第24話「再び火と鉄を」
「そこで……オルグレンさんにお願いがあります。あなたに何があったのか、話を聞かせてほしいんです」
「はぁ? 何を言い出す」
オルグレンが困惑する。
「スモークドレイクと戦ったときのことです。あの大槌と大盾……あんな火炎を防ぎ、鱗を砕いた武器をこの目で見たからこそ信じられないんです。そんな武器を作れるあなたが、どうして“誰かのために武器を作らなくなった”のか……」
オルグレンは短く息を吐き、しばらく黙り込む。やがて観念したように語り始めた。
「……俺は貧民街の生まれだ。飯もろくに食えず、飢え死にしかけたこともある。だが火と鉄だけは俺を裏切らなかった。必死に槌を振り、技を磨き……気づけば王侯貴族の注文を受け、軍の武具を任されるほどになった。若造の俺が“王都一の鍛冶師”なんて呼ばれるくらいにはな」
膝の上のこぶしが強く握られる。
「そして――王国で名高いレオニード将軍の剣を打つことになった時、俺は震えた。あの人のために、最高の剣を打とうと命を削るように炉に向かった。鉄を選び、何度も打ち直し、俺にできるすべてを注ぎ込んだ。あれは間違いなく“最高の剣”だった」
だが、その声は苦く沈んでいく。
「……だが、将軍は帰ってこなかった。戦の一騎打ちで、剣が折れ……ウッド将軍は死んだ。俺が打った剣で……だ」
(そんなことが……)
「その日からだ。俺に依頼する奴は誰もいなくなった。……いや、それ以上に、俺自身が人のために武器を打つ気を失った」
亮太の頭に、管理人の言葉が蘇る。
「管理人さんが言っていました。その事件は、あなたのせいじゃないって」
短い沈黙。やがて、オルグレンは小さく鼻で笑った。
「実際のところはわからねぇ。……まぁ今となってはどうでもいい。だが――どこに行っても、結局槌は振っちまうんだ。
苦い笑みを浮かべる。
「……昔話はここまでだ。重要なのは今だろう」
「え……?」
オルグレンが真っ直ぐに亮太を見据える。
「今度は俺が聞く番だ。お前はどうして、そこまで俺を雇いたいと思う?」
亮太は背筋を伸ばし、腹の底に力を込めた。
「俺はリューベックのペガサス支部の亮太です。今回、リューベックの鉱山商会からクエストを依頼されて、その前準備としてここに来ました。リューベックの人たちは、この採掘場を本格的に開発し、希少鉱石を高く買い取りたいと考えています。ですが最大の障害は北方峠への街道。険しく、魔物も多い。今までは利益が薄く、実現できませんでした」
一呼吸置き、声に熱を込める。
「けれど、俺たちギルドが護衛を担い、採掘した鉱石をコナリ町で加工して王国軍に納め、さらに希少鉱石をリューベックへ送る仕組みを作れば、利益率は段違いになります。往来も活発になり、労働力も集まる。町も採掘場も発展できるんです!」
オルグレンは黙したまま、鋭い眼で見据える。
(えっ……やばい、何か変なこと言った!?)
亮太は、矢継ぎ早に続ける。
「……この大変な遠征を成し遂げられるのは、あなたしかいない!」
ようやく、オルグレンが口を開いた。
「……そうか。わかった」
「!」
「確かに、この辺りじゃリューベックよりもコナリ町の方が鍛冶師は多い。リューベックの連中がこの鉱石を狙ってる噂も聞いていた。……思った以上に、でかい話らしいな」
声には冷静さがあったが、オルグレンの瞳には抑えきれない光が宿っていた。
(あれ……? ひょっとして、この人……少しワクワクしてるんじゃ……?)
「石の良し悪しを見極められるのは、鑑定人か鍛冶師くらいのもんだ。……いいだろう。協力してやる」
「っ……本当ですか!?」
亮太の声が弾んだ。胸の奥が熱くなる。
(やった……やったぞ……!)
オルグレンは無骨な槌の柄を撫で、口元にわずかな笑みを浮かべる。
本人は平静を装っているが、長く押し殺してきた熱が漏れ出していた。
「……まったく。久々に腕が鳴るぜ」
――【KPI更新】
【オルグレン(鍛冶師/元王都一の職人)】
士気:5 → 56/100 ↑
KGI:ギルド鍛冶師として武具の作成
KPI:鍛冶技術 98%/100%
精神状態:トラウマ→なし
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