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第2話 ヘタレの思い

「紫央、祐樹、おはよ〜。」

花音が転校してきてから約3週間。今日もまた彼女は俺達に明るく挨拶を交わす。そして、今日もまた彼女は傷を作ってやってきた。ここ数日、花音は毎日ケガをしている。何があったのかは知らない。花音が何も言わないから。

「花音、まぁた怪我してる。何があったんだよ。」

祐樹がゲームをしながら聞いた。質問したにもかかわらず、「あっ」とか「うおっ」とかゲーム画面に向かって言っている。いったい何のゲームをしているんだ?

「えっと、あたし寝起き悪くて。いっつもベットから落ちたりしてるんだ。」

テレながら言う花音。祐樹は「ふーん」と納得しているようだが、俺は違った。花音は嘘をつくのが下手だ。(俺もか?)花音にいったい何が起きているんだ?この状態がずっと続いてる。花音も花音で、何も言わないから困る。言ってくれりゃ俺も楽なのに……

誰かにいじめられてんのか?それとも本当にドジなだけ?

それならどんなに楽か…

「紫央、おはよ。どうしたの?何かあった?暗いよ〜。」

暗い……誰のせいだと思ってるんだよ。

でも、笑顔は絶やしてはいけない。花音の前でも。

「なんでもナイ。花音、悩みとか困ってることあったらなんでも言えよ。」

これが精一杯だ。花音が何も言わない限り何もできない。頼ってくれてないのに勝手に動くのは迷惑でしかないんだ。

「…悩みなんてないよ。大丈夫だよ。」

花音がそう言うなら、そう思うしかないんだ。




「なあ、紫央。花音どう思う?あのケガの事…。」

俺と祐樹は、授業をサボって屋上でたむろっていた。いつものようにバカ騒ぎとはいかず、どんよりとした空気が漂っている。もちろん、悩みのタネは、さっき祐樹が言ってたとおりだ。

「わかんね〜。多分誰かにやられてるんだろうけど……見当つかねーよ。」

俺はフェンスにもたれかかった。カシャンと小さい音が響く。

「なんか言ってくれたらな。」

俺はずっと思ってることを言った。

「花音は優しいからさ、心配かけたくないってのもあるんだろうけどさ。やっぱり、『いじめられてる』なんてさ言えないじゃん。そんな弱い自分をみせたくないんだろ。あと、俺らに言ったら殴っちゃいそうだし?」

真面目顔をしていたが、すぐにいつもの顔に戻った。祐樹には真面目な顔は似合わないらしい。

俺はなんとなくわかった。花音の気持ち。

だからって放っておくわけにはいかない。それが、問題なんだ。





次の授業が始まってから約10分後に教室に帰った。しかし、教室には男子と極少数の女子しかいなかった。花音もいない。

「なあ、何でこんだけしかいねぇの?」

俺は祐樹の前の席の奴に聞いた。名前は斎藤。いや、それはどうでもいい。

「辻たちが桜木を呼び出してんだよ。辻の取り巻きはみんな行ったよ。」

辻――?アカリのことだ。アカリが花音を―――

「どこ行った?」

必死に迫る俺。授業妨害しまくりだ。教壇に立つ教師も怒っているらしいが関係ない。

斎藤が言うには多分、裏庭らしい。そんなものがこの学校にあったのか。

「祐樹!裏庭行くぞ!」

席に座っていた祐樹はめんどくさそうに立ち上がった。

「こら!朝原!!授業を乱しといて勝手に出て行くな!!」

教師が何か言ってるが気にしてる暇なんかない。




俺たちが裏庭に行くと、アカリと花音がいた。その他の女子も。

「花音!!」

一斉にみんなが振り向いた。視線が俺たちに集中する。

「あ…紫央…。」

アカリが震える声で俺の名前を呼んだ。でも、俺には傷だらけの花音しか目に入らなかった。ドロドロで、可愛い顔にも傷がいっぱい……

怒りが抑えられなかった。体が勝手に動いて、アカリを殴ろうとした。

「ストップ!」

祐樹が俺の腕を掴んだ。

「離せ!」

「まぁまぁ、落ち着いて。アカリに理由を聞こうぜ。」

俺は一旦腕を下ろした。もう、性格を偽ってなかった。本性むき出しだ。

何故かアカリが泣いている。

ムカツク。何でアカリが泣くんだよ。泣きたいのは花音だろ?俺だって泣きたいよ。ていうか自分がした事わかってんのか?花音をボロ雑巾みたいにして、許されると思ってんのか?




花音を保健室につれてった後、俺たちは屋上で話した。

「アカリ、何でこんなことしたんだ?」

祐樹が普段どおりに尋ねた。こういうとこホントに偉いと思うよ。

「こいつが悪いんだもん。紫央に近付いて、親しくするから……。ずっと紫央が好きだったんだもん。許せなかったんだもん。後からきたくせに!!」

…花音がいじめられていたには俺の所為デスカ?俺と仲良くしてたから?ふざけんな。

「アカリ、てめぇふざけんじゃねえよ。てめぇの感情で花音が迷惑しただと?ふざけんな!!マジで殺す!!」

「紫央!落ち着け!!」

また祐樹が俺を止める。でも、止めてくれてよかった。じゃなきゃ本気でアカリを殺してた。


「おい、アカリ。俺はてめぇなんか好きになんねーよ。てめぇみたいな奴なんか大嫌いだ。」

「紫央?いつもと性格違うね。」

「……これが本性だよ。この性格に花音は気付いてくれたんだ。大切なんだよ。今度傷付けたら許さない。殺してやる。」

これで、一応解決した。アカリも反省してるようだ。多分…

俺は保健室で気を失ってる花音を見ていた。アカリ達はどんな風に花音をいじめてたんだ?気を失うまでよくやったな。

「花音、ゴメンな。守ってやれなくて…。これからは何があっても守るから。」

そっと花音の髪をなでた。指をくすぐる茶色い髪が心地よい。

「花音、俺、花音のこと好きだ。」

花音には聞こえないだろうが、急に告白したくなったんだ。

今度は花音が起きてる時に言わなきゃな。



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