1シーンお題ったー「羊の仕事」
RTされたらトランジスタは『彼はうんざりしたような顔で言い放つ。「夢を見るのは勝手だが、私を巻き込まないでくれ」その目は不機嫌そうに細められている』というシーンの入った話をかいてください
1
夢というのは不思議なものだ、と私は常々感じている。眠っているのに頭だけ動いていて、頭の中だけで世界を作り上げる。それはどのレベルの生物だろうと同じだろうし、内容を覚えてられる人もいれば全く忘れてしまう人もいる。
「……つまり、何だ?」
「つまり私は世界的に貴重だから大せt」
2
殴られた。女の子に手を上げるとはなんて上司だ。
「貴様、言うことに欠いてそれか? どうやら余程死にたいらしいなあ?」
「ええいやそんなことありませんとも銃は止してください死んでしまいますぅ!」
クッションを盾にするように掲げる。このように彼は普段からとても暴力的なのだ。
3
「お前普段は何の役にも立ってないだろうが、少しなら指が吹き飛んでも構うまい?」
「ええ!? そんなこと無いですよ!」
例えば私の能力を利用して子供達を喜ばせたり、亡くなった人に会わせてあげたり、色んな仕事をこなしている。とても有能な部下じゃないか私は。もっと褒められていい。
4
浮かれた様子の私を見てか、彼はうんざりしたような顔で言い放つ。
「夢を見るのは勝手だが、俺を巻き込まないでくれ」
その目は不機嫌そうに細められている。にやにやと笑う私に気付いたのか、彼は更に眉を寄せて半ば睨むようにというか思いっきりこちらを睨んでくる。
「なんだその顔は」
5
「別にー、何でもないですよぅ」
口を尖らせてそっぽを向く、彼だって私の能力に助けられた人の一人なのだ。高圧的な態度は上司として仕事上でのメリハリなのだと私は知っている。まあ、勝手に夢の中に連れ込んでメリーゴーランドにロデオさせたことは悪いとは思っているけども。
6
明晰夢? 白昼夢? 私が自分の能力を自覚したのはまだ幼い頃だった。日向でお昼寝していた時、夢の中で小さなもふもふとした謎の生物が大量発生してそれをゴミ袋にひたすら入れていたら、突然お母さんが出てきて『こんなに散らかして』と怒られた。慌てて起きるとお母さんがいなくなっていた。
7
靴を残して突然消えたお母さんを家族皆で探して、けれども見付からなかった。その内頭痛がしてきた私は疲労も手伝って眠ってしまったのだけど、その夢の中でお母さんに『さっさとここから出せ』と怒られたのである。
私は自分の夢の中に人や動物を連れて行くことが出来るのだ。どうだ凄いだろ。
8
最近は割とコントロール出来るようになってきたけど、それでもまだ今日みたいに知らず知らずの内に他人を連れ込んでしまうことがある。長年の研鑚のおかげで好きな夢が見れるようになったのは大きいけども。
「と言うか、連れ込むならもっと面白い夢にしろ。お前のはファンシー過ぎて敵わん」
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「じゃあ次は人間ピンボールにしますね」
「……死にたいらしいな?」
「やめて、私悪いことしてないよっ、殺さないで!」
額に突きつけられた拳銃に怯えて見せる。好きなだけ私が怯えるのを楽しんだ彼は、鼻を鳴らすと銃をホルスターに仕舞って、獰猛に笑った。彼の笑みは猛禽類を思わせる。
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「殺さんし、逃がさんよ、金ヅル」
ちょっと意表を突かれたが、慌てない。こちらも出来る限り悪い笑みを浮かべて、飄々と返してやる。
「わーかってますよぅ、貴方が護ってくれる限り、有能な部下は存分に稼いであげますから」
殺される心配は無用だ。これはそういう契約。彼と、私の。
11
彼が私を護る、私は能力でお金を稼ぐ。話は単純実に明快。親戚の人に迷惑はかけたくないし、かといい一人では危なすぎるから。危険でも、私は逃げようとは思わない。
「依頼だ。確り寝ろよ羊」
この能力で人を助けるのが、何よりも私の昔からの夢だったのだから。
同じく以前書いていたものをうp、ぶつ切りなのと短いのは仕方がない。