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俺は女の子と絡むのが難しい時期にある  作者: 駿河留守
女難期の俺と女の子たち
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奇跡の出会い、綾見優美

心安らぐ小鳥のさえずりと俺の気分を損ねる目覚まし時計の音が俺のいつもの朝。目覚まし時計が壊れるんじゃないかと思うくらい思うきり叩いて俺の朝は始まる。ベッドから降りてまずカーテンを開けて朝日を全身に浴びるのだ。そして、いつものようにお天道様にこう告げる。


「今日こそは女の子と話せますように」


もう俺の願いは女の子とお近づきにあるのでなくとりあえず女の子と話したいという浅はかで簡単な願いに変わっていた。

最近絡んだ異性。隣のババアが一番新鮮である。バナナが余ったからくれたのだ。そのバナナが女の子ならと思いながらもっさもっさともらったバナナをその日のうちに全部頬張るのだった。

女の子と絡むのが難しい時期。略して女難期に入って389日目。俺の学年は2年生に上がり勉学と友好関係はとも順調だ。だが、やはりかけている。青春を謳歌するのに大切な物。俺は女の子との甘酸っぱい思い出だ。だが、俺にはそれがまったくっていいほどない。高校生という青春を象徴するような年頃になったのに俺は何ひとついいことはない。世の中の高校生男子は女の子とたわいもなく触れ合っている(俺から見れば小説、ゲームの中限定である)。

そんないつもと変わらない女の子いない日々を俺は過ごすのだろう。

心地よい朝はいつも始まった瞬間、不快に変わる。

俺はいま世界中のカップルにいたずらしたくてたまらない。仲が縁が切れるまでずたずたにしてやりたと思っている。

そんな俺は部屋を出て階段を下りて洗面所に向かう。2階に2部屋、1階はリビングを含む3部屋とそれなり広い家に俺とおやじはふたり暮らしている。部屋を出るとすぐに俺の心の中を示しているかのような暗い廊下。洗面台で顔を洗う。


「もう、おやじは起きてるのか?」


リビングから物音が聞こえた。朝飯などの家事全般は俺が行っている。おやじは基本仕事が忙しくて家事どころではない。母さんが亡くなったころは進んでやっていたらしいが気付けば自然と俺がやるようになっていた。そんなおやじが朝飯でも作っているのか、リビングから包丁とまな板がトントンとぶつかる男が聞こえる。


「あのおっさん包丁使えたっけ?」


見たことがないので謎が深まる。俺の台所が朝から荒らされていると心配になった俺は歯も磨かずに洗面所を出る。

そして、俺はリビングの扉を開ける。

このリビングの扉を開けた途端、俺の女難期が終わりを告げようとしていた。


「おお、翔平。起きたか」


明るいリビングのソファーにいつものようにおやじが新聞を広げていた。見もしないのにテレビをつけて新聞を広げている。いつもどちらかにしろよと思う。

だが、謎がひとつ。おやじがいつものようにソファーにいる。なら、台所にいるのは誰だ?

俺はゆっくりと台所の方を見る。そこはまるで俺の今までの生活のほぼ真逆の見ることのできない輝きを放つひとりの人物がいた。すらっとした細身なモデルみたいなスタイルに腰あたりまである艶やかな茶色い髪。黒いものなんて何もないきれいで大きな瞳。そして、声はまるで天使のようだった。


「翔平君。おはよう」


笑顔を俺にふりまきながら朝の挨拶。


「・・・・・・っは!夢か」


俺は再び暗闇が支配する廊下に戻る。なぜかこうすごく落ち着く。

さて、落ち着いたところで冷静考えよう。

あれ誰?

スタイル、顔、そして多分性格まで完璧な美人さんが俺の家の台所にいた。これは普通じゃない。異常だ。地球にアルマゲドンがやってくるくらい異常だ。俺が女の子とデートするくらい異常だ。もう、これは夢の中なんだろう。女の子に対する不満が増幅しすぎて夢と現実が区別できなくなってしまっている。やばいやばい。

とりあえず、頬をつねって夢からさめよう。

で、つねる。痛い=夢じゃない。

いや、きっと俺はこの廊下で立ち寝してしまったんだ。昨日は夜遅くまで友達とオンラインゲームをしていたからまだその眠気が覚めていなかったんだ。きっとそうだ。つまり、このリビングの扉を開ける前に俺は寝てしまったのだ。きっとそうだ。

今度は夢じゃない。現実だよ。

再びリビングの扉を開ける。ソファーにはおやじ。


「お前さっきからそこで何やってる?」


俺はおやじが何を言っているの理解不能だ。

台所を見る。誰もいない。


「やっぱり夢か・・・・・・・」


ホッと胸をなでおろす。だが、どこか後悔している俺もどこかにいる。もし、あれが夢ではなくて現実なら俺はもう死んでよかった。夢のままでもよかったかもしれないと後悔していた。


「翔平君。フライ返しどこにあるの?」

「フライ返しは食器棚の引き出しに入ってる」

「本当だ。ありがとう」

「どういたしまし・・・・・・・・て?」


今の声は夢の中の!

台所を見る。そこにはあの美人さんがいた。朝飯を作っていた。


「・・・・・・ホログラム?」

「お前失礼だろ」


おやじに突っ込まれた。

俺はすぐさまおやじの元に向かう。加齢臭が臭くて最近近付きたくないと思っていたが今はそんなこと気にしないで近づく。


「あの美人さんは誰?」

「ああ、彼女?母さんだが?」


母さん?おやじにとっての母さん。それは俺にとってのばあちゃん。


「お前の母さんはすでに他界してるだろ。夢から覚めろよ」

「お前が夢から覚めろ」

「じゃあ、誰だよ?」

「母さんは母さんでもお前の母さんだ、翔平」

「・・・・・・・・・・・」


俺の母さんは俺が物心つく前に死んでしまっている。かすかに残っている記憶。顔は覚えていない。病室に寝る女の人の記憶なら微妙に覚えている。だが、それが母さんなのかは定かではない。

そう、俺の母さんはすでに死んでいる。


「おやじ。ボケが始まったか?アルツハイマーなら今すぐ病院に」

「ボケてるのはお前だ。いい加減に目を覚ませ」


手刀を脳天に食らう。殴られる理由が分からない。


「覚えてないのか?昨日説明しただろ」

「・・・・・・・昨日」


俺の腐りきった思考回路が過去の記憶を掘り起こす。昨日おやじが言っていたことそれは・・・・・・・・・・・。


「あ」


思い出した。



回想昨日の出来事。

俺はいつものようにソファーに寝ころびながらテレビを見ていた。そこに残業でもしていたのかおやじが帰って来た。時間は12時を回っていた。


「遅かったな」

「ああ」


おやじはかなり疲れ切っていた。


「飯は?」

「外で食べてきた」

「そうか。風呂なら沸いてるから勝手に入ってくれ」


俺は友達とのオンラインゲームの約束を時間になったので部屋に戻ろうとした。


「ああ、そうだ。翔平」

「どうした?」

「俺再婚する」

「へぇ~」


回想終了。



「お前はどんだけ人の話聞いてないんだよ」

「だっていきなり再婚するんだと言われても信じるわけないだろ。普段のおやじは嘘つきの塊だから」

「ガチの親子喧嘩というものをやってみるか?」

「黙れ、老いぼれ。毎日ほぼ戦場の男子校で鍛えられた俺の腕を見くびるなよ」

「うるさい。俺は昔、大阪にいたときナニワの鬼と呼ばれていたんだぞ」

こんな初老に俺が負けるはずがない。勝てる気しかしない。

なんで親子喧嘩になったのかはさておいて。

「こ~ら!ふたりとも!親子なんだから仲良くしなさい!」

「・・・・・・・・・・っち。一時休戦だ。翔平」

「そうみたいだな」

天使の休戦の一言で俺とおやじのけんかを止められた。だが、いつも喧嘩ばかりしているので何も変なところはない。でも、絶縁にはならないところを見ると俺とおやじはまだ仲がいい方なのだろう。


「朝ごはんできたわよ。いっしょに食べましょ」

「あ、ありがとうございます」


普段は俺が作っている朝ごはん。いつも睡魔と闘いながら作っているので簡単な物しか作れなかったが今日はこの謎のおやじの再婚相手の人が作ってくれた。非常にうれしい。

トーストに目玉焼きにサラダ。いつもならトーストに弁当のおかずの残りをいっしょに食べているのだが今日はなんだかいいことがありそうだ。


「いただきます」


一口食べる。うん、普通にうまい。


「おいしい?」

「おいしいです」


それにしてもこんなきれいな人と再婚するとは一体おやじはどう口説いたんだ?

逆のこの人はこの初老のおっさんのどこが気に入ったんだ?


「そういえば、自己紹介がまだだったね。私は綾見優美。でも、結婚するから綾見から安那になるのかな?」

「よろしくお願いします。安那翔平です」


こ、こんな感じでいいのか?

女の人と関わり合いの経験値が足りない。どう話せばいいのか分からない。いつも男としか話してないから少し言葉遣いが荒っぽくなったりしないだろうか?

そわそわして落ち着かない。とりあえず気になることを訊こう。


「あな、あの年はおいくつですか?」


噛んでしまったが、うまく言えただろう。ちなみに俺の予想は多く見積もっても30歳だろう。でもどう見ても20代にしか見えない。


「18歳よ」

「・・・・・・・・・・・ワンモア」

「18歳」

18歳?

みんな計算してみよう。俺の年は16歳。18-16=2。つまり、優美さんと俺の年の差は2歳。よってこれらのことから俺のする行動は警察に連絡するというという結論に至った。携帯電話を取り出して冷静に119。


「あの警察ですか?結婚詐欺師が目の前にいます」

「落ち着け!」


俺は常に冷静だが。冷静に落ち着いて目の前にいる犯罪者を警察に突き出そうとしただけだが?


「翔平君落ち着きなさい。その番号は警察じゃなくて消防につながるわよ」

「あ。本当だ」

「どうでもいいだろ!」


いちいちうるさい。それよりも早く警察に。


「翔平君、大丈夫よ。私も父も妹たちも容認して結婚することにしたのよ」

「優美さん。それはこのバカおやじの野望です。あなたは騙されている!」

「ケンカするか?」

「おお、表に出ろ!」

「落ち着いて食べなさい!」

「「・・・・・・はい」」


俺とおやじは終始睨み合いながら席に着く。

だが、しかし納得がいかない。常に女の子とお近づきなろうと数々の努力と苦労を重ねている俺には全く女の子が近寄ってくれないのに対して、早くに妻を亡くしてその妻への愛をこの10年近くそっと胸にとどめて生きてきたこのおっさんになぜこんな美人さんがいるのかなぞだ。世界七不思議より不思議だ。

あれか。俺がこんなに女の子を欲しているが空回りしているのは近くにひたすら女の子と遊んでいるこのおやじがいるせいなのか。この世界は常にバランスが取れている。兄弟の片割れが天才ならもう片方はバカだ。それと同様でおやじがモテすぎているせいで俺がモテないという法則が完成しているのかもしれない。

なら、俺はこのおやじを始末すれば俺の女の子とハッピー生活がやってくるということか。


「おやじ。俺のために死んでくれよ」

「何をいきなり物騒なこと言ってやがる!」


なんだよ。親は子供ために命とか張るだろ。俺のために命を捨ててくれよ。


「今すごく翔平から殺気が・・・・・・」

「翔平君。お父さんといじめちゃダメよ」

「・・・・・ご、ごめんさない」


くそ!言い返せない!こんな美人さんに口答えが出来ない。そもそも、まともに話せない。せっかくきれいな人が目の前にいるのに。女難期の俺には刺激が強すぎる。というか優美さんの年ならこのおやじよりも俺くらいの年の彼氏と書いてもおかしくないだろ。こんなおやじといっしょにいたら父と娘だろうが。


「今度、妹たちも連れてくるわね。きっと翔平君と仲良くなると思うわよ」

「・・・・・・・・妹?」


そういえば、さっきチラッと言っていた。どんな子だろうな。こんなにきれいな姉なんだ。妹もさぞかわいいのだろう。


「そうだな。これからお世話になる叔母さんだ。ちゃんあいさつしろよ」

「・・・・・・・・・・」

「どうした?」


叔母。父、母の兄妹のことを示す。

響きがなんか悪い。普通に考えてみろ。18歳の優美さんの妹だぞ。18歳以下であることは間違いないぞ。下手したら俺の同級生や年下ということにあるぞ。そんな子を俺は叔母さんなんて呼べない。

やはり俺の女難期はまだ続いているのか?

優美さんのおかげで抜け出せると思っていたが、要は血縁の親戚が増えただけじゃねーか!


「ちなみに優美は4人姉妹の長女だぞ」

「3人も妹いるのかよ!」

「驚くことか?」

「当たり前だろ!」


マジかよ。もう叔母さんが年下であること確定じゃねーか。どうする?どうしようもないだろ。


「俺はまだ夢の中か?」

「目を覚まして現実に戻ってこい」

こうして始まった俺の謎すぎる新生活。今までの奈落の底のような暗闇の生活から誰もが羨む騒がしい生活がやってくる。だが、それがすべて俺の報いのないことであることは間違いない。法律上叔母とは結婚とかできない。つまり、恋人という関係にはなれない。試合が始まる前からもう負け試合をやっているみたいなものだ。俺の女難期を離脱はまだまだ先になりそうだ。

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