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社畜、異世界でブラック企業をホワイト化します! 〜倒産寸前ギルドを“残業ゼロ”で救う〜  作者: 凪乃
1章

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第30話「回復師の本音」

夜のコナリ町。

石畳の路地を行き交う人影は昼と打って変わって少なかった。


「リーネ……一体どこに消えたんだ」


仲間たちは手分けして捜索に走ることにした。

オルグレンは北の広場へ、ユリスは市場跡へ。そして亮太は裏路地を探し回る。


しかし――どこにも姿はない。


やがて三人は合流し、肩で息をつきながら顔を見合わせた。


「駄目だ。見つからん」

オルグレンが首を振る。

「……彼女が行きそうな場所は広場も教会もいなかったですね」

「ここまでくると、人さらいを疑った方がいいかもな」

「縁起でもないこと言わないでください!」


ユリスが声を荒らげる。

「この時間にまだ開いてる場所……酒場だな」




――そして。


酒場の扉を開いた瞬間、聞き慣れた声が耳を突いた。


「わたしぃ~~、回復師むいてないんですぅぅ~~!!!」


「リーネ!」


カウンターに突っ伏し、頬を真っ赤に染めている。立派な――いや、最悪な――酔っ払いであった。


「ひっく……わたし、もう回復師なんてやりたくなぁい!」


亮太が慌てて駆け寄る。

「どうしたんだよ!? 何があったんだ!」


「どーもこーも、飲んでるんですよぉ! 酒をね!」

グラスを振り回す手元は危なっかしく、今にも零れそうだ。


「おい危ない!」

肩を支えようとすると――


「いーやーでーすー!」

リーネが亮太の腕を素早くはたき落とし、抵抗する間もなく彼の首に腕を回した。


「ぐえっ!? ちょ、なんで!? 酒癖悪っ!!」


「もうギルドも辞めまーす! わたし、回復師やめますぅー!」

「イタタタタ! マジで絞めんな!!」




リーネは少し落ち着くと、涙目で話し出す。

「うっぐ……わたし、回復魔法が超下手なんです……!これ以上亮太さんたちの足手まといになりたくないんです……」


オルグレンは腕を組んで唸る。

「……酔ってるせいもあるだろうが、本心なら本人の自由にさせた方がいい。早めに打ち明けてくれれば、こちらも助かる」


「それは言い過ぎじゃ……」


ユリスが食い下がる。


「本人が辞めたいと言うなら尊重すべきだ」

オルグレンの言葉はきっぱりしていた。




(でも彼女は道中すごく頼もしかった。……っ!そうだ!)


「いいや、足手まといじゃなかったよ。スモークドレイクからオルグレンさんを守ったのは誰だ?リーネのあの時の瞬発力がなければ、きっと助けられなかった」


オルグレンは目を細める。


「確かにな……」




リーネはぼんやりと瞬きをした。


「でもその後ユリスの手当もろくにできなかったし……やっぱりわたし、回復師向いてないのかなぁ」


「そもそも、どうして回復師になったんだ?」


リーネは唇を尖らせた。

「友達に言われたんですよ。女の子が成功するなら“後方職”だって」


(ってことは……リーネ自身が選んだんじゃなくて、勧められるままに決めたのか)


「じゃあさ、そもそもどうして冒険者になろうと思ったんだ?」


「それは……みんなが冒険者やってたから。楽しそうだなーって思って」


亮太は内心で苦笑した。


(……就職のとき、“雰囲気が良さそうだから”で会社を選んだ俺と同じか。自分の適性を考えず、流されて選ぶ……そりゃミスマッチも起きるわな)


リーネは少し俯き、グラスの中を見つめる。


「人間って、働かないと生きていけないじゃないですか? だから、せめて少しでも楽しい場所がいいなって……」


「じゃあリーネは、なりたい職業って最初から無かったんだな?」


「そうですよ!」


亮太は小さく息を吐き、KPIウィンドウを開いた。



【リーネ(回復師?)】


士気:20→5/100 ↑

KGI:???


KPI:??? 15%/95% 


残業ゲージ 40%




(……やっぱり。ひょっとしてこの“???”って表示、リーネの今の不安定な状態が関係しているんじゃないか?)


「だったら――これから探し直そう。適性を。リーネに一番合った仕事を!」


そう言った矢先、カウンターにもたれていたリーネは――


「すぅ……」


カウンターに突っ伏し、寝息を立て始めた。


「……あれ?」


ユリスが苦笑する。

「気持ちよさそうに寝ちゃいましたね」


亮太は額を押さえ、ため息をついた。

「……仕方ない。一旦、宿に帰ろう」


オルグレンがリーネを軽々と担ぎ上げ、三人は賑わう酒場を後にした。



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