第34話「自由と金とニンジャ」
ヴァネッサは口元をいたずらっぽく吊り上げた。
「ふふ、気前がいいのは嫌いじゃないわ。でもね、ただお金を積まれても私は動かないの」
ユリスが眉をひそめる。
「……じゃあ、何が欲しいんですか?」
亮太が問い返すと、ヴァネッサは片手を振った。
「あくまでお金は、私の課題を解決してくれる“手段”。私が求めているのは――自由」
(……えっ、そうだったの!?言動が完全に金目当てだと思ってたのに……!)
ヴァネッサは胸を張って続ける。
「だから、お金を積まれても断ってるの。私は私の理想のために生きる。お金では買えないものを追いかけてると決めたから…」
「……それはすみませんでした」
亮太は頭を下げる。
「俺はあなたを勘違いしていました。どうしても仲間になってほしかったけど……仕方ないですね」
「いいのよ。じゃあ私はここで失礼するわ。頑張ってね♪」
ヴァネッサは軽やかに背を向け、歩き出す。
――その瞬間。
――【KPI更新】
ヴァネッサ(商人)
KGI:お金
KPI:儲け 4600G/∞
「……実はこのクエスト、まだ言ってなかったことがあるんです」
亮太はつぶやく。
「採掘場で採れる希少鉱石がアクセサリーに加工できるんです。もし俺たちの遠征クエストが軌道に乗れば、その宝石を大量に――」
「協力するわ!!」
ヴァネッサは振り返るや否や、ノリノリで即答した。
「……移り身早っ!!」
「やっぱり金じゃないですかこの人!!」
ヴァネッサはにっこり笑ってウインクする。
「これも“自由”よ♪」
亮太はため息をついた。
(とにかく、仲間にはなってくれるみたいで良かった……)
夕刻、宿に戻ると宿の主人が笑顔で迎えてくれた。
「いやぁ、長く泊まってくれて嬉しいねぇ」
皆が食堂に腰を下ろすと、ヴァネッサはパンを千切りながら口を開く。
「夕飯の時も仕事の話をするの?雑談でもすればいいのに」
オルグレンが不審そうに彼女を見やる。
「亮太、こいつは誰だ?」
「ヴァネッサさんです。この人が4人目候補の商人です」
「その……なんだ……大丈夫なのか?」
「はい。彼女は信頼できます」
「そうか……。お前が言うのなら、俺も信じよう」
「よろしくね♪」
ヴァネッサは軽快に手を振る。だがユリスは顔をしかめた。
「俺はまだ認めていませんからね!」
「まぁまぁ。堅いこと言わないでよ。剣士ちゃん」
軽妙に返されたユリスは耳を赤くしてそっぽを向いた。
その様子にリーネがクスリと笑みを浮かべる。
オルグレンが報告を切り出す。
「さて……本題だが、工房の連中がクエスト依頼を引き受けない理由がわかった」
「どうしてですか?」
「王国軍の中で意見が割れてるらしい。帝国が軍拡を進める中で、先に叩くべきだと主張する強硬派と……勢力均衡のため防衛に留めるべきだという慎重派。工房は慎重派に与していてこれ以上のエスカレーションは望んでいない」
(工房の人たちは武器を作れば作るほど売れるというのに……それほどのエスカレーションとは一体…)
ヴァネッサが付け加える。
「しかも強硬派のパトロンは、あのゴルドよ」
「なるほど……さすが死の商人と言われるだけある。需要の増加を利用してるんだな」
ヴァネッサは呆れ顔で笑う。
「なーに納得してるのよ亮太。私たちがさっき目撃したのを思い出してみなさいな」
「……ゴルドと帝国の高官。帝国は敵国なのに……十分な不安……。まさか!"あれ"をしているのか!?」
「やれやれ。そういうことか」
オルグレンも渋い顔をする。
「私は課題を解決するのは大好きだけど、課題をわざわざ作るのは商人でもなんでもないわよ」
ヴァネッサの声色は真剣だった。
「だが……これではただの噂や陰謀の域を出ない。ゴルドが"あれ"をしている証拠が必要だ」
ここでリーネが手を挙げる
「私、潜入しましょうか?」
「へ?」
「私がゴルドって人の企みの証拠を持ってきます!」
「だから無茶だって!」
ユリスが即座にツッコミを入れる。
「ちょっと剣士ちゃん水差さないでよね!さっきあんなに大活躍を見たでしょう?大丈夫よ行っちゃいなさいニンジャちゃん!」
「……ヴァネッサさん! これは亮太さんが決めることです!」
ユリスが食い下がる。
「……リーネに任せてみよう。危険な任務に挑んでくれるからこそ、俺たちでフォローするしね!」
「ありがとうございます!」
リーネは顔を輝かせる。
「私、やっと自分の得意なことが見えてきたんです。隠密行動、潜入、諜報……得意なところ伸ばしていきたい!」
(得意なことが……全部物騒で怖いんだよな……)
――【KPI更新】
【リーネ(回復師?→ニンジャ)】
士気:20→67/100 ↑
KGI:自分の選んだ職業を極める
KPI:ニンジャスキル習熟度 15%/100%
適性:ニンジャスキル
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