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友達ごっこ  作者:
3/9

転校してきた美少女

 私が教室に行ってみると、いつもよりも教室が騒がしかった。

 なんだ? 今日はいつにもまして騒がしいな。


 「ねぇ、聞いた? 今日、転校生が来るんだってー」


 「えー。嘘ー。どんな子だろう?」


 私の席の近くで数人の女子が話していたのが聞こえてきた。

 転校生? こんな時期に? 今は6月の半ば。こんな時期に転校生が来るのは珍しい。

 それに、転校生が来るということは、私の仕事が増えるということ。私は学級委員をしているので、いろいろな仕事を頼まれる。特に、このクラスの担任は、面倒なことは全て私に私に押し付ける。ということは、当然転校生のことも私がやらなくてはならない。面倒くさいなぁー。



 キーンコーンカーンコーン


 「おーい。みんな席に着け」


 チャイムの音と同時に、担任が入ってきた。


 みんな席には着いたが、転校生が来ることをほとんどの人間が知っているため、みんな落ち着かない様子だ。


 「あー。今日は転校生を紹介する。入ってこい」


 待ってましたとでも言うように、みんな一斉にドアのほうに目を向けた。


 ガラガラガラ


 先生がそう言った後、扉が開き、一人の女の子が入ってきた。

 その瞬間、周りの子と話しているせいか、クラスの子、とくに男子がざわざわと騒ぎ始めた。まぁ、確かに男子は、騒がずにはいられないだろう。

 なぜなら、彼女は女子にしては少し背が高く、足も長くスラっとしている。彼女が動くたび、腰ぐらいまである黒くて美しい髪が揺れる。見かけはこの学校一と言っていいほどの美少女。


 「はじめまして。桜宮皐月(さくらみやさつき)です。これからよろしくお願いします」


 そう言って彼女は深々とお辞儀をした。


 「じゃぁ桜宮は……藤原の隣の席に座ってくれ。わからないことは、藤原に聞くといい。うちの学級委員長だからな」


 学校案内だけでなく、授業中も転校生の世話をしろというのか。


 「藤原です。わからないことがあったらなんでも聞いてね」


 そう言って私は、また偽りの自分を演じる。


 「うん。よろしくね。愛ちゃん」


 えっ! 愛ちゃん? 私、自分の名字しか名乗ってないよね? なのに、なんで? それに、この学校に私のことを名前で呼ぶ人間なんて、いるはずないのに……。


 彼女に聞こうと思ったが、まだ先生が話しているため話せない。休み時間にでも聞こう。

 と、思ったが、この状況では、彼女に近づくことすらできない。チャイムが鳴った瞬間、彼女の周りはクラスのほとんどの子でいっぱいだ。



 はぁー。いつのまにか昼休み。屋上でご飯でも食べて来よう。


 「藤原さん!」


 後ろから声が聞こえたため、私は後ろに振り返る。


 「桜宮さん、どうしたの?」


 声の主は桜宮さんだった。

 一体どうしたんだろう?


 「あの、一緒にお弁当食べませんか? 私、転校してきたばかりで、話せるの藤原さんぐらいなので……」


 まぁ確かに、この短時間で友達を作るなんて無理だろうし、私も彼女に用があるし、いっか。


 「うん。いいよ」


 そう言って私はまた偽りの笑顔を作る。

 私はもう、心から笑うということを忘れてしまっていた。いや、できなくなってしまったのかもしれない。


 「じゃぁ、中庭にでも行こうか。そのあと学校の中を案内するね」


 「うん。ありがとう」


 こんな風に誰かとお弁当を食べるなんて、久しぶりだな。


 「桜宮さん。朝、私にお礼を言うとき、“愛ちゃん”って言ったよね? どうして私の名前、知ってるの?」


 私は彼女に名前を教えた覚えなんかない。


 「やっぱり、覚えてないか」


 覚えていない? 何を?


 「3年ぶりに再会したんだけど、やっぱり、覚えてないかな?」


 「3年……ぶり?」


 嘘でしょ? あの頃の私を知ってる?


 「うん。私、3年前の秋に、転校しちゃったから、覚えてないかな?」


 「ごめんなさい」


 転校した? ということは、あの事は知らないのか? あれが起きたのは冬だし。なら、消す必要はないな。


 「いいよ。いいよ。気にしないで。それより、時間やばくない?」


 「あっ! やばい!」


 そう言って、私たちは教室に向かって走り出した。



 だが、私は思いもしなかった。彼女が転校したにも関わらず、あのことを知っているなんて……。

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