傷の痛み
さて、今日から遊びをするとするか。
だが困ったことに、今回のターゲットである桜宮皐月は、私以外とはあまり話さない。つまり、使える人間がいないということだ。そうなると、私がやらなくてはならなくなる。今のところ、私が転校する予定はないから、相手を監視しなくてはならない。まぁ、別に問題はないだろう。
今回のターゲットは、昔の私を知っている人間だ。しかも、あのことを知っている。
ならば、私がやられたのと同じことを最初に体験してもらおう。
まずは彼女の上靴に画鋲。その次に彼女の机にマジックで馬鹿だのうざいだの消えるなどと書いた。
この時間帯なら生徒もいない。だから、教室はもちろん、学校にも生徒はいない。
机に書いたあと、私は教室を出て、ホームルームの少し前まで、時間をつぶした。あんな早くに教室にいたら、怪しまれてしまう。
再び私は教室を訪れた。
予想通り、教室は騒がしくなっている。
「ねぇ、何かあったの?」
私は出入り口の近くにいた女の子に聞いてみた。
何も知らないふりをして。
「桜宮さんの机に落書きがあったの。しかもマジックで」
マジックという言葉を言ってくれてありがとう。
私はその女の子に心の中で感謝して、桜宮さんのところに行った。
私がホームルームの少し前に教室に来たのは、桜宮さんを助けるため。私の評価を上げるためだ。
「手伝うよ」
私はうわべだけの笑顔を作り、濡らした雑巾で、落書きを消した。
長いこと雑巾でこすっていたらしく、だいぶ消えている。これならば、ホームルームが始まる前には終わりそうだ。
「終わったー」
ホームルームが始まる前に終わってよかった。担任に見つかったら、面倒なことになりそうだからな。
「ありがとう。愛ちゃん」
「どういたしまして」
私はまた、うわべだけの笑顔を彼女に向けた。
だが、彼女の顔を見たとき、私は一瞬驚いた。彼女も私と同じく、うわべだけの笑顔だったから。そう。目が、笑っていなかったのだ……。




