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社畜、異世界でブラック企業をホワイト化します! 〜倒産寸前ギルドを“残業ゼロ”で救う〜  作者: 凪乃
1章

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第29話「自由記者の導き」

夕暮れのコナリ町。

酒場の扉を開けた途端、焼き肉と香辛料の匂いが鼻を突く。グラスのぶつかる音と酔客の笑い声が重なり、店内は熱気とざわめきに包まれていた。


(……くそー、どうする。ゴルドは門前払い。ブランツは断固拒否。残るは影商人ルシアン……でも居場所がわからない)


カウンターで忙しく酒を注ぐマスターの姿を横目に、亮太はポケットから一枚の紙片を取り出す。

自由記者マリーナ――

(……まさか、彼女に助けを求めることになるとはな。でも、もう他に手だてが……)


「あ、そこにいるのはひょっとして…」

声をかける間もなく、亮太の隣に腰掛けてきたのはマリーナだった。


「やっぱり亮太さんだ!ここに来たってことは、私に会いに来たってことですよね?」

にっこり笑う。


「えぇ……まぁ」


マリーナは片手を上げた。

「マスター! いつものワインで! それから彼にはハーブティー。十九歳だからお酒はダメですよね?」

「……あ、はい」

(なんで年齢まで把握してるんだ……)


「それで? 亮太さん、私に聞きたいことって?」

亮太は意を決して切り出した。

「……影商人ルシアン。彼の居場所を知りませんか?」


マリーナは唇に指を当て、小さく笑う。

「ふむ……影商人、ですか」

「……知ってるんですね」

「ええ、顔見知り程度には」


軽い調子のまま続ける。

「彼、チェスが趣味なんですよ。普段は裏通りの小さなカフェに通ってます。明日そこに行けば、っていうか…………私、知り合いですし。ご一緒しましょうか?」

「え、いいんですか?」

「もちろん!亮太さんのためなら、お安い御用ですよ!」


マスターが注文を運んできた。

「はい、お待ちどうさん」


「ありがとうございまーす!」

彼女は陽気に受け取り、すぐに亮太へと視線を戻した。


「そ・れ・で! どうして影商人なんか追ってるんです?」

「まぁ……クエストの一環で……」


「えー!? もっと詳しく!」

食い入るような視線に押され、亮太は結局、遠征クエストの概要を話した。


マリーナは一転して真顔になり、頷く。

「……なるほど。商人をスカウトして、隊を整えたいってわけですね」


「まぁ、そういうことです」


「亮太さんの考え、素人でもすっごく良いってわかります! 本当に先を見てる!」

彼女は目を輝かせ、手を叩いて褒めちぎった。


「はは、ありがとう……」

(ありがたいけど……なんか接待みたいに褒めすぎじゃないか?)


マリーナはグラスを掲げる。

「じゃあ明日、ルシアンに会いに行きましょう! その前にもう一杯!」


「いや……明日は大事なんだから遠慮しましょうよ!」

亮太は迫るマリーナをやんわり断り、宿へと戻った。



翌日。

裏通りの小さなカフェは、町の喧騒から切り離されたように静かだった。窓際の席では、青年が盤上のチェスを前に腰掛けている。


「ほらほら、亮太さん! 早く!」

マリーナに急かされ、亮太は歩みを進める。ルシアンが顔を上げ、淡い笑みを浮かべた。

「おや? 珍しい客人ですね」


彼は対戦相手に一礼する。

「また今度にしましょう。今日は特別なお客ですから」


立ち上がり、二人へと向き直る。

「さて……どういったご用件で?」


マリーナの声色は、酒場での調子とは違い、どこか冷ややかだった。

「ルシアン。彼は亮太さん。リューベックのギルドから来たの。王国軍の武器調達クエストを手伝ってあげて」


「……なるほど」

ルシアンはチェスの駒を弄びながら考える仕草を見せる。


「マリーナさんに頼まれては断れませんね。ただ、私自身が動くのは難しい。ですが――紹介できる人物はいます。ゴルド氏です」


亮太の眉が動く。

「昨日、商会に行きましたが……門前払いでした」


「あぁ、彼はそういう人です。紹介者がいなければ決して会おうとしません。私は彼と知り合いですから、いくらか融通がきくでしょう」


「ありがとうございます。こちらも何かお返しを……」


「ははは……大丈夫ですよ。なにせいつも仕事でマリーナさん監さ…」


「……ルシアン、ちょっとおしゃべりですね?」

その時、亮太は、マリーナが今まで見たことのない険しい表情でルシアンを睨んでいるのに気付いた。


「おやおや……失礼しました。無駄な話はこれくらいにしましょう」


ルシアンは笑みを保ちつつ、含みのある声で言った。

「手筈はこちらで整えておきます。後日、商会に来てください」



店を出ると、マリーナは両手を広げた。

「やりましたね、亮太さん! ゴルド氏に会えますよ!」


「ありがとう。でも……ルシアンがあそこまであっさり受け入れるとは」


「亮太さんって、誰にでもきちんと向き合うでしょう? だからルシアンも信じたんですよ。ゴルド氏に会わせても大丈夫だって」

彼女は小さな手で亮太の手を握る。


「遠征クエスト、頑張ってくださいね! 私、応援してますから!」


「あぁ頑張るよ……今日は本当にありがとう!」


「いえいえ~また酒場で報告待ってますからね~! さよなら!」

軽やかに手を振り、マリーナは人混みの中に消えていった。


(……行っちゃったか。それにしても、さっきのルシアンへの睨み――あれは怖かった。マリーナがただの記者じゃないのは誰でも気づくだろう。けど、彼女の本当の狙いは……?)



その夜。

宿の食堂で亮太は報告をしようとしたが、すぐ異変に気づいた。


「……えっ、リーネがいない?」


ユリスが深刻な表情で頷く。

「昼間は体調が悪くて宿にいたそうですが、夕刻に出てから戻っていないんです」


(リーネ……一体どこへ?)

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