理不尽な集団、ジャッジメント
気が付けば、そこは暗闇が支配していた。手足は手錠で完全に拘束されている。口には粘着テープが巻かれていて話すことが出来ない。床の感触があるから教室であることが分かる。それにこんな手錠を用意できるような奴らを俺は知っている。
でも、なんでここにいるのか記憶がない。確かあこがれの女の子と登校が出来ると余韻に浸っている時にジャッジメントがいきなり現れたところまでは覚えている。というか完全にあいつらは待ち構えていた。俺が綾見家に住むことをすでに知っているのかもしれない。
だんだん暗闇に目が慣れてきた。すると教室には何人か人がいた。
すると真っ暗な部屋の一カ所に明かりが灯った。その明かりの下にはジャッジメントの長。風紀委員の委員長がいた。もちろん、黒装束だ。教室におかれている教卓を使ってマジで裁判みたいな雰囲気だ。
「これより制裁裁判を執り行う」
うん、このままだと俺死ぬ。
「この場において被告は真実のみを語るのだ。さもないと・・・・・・」(委員長)
『裁きの時だ』(傍聴席の黒装束)
やべーよ。学校中の奴を俺は敵に回したみたいだ。というかすごい規模だな。傍聴席は黒装束で満員だぞ。バリケード代わりにおかれている机を突破してきそうだ。
「静粛に!」(委員長)
教卓においてある木づちを叩いて場を収める。その間にも俺は逃げようともがくがこの手錠はマジの物みたいだ。壊せない。
「まずは罪状を読み上げよ」
すると教卓の横も明るくなって何か紙を持った黒装束がやって来た。
「罪人安那翔平は我が真東高校にほど近い東高校に通う女子高生綾見優華16歳及びその妹の北中学校に通う女子中生綾見優樹14歳、小学生で幼女の綾見優奈10歳と同棲している!」(男子生徒A)
途中までスゲー冷静だったのにだんだん怒りが込み上げてきたのか最終的には怒鳴るように俺の罪状を読み上げる。
つーか、テメーらどうやってそんなに調べてんだ!
「よって、これはジャッジメント憲法第3条!」
なんだよ!それ!初耳だぞ!
「同棲なんて羨ましい罪に違反するものだ!」
傍聴席が賛同の声で盛り上がる。というかなんだよ。ネーミングセンスがなさすぎだろ!
「では検事の意見を聞こう」
俺が在学中にこの制裁裁判はまだ執り行われていない。だあら、裁判がどんなものか知らない。でも、検事がいるということは俺を弁護する奴もいるはずだ。そう願いたい。
「検事の和成です」
テメー何してんだ!
「被告安那翔平は同棲の他に綾見優華、綾見優樹に向かに来てもらいいっしょに下校までしている。我々検察はさらに被告にジャッジメント憲法4条の登下校羨ましい罪の追加を要求する!」
俺の罪をそれ以上重くするな!
「意義はないかね?」(委員長)
異議を唱えるんだ!奴らの言っていることは確かに事実だ。でも、違うんだ!あれは身内だ!最近、知り合った身内なんだ!
だが、俺の弁護席の方から異議を唱える者はいない。体をひねらせて弁護席を見るとそこには大きなクマさんの人形がかわいく座っていた。
異議がない理由が分かった。だって、そこには誰もいないもん!
俺はもがいて意見があると委員長(裁判長)にアピールする。
「被告黙れ。早死にしたいのか?」
噂通りだ。理不尽すぎる。
だが、俺はあきらめない。だって、死にたくないもん!
口をもごもごさせて口のテープをはがそうとする。
「被告!静粛に!もしくは永眠しろ!」
もう、あいつは裁判長じゃないだろ!
「裁判長。被告の発言くらい認めてもいいでしょ」
和成・・・・・・やっぱりお前は俺の親友だ。
「どうせ何しゃべっても殺されることは変わらないんだし」
あ、なんかウザい。
すると黒装束のひとりが俺の口に張ってあるテープをはがしに来た。
「では、検察の許可により被告発言を認める。いいからさっさと言い訳を言え」
もう、この場に俺の味方はいない。信じれるのは自分だけ。
「和成がこないだ女の子とラブホに入っていくのを見ました」
「テメー!何大嘘ついてんだ!」
そうだ。大嘘だ。和成も道連れだ。
「被告人は裁判と関係ないことをじゃべるな」
「そうだ!」
「和成死刑囚の処遇は我々が後でじっくり決めさせてもらう」
「何で俺は被告すっ飛ばして死刑囚なんだよ!」
本当に理不尽な裁判だ。被告ではなく検事に対しても理不尽だ。
「では、被告の発言を終了する」
「待て!裁判長!さっきのはおまけです!」
「おまけってどういうことだ!」
「そうだな。おまけだな」
「裁判長まで!」
もう、この場において和成にも味方はいないようだ。俺といっしょだな。
「では、意義を聞こう」
さて、問題はここからだ。どうにかして優華たちは俺の肉親であることを知らせないといけない。だが、言い方を間違えれば奴らは暴徒と化して俺をこの場で抹殺しにかかる。でも、叔母ですって言って信用しないよな。でも、逆に叔母だと分かれば優美さんといっしょに暮していたことを知られることになる。それはすなわち死に直結する。
とりあえず、
「彼女らは俺の肉親です」
戸籍上は肉親。でも、血縁上には他人。もし、和成に同じようなことを言われたら俺はその場で和成を殴り殺すだろう。つまり、それと同じことをここにいる奴らは絶対にする。思考回路はみんな同じだから。
「証拠はあるのか?」
その証拠を見せたら俺は殺される。
「裁判長」(男子生徒B)
「なんだね?」
「例の物を使うのどうでしょうか?そうすれば、被告が嘘をついているかどうかわかります」(男子生徒B)
なんか嫌な予感しかしない。
「確かにそうだな。検察はあれを使うことを認めるかね?」
「いいですよ!もし、こいつの言っていることが嘘なら今すぐこの場で死刑にしましょう!」
道連れにするな!
「さ、裁判長」
「しゃべるな」
だが、気にしない。
「その例の物とはなんですか!」
するとすぐに教えてくれた。
「ライアーマシーン。世間では嘘発見器と言われている」
なんでそんなものがここにあるんだ?
すると教室の扉が開いていろいろと機材が合体している椅子が運ばれてきた。手錠を外されたが俺の両サイドにはやたらと筋肉質な黒装束ががっしりと俺を固めている。逃げれない。
椅子に座らされると両手足を拘束器具で拘束された。それから黒装束の上から眼鏡をかけた奴が機材の調整をしている。これが電気椅子でないことを祈るばかりだ。
「被告。もし、その椅子に座った状態で嘘をついていると分かれば即感電死だ。気をつけたまえ」
結局電気椅子かよ!
「準備完了です!」(男子生徒C)
「よし。まずは機材が正常かを確認する。被告は男だ」
「男だよ」
「反応なし!」(男子生徒C)
「被告は二年生だ」
「そうだ」
「反応なし!」(男子生徒C)
「検察の和成死刑囚は本当に女の子とラブホに入って言った」
「入って行った」
「反応なし!」(男子生徒C)
「それは本当に正常か?」
正常だとも。
「では、綾見優華は肉親か?」
「ああ」
「は、反応なし」(男子生徒C)
会場内がどよめく。
機材は正常であると最初の質問で証明されている。そのために肉親であることはこの場において証明された。いろんな意味でこの嘘発見器のおかげでいろいろと説明しなくても済む。
「では、綾見優華はいとこか?」
「・・・・・・・・・」
「おい、どうした」
問題はここからだ。普通にいとこだと答えると嘘発見器が反応してしまう。当たり前だ。だって、嘘をついているんだから。だが、優華たちが俺の叔母であることをこの場で言えば、おそらくみんな信じる。
「被告!どうした!さっさと答えろ!」
しかし、奴らは綾見姉妹のことを完全に把握している。言っていないだけで優美さんのことも知っている。絶対知ってる。優華が叔母ということは優美さんは母親であることが露見する。それは毎日のように刺客に襲われることになる。そうなると俺の体が持たない。
「被告!答えないのなら電気を流すぞ!」
「待って待って!」
何かいい方法を考えないと・・・・・・・・。
俺は周りを見渡して何か方法を探す。そして、検察の席の方を見る。死刑囚である和成の姿がない。
「裁判長」
「なんだ?やっと答える気になったか?」
「和成がいないぞ」
教室中が沈黙に包まれた。
目立つところにいた和成だが、俺の審判中で誰もが俺の方に注目しているのを利用してこそこそと教室から抜け出したのだろう。俺の嘘によって強制的に死刑になったのだから。まったく、抜け目がない奴だが今回は感謝したい。
「皆の物に告ぐ!裁判を一時中断し、最重要異端者である和成を捕獲せよ!裁きの時だ!」
『裁きの時だ!』(男子生徒の皆さん)
裁判長及び裁判官、傍聴者全員が和成を捕まえに裁判をほったらかしにして出て行った。その手には縄やら網やらナイフやら危険なものが見えた気がするが気にしないことにしよう。危険なのは俺ではなく和成なのだから。
それに和成のおかげで何とか助かった。なので一応冥福を祈ろう。
「さて、この拘束器具をどうやって外すか・・・・・・・・」




