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俺は女の子と絡むのが難しい時期にある  作者: 駿河留守
女難期の俺と女の子たち
11/40

隠された過去、優美

「帰ったぞ~」

「お帰りなさい」

「おお、ただいま」

「お風呂にします?それともご飯にします?」

「う~ん。どうしようかな~」

「おやじウザい」

「黙れバカ息子」


常にけんか腰の会話はいつもの俺たちだ。


「ケンカしない」

「っち」


お互いに舌打ちをする。優美さんがいると家でのストレス発散用のおやじサンドバックが使えない。イライラがたまる一方じゃないか。すでに優美さんを素敵な女の人と見ることが出来なくなってしまった以上、俺の癒すのはおやじを殴ることくらいだ。後で優美さんがお風呂にでも入った時にやっておこう。向こうもきっと同じだ。


「お。親子仲良く料理か?和ましいな」

「そう?私も男の子が料理を手伝ってくれるの初めてで少し緊張しているの。でも、翔平君料理上手だから学ばないといけないところもあるのよ~」


と嬉しそうに優美さんは言う。


「それは・・・・・・どうも」


料理よりも片づけをしながら調理を進める姿を見習ってほしいです。

相変わらず、冷蔵庫から出したものはそのまま放置だし、生ごみは三角コーナーに捨てずに流し台に放置してあるしよくも長い間優樹は優美さんの片づけ係をやっていたものだ。今度、そのがんばりを賞して何かおごってやろう。


「いいわよね。こんな光景家族みたいで」

「そうですか?」


俺はそう思わない。法律上は家族であっても優美さんは俺たちから見れば所詮他人。法律という柵の中にいる結果家族という関係になっているに過ぎない。俺は優美さんみたいな母さんはうれしい。尊敬する。片づけできない以外ではいい母さんだ。でも、俺は母さんがどういうものか知らない。知る前に死んでしまった。でも、他人の母親を見ると子供が安心できる存在であることは間違いない。頼れるところもある。俺はたった2年長く生きているだけの母さんをはっきりと母さんと呼べない。これが本当の家族か分からない。


「翔平君は私をまだお母さんだって思ってないの?」

「・・・・・・・・・・まぁ、そうですね」


優美さん見たな若い母親は見たことない。それに俺はまだおやじから俺に優美さんが乗り換えてくれないかなと思っている。

それに家族というぬくもりを俺は知らない。おやじは帰りが遅い。一週間のうちに3日この時間帯に帰ってきて多い方だ。おやじの両親、俺のじいさんばあさんは元気だったうちはよくいっしょにいてくれた。でも、ばあちゃんが死にしいちゃんも体を壊して入院。退院した後はおやじの兄夫婦に預けられた。同時に俺も兄夫婦の元に預ける話も出ていたが、俺とおやじが拒んだ。俺にとって家族はおやじだけだった。おやじさえいればいいと思っていた。兄夫婦のような他人の家にお邪魔するようなことをするくらいならひとりでおやじの帰りを待ち続けたい。俺は女難期から抜け出しを考える遥か昔からいつももがいて抵抗して努力していた。家族を壊さないように。

そんな俺が守って来た家族が大きく変わろうとしている。今までもってきた安定度が優美さんによって崩されかけている。俺はそれが怖かった。だから、俺は優美さんを他人として受け入れている。


「なら、今は私をお母さんだって思わなくていいわよ」

「・・・・・・・・は?」

「私だって急にやって来た女の人をお母さんだって言われても受け入れないと思うわよ。でも、きっといつか何かのきっかけでそれを自然と受け入れる日が来るわよ。それまで私を安那優美として見ていいわ」

「その自然に受け入れる日っていつですか?」


すると優美さんは人差し指で俺の額を軽く突く。その時の優美さんの表情は優しさも含まれていたが、どこか同情しているようにも見えた。まるで昔の自分の姿を見ているようなそんな感じだった。


「私もね。翔平君と同じなの」

「・・・・・・・・はい?」


何か踏み込んではいけないところに俺は土足で踏み込んでしまったようだった。


「私も翔平君と同じなの」

「優美!それ以上は!」


おやじが止めにかかる。俺もそう思う。これ以上は優美さんのプライバシーに関わる。でも、優美さんは続ける。料理をしながらなんともないような顔をして。本当はそんな冷静でいられないはずなのに。


「いいの。だって、家族よ。私の息子には私のことを知ってほしいの」


辛いことがあったような顔をしている。それをごまかそうと笑顔を見せるが俺の知る優美さんの笑顔じゃない。俺はそんな引きずった笑顔の優美さんは見ていられない。でも、辛いことで話したくないことを俺に話そうとしてくれている。その覚悟を俺は称賛したい。俺に母親として受け入れてもらいたいと思っている。そんな優美さんの覚悟を俺は無駄にしたくない。


「話してみてください」

「翔平!」

「おやじは黙ってろ」


もういつものケンカじゃ収まらないぞ。

しばらく無言で料理の作業をしてから優美さんは少しずつ話し出した。


「私もね、お母さんいないのよ」

「え?」

「私が生まれてきてすぐに死んじゃったらしいのよね。病気で」

「じゃあ、優華や優樹は?」

「大丈夫よ。ちゃんと血のつながった妹だから。お父さんは仕事が忙しくて子育てなんてやっていられないからお母さんのことに対する強い思いを残したまま再婚したのよ。それから生まれてきたのが優華に優樹に優奈よ。でも、ちゃんと姉妹だって分かるくらい似てるのがうれしかったなぁ~」


確かに優美さんだけ別の血が流れているとはいえ、目元はそっくりだと俺でも思う。それは確かにうれしいだろう。


「それで今のお母さんが私を生んだわけじゃないって知った時、はっきり言って何も言えなかったわ。その時だけ私が仲間外れになったみたいだったから。妹三人にはお母さんの血が流れてるけど、私には流れていない。それを知ったしばらくの間は抜け殻みたいにすごい落ち込んだわ。お母さんから生まれてきた妹たちが憎くて辛かった。何も知らない妹たちに腹が立った。妹たちは何も罪はないのに」


今まで母親だと思ってきたのがある日違うと言われて納得がいかないことは分かる。そんな母親から生まれ愛情を与えられている妹たちに嫉妬したということだろう。それでも今の優美さんは。


「今の優美さんはその現実を受け入れている」


するとここでいつもの笑顔を見せる。


「そうね。落ち込んだ時にお母さんに言われたのよ。振り返ってごらん、あなたの周りにはたくさんの家族がいるわよって。私にはお父さんがいて妹がいてお母さんもいる。その空間は暖かくて安心できる空間だった」


優美さんはできた夕食を皿に盛りつける。手際はいいが相変わらず片づけをしない。俺はそれを片づける係だ。


「で、気付いたら今の見たいになってた」

「あれ?終わり?」

「終わり」

「最後に何かないんですか?妹たちを受け入れるために何かしたんじゃないですか?」

「何もしてないわ。ただいっしょにいれば、そんなことも気にならなくなる。だから、翔平君も最初は私をひとりの女として見ていいわよ」

「マジですか!」

「そこで過剰反応するな」

「おやじは黙ってろ!」


そうか一人の女として見ていいのか。つまり、俺が優美さんを奪えるということか。これは女難期を抜ける予感だ!


「優美は俺の嫁だぞ!」

「・・・・・・・・人妻。いいじゃないか!」

「いいわけないだろ!」

「さぁさぁ!ケンカしない!ご飯にしましょう」


料理を運ぶ。俺も運ぶのを手伝う。


「ちなみに優美さんのお母さんは?」

「ん?いないわよ」


そうか。いないのか。・・・・・・・・・・いないの?


「いないって言ってもちゃんとどこかで生きているわよ」

「どこかって・・・・・・・」

「出て行ったのよね。新たな男の人を求めて」

「誇らしげいうことでもないですよ!後、さっきまでのシビア感はどこに行ったんですか!」

「シビアな話が好きなのかな?この~!」


そういって優美さんは俺の首を御ふざけで絞めてくる。


「待て待て!料理が!」


それと胸が大きくで大きな胸が俺の顔面をずりずりとこすってくる!なんだ!めっちゃうれしいぞ!今だったら死んでも悔いなんてない!


「すみません。警察ですか?痴漢です」

「何冷静に警察に連絡してやがる!」

「人の嫁を奪うな!」

「息子に嫁がとられるおやじなんて聞いたことなよ!」

「だったらやるな!」


こうしていつもおやじと二人の暗くむさくるしい家での生活が少し変わった。優美さんのおかげで明るく楽しいものになった。いつものおやじとのケンカも泥沼なものではなくなった。俺はいつかこの人を母さんと呼べる日が来るのだろうか。そんな日が来ることを信じて今日も青春の一日が終わる。

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