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社畜、異世界でブラック企業をホワイト化します! 〜倒産寸前ギルドを“残業ゼロ”で救う〜  作者: 凪乃
1章

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第21話「俺の番だ」

「スモークドレイク……!」

オルグレンが槌を握り締め、眉間に深い皺を刻む。煤煙が渦を巻き、スモークドレイクが翼を大きく広げる。


「上にまだ負傷者が残ってるのに……!」

リーネが心配げな目で上を仰ぐ。そこへ管理人が血相を変えて駆けてきた。

「すまねぇ! 少しの間でいい、あいつを食い止めてくれ! 今、負傷者を外へ運ばねぇと……!」


亮太は拳を握り、すぐに頷いた。

「わかりました。必ず時間を稼ぎます!」

スモークドレイクが喉を鳴らすと、坑道全体に濃い黒煙が広がった。煤の霧が視界を覆い、肺を焼くような息苦しさが漂う。




――【KPI表示:スモークドレイク】


特徴:煤煙生成・炎吐息・鱗防御90%


弱点:風属性魔法


(……やっぱり、風が弱点か!)




亮太の目に光が走ったその瞬間、前方でユリスが剣を突き立て、詠唱を始めていた。


「《エア・スラ――」


「待て!! ユリス、放っちゃダメだ!」


剣先に風の刃をまとわせようとしたユリスが動きを止め、振り返る。


「……どうして止めるんですか!」


亮太の視界に新たな文字が浮かんだ。




――【KPI補足】


黒煙消失時 → 自動防衛行動:火炎放射(広域)


リスク:風属性魔法による黒煙消散後、即時発動


(……くそっ、つまりスモークファングの時みたいに“風で煙を裂いて一気に攻める”やり方は逆効果になる……!)




「黒煙を吹き飛ばしたら……奴は防衛本能で火炎放射をぶっ放すんだ!」


亮太は歯を食いしばり、叫んだ。


「しかも風で煙を裂いている最中に炎を吐かれたら、被害は何倍にも拡大する!」


ユリスは汗を滲ませ、苛立ちをにじませる。


「じゃあどうしろって言うんですか!? このままじゃ攻撃できないですよ!」


「……クソッ……考えろ、考えろ!」


亮太は拳を握りしめ、視界のKPIを凝視する。


(風は弱点……でも使い方を間違えれば即全滅。


どうすれば“炎の反撃”を逆手に取れる……?)


「――ッ!」


ユリスの背後よりスモークドレイクの巨大な顎が、突如現れた。彼を噛み砕こうと迫っている。


「うわっ!」


ユリスは反射的に剣を突き出す。重圧に腕が軋むが、かろうじて食い止めた。


「この野郎っ!」


気合と共に押し返すと、竜は黒煙の中へと身を引こうとした。逃がすものかと、剣を振り下す。しかし、刃は鱗に弾かれるどころか、もろく折れてしまった。


「攻撃が……通らない!?」


オルグレンが低く言い放つ。

「……あの鱗に覆われている限り、並の武器じゃ傷ひとつ付かねぇ」


亮太は食い下がった。

「でも――あなたの武器なら通せるんでしょう!?」


「ッ……な、馬鹿言え!」

オルグレンの目が揺れる。


「お願いします! オルグレンさん! このままじゃ、俺たちも鉱員たちも……皆焼かれてしまう! あなたの力が必要なんだ!」


熱を帯びた亮太の声に、オルグレンは槌を握る手を震わせる。


「……ちぃ。すこし待っていろ」

吐き捨てるように言い残し、最深部の入口へと足を向けた。


「……! よし、これで武器が来る!」

だがその直後――。


「……ッ!?」


黒煙の奥で赤い目が光りだした。狙いはオルグレンの背。鋭い爪が彼に迫っていく。


「オルグレンさん!」


その瞬間、飛び込んできた影があった。


「やらせない!」

ミーナだった。短刀を両手で構え、竜の爪を受け止めるも、彼女の体は壁へと弾き飛ばされた。


「くっ……!」

衝撃に呻く声が坑道に響く。


「リーネ!」


慌てて呪文書を開く。

「ダリオさん、彼女を守ってくれますか!?」


呪文書から発する青白い光が弾け、アンデッド・ダリオの体を包むと彼は無言でリーネのもとへ走った。黒煙の中、赤い目もまたリーネへと迫る。


――ガァァン!


煙の奥で鉄塊同士がぶつかり合うような轟音がこだました。


「リーネさんっ!」

ユリスが声を張り上げ、必死に彼女へ駆け寄る。


黒煙が徐々に薄れていく。そこに映ったのは、狂ったように大剣を振り下ろし続けるダリオの姿。竜の爪をかわしながら、剛腕で刃を叩き込んでいる。しかしスモークドレイクにはあまり効いていないようだ。


「はぁっ……! リーネ!」

ユリスは彼女を抱き起こし、必死に支える。




その時だった。スモークドレイクは喉を真っ赤に染め上げて、口から高熱の炎を吐き出した。


「危ない!」


高熱のブレスはダリオではなく、ユリスとリーネの方へ一直線に伸びていく。


「うわああああああっ!」


「ユリスっ!そんなあぁぁぁぁ!」


炎が最深部を丸ごと包む。




炎を避けるため、とっさに身を転がす。熱気で喉が焼け、息を吸うたびに肺が痛んだ。ここで倒れてはいけない。地面を這いながらでもあの2人を助けなきゃ――。


「……えっ」


ユリスとリーネは、炎に呑まれていなかった。

2人を覆っていたのは、分厚く紺碧に輝く巨大な盾。精緻な紋様が刻まれ、荘厳な威圧感。この盾が2人から完全に炎を遮断していた。


そして盾の背後に立つ影――。

煤にまみれた短髪の金髪、汗と鉄粉に濡れた逞しい体躯。


「危ねぇ…間に合ったみたいだな」


オルグレンだった。巨大な盾を地面に突き立て、背に負っていた大槌を静かに握りしめ、ゆっくりと振り上げる。


「……ここからは、俺の番だ」





ここまで読んでくださりありがとうございます!

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