう、あれは俺の知っている優華じゃない。
何となく優華が空手をやっていない理由が分かった気がする。だって、ダーク優華がルールを守るはずがないからだ。
その後、真東高校の生徒12名が病院送りとなった。
今朝からひどい目に合っていたがさすがに奴らのことが心配になった。




