命の危機、翔平
綾見家は元々4人の姉妹とおやじ殿の5人暮らしらしい。優美さんの母さんは男の人を追いかける旅に出て行ってしまってここ数年見ていないらしい。でも、たまに元気だよって写真付きのメールが届くらしい。その写真の背景がピラミッドだったり、エッフェル塔だったり、自由の女神だったりかなりやんちゃみたいだ。
そんな家に帰ってこない遊び人である優美さんの母さんすら優美さんの結婚について知っていたらしい。妹たちもかなり前から交流があったらしい。なぜか俺だけが除け者にされていたのだ。よく分からないがおそらくおやじが伝え忘れていたのだろう。重要なことをちゃんと伝えないのがあのおやじなのだ。
朝、タクシーで空港に向かう二人を見送って学校に向かった。
その日はとにかく考えた。授業中だろうが、飯中だろうが、和成が話している最中だろうが、関係なしに俺はどうやってジャッジメントを交わすか考えた。優樹の戦闘力を使えば、大丈夫だろう。でも、俺の疑いは晴れない。逆に最悪になる。ここ数日、毎日のように女の子が俺のことを迎えに来ていることを奴らはよくないと思っている。
とりあえず、HRが終わった誰よりも早く帰るんだ。逆に北中まで優樹を迎えに行くつもりで行くんだ。どこに北中があるのか俺は完全に把握している。抜かりはない。
そして、帰りのHRを告げるチャイムが鳴る。
俺は誰よりも早く席を立って教室から出る。廊下には誰もいない。今がチャンスだ。
上履きを下駄箱に投げ込んで靴に履き替えてグラウンドに誰よりも早く出る。
「あれ?誰も追いかけてこない?」
おかしい。奴らなら数百メートルの死角にいる彼氏を待つ女の子を気配だけで察知することも容易にできる集団だぞ。俺みたいにこれからばれないように女の子を迎えに行こうとする男を見逃すはずがない。
謎だ。普通に校門から出ることが出来た。
「しょ・・・・・・・翔平君」
なぜか優華がいた。
「え?何でいるの?」
優美さんに頼んで優樹に迎えに来てもらうように頼んだはずだ。肝心の優樹いないし。
「む・・・・・・・迎えに来た」
だいぶ俺との会話で言葉が詰まらなくなった。
「誰を?」(男子生徒A)
「誰を?」(男子生徒B)
「誰を?」(委員長)
「誰を?」(男子生徒C)
「誰を?」(男子生徒D)
「誰を?」(和成)
「誰を?」(男子生徒E)
「誰を?」(男子生徒F)
やっぱり集まって来たよ。何気に多いし、和成混ざってるし。
「翔平。そのかわいいことは一体誰だ?貴様の知り合いか?彼女か?」(男子生徒A)
どう説明すればいい。前に同じことを訊かれて何も答えられなかった。妹か姉というのは無理だろう。和成が向こうに混ざっている以上家族構成は奴が知っている。最近知り合った友達と答えた瞬間俺の視線は天国に行くだろう。
「い・・・・・・・・いとこだ・・・・・」
「いとこ?」
やはり最初に反応したのは和成だ。俺にいとこたるものはいないとあいつは知っているはずだ。
何かいい言い訳を考えないと。がんばれ俺!女の子と仲良くなるために中学の時に期末試験の学年順位が一桁台だった俺だろ!女の子と仲良くするための脳みそだろ。優華と仲良くするために考えるんだ!
「委員長!あいつは嘘をついてます!」
「待て!」
俺は大声を上げて場を鎮める。優華がどういう状況か分からずに混乱している。あたふたしている。こんなくぁいいこと今日からひとつ屋根の下で生活するんだ。1週間限定だけど。その生活を守るんだ!
「じ、実は俺の死んだ爺さんは超ハッスルしててな!隠し子がいたらしいだよ!おやじも最近まで自分に妹がいるなんて知らなかったんだ!そのおやじの知らない妹さんがこの間不慮の事故で亡くなってその子供の預ける先になったのが兄の家つまり俺の家だったわけだ!だから、こいつはいろいろと面倒な事情を抱えたいとこなんだ!分かったかー!」
超大嘘。もう、超より上の言葉があるならそれを使いたいくらいあの大嘘だ。よく咄嗟に出てきたと自分に称賛したくなる。
さて、問題は優華だ。
「本当か?」
「え・・・・・・・あ・・・・・・・・その・・・・・・・・」
優華は俺が故意に嘘をついていることに気付いているだろう。頼むから俺を救うために嘘をついてくれ!空気を呼んでくれ!
「あれ?優華じゃない?」
最悪のタイミングで優樹が来た~!
優樹は今俺がどんな状況に置かれてるのか知らない。事情を知る優華は人見知りで話し出さない。そう考えるとこいつらは自動的に優樹に質問をする対象を変えるはずだ。
「君は彼女の妹か何かかね?」(委員長)
「そうよ」
「なら、そこの翔平と君たちの関係はなんだ?」(委員長)
優華と優華が目を合わせる。優樹は状況が分かっていない。
しばらく、優樹は腕を混んで考えた。そして、俺の方を見る。
頼むから俺を救うためにいい感じのことを言ってくれ!
そんなことを目線だけで伝えると優樹は薄く笑みを浮かべた。それも何か悪いことを思いついたような顔だった。
「翔平は・・・・・・」
頼む!
「あたしのお兄ちゃんかな?」
首をかしげて言った。
「は?」
場の空気が凍りついた。春の陽気で暖かい。汗をかくほどの暑さじゃない。それでも俺は全身から汗が噴き出る。冷汗というものだ。命の危機を感じる。
でも、最初に思ったことはその言い方かわいいね。って考えている余裕なし!
「逃げろー!」
「逃がすな!見知らぬ女の子にお兄ちゃん呼ばわりしているあのクズを今すぐ処刑にしろ!」(委員長)
「第1~5班は奴を追え!」(男子生徒A)
「第6~11班は委員長の指示のもとに奴を追え!(男子生徒B)
11班もあるのかよ!なんでそんなに連携が取れるんだ!
「奴を逃がすな!裁きの時だ!」(委員長)
『裁きの時だ!』(男子生徒の皆さん)
黒装束が一斉に俺に向かってきた。まるで悪魔のように、死神のように。
今日の今朝の占いは本当にあったっているのかもしれない。
その後、俺のことを知る者はいない。




