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閑話 クリスティーナ告られる(複数視点)

(ペドロ視点)


今、私はニーズヘッグ王と非公式の会談をしている。

鹵獲した魔導ゴーレムの扱いを決めるためだ。


「では、鹵獲した魔導ゴーレムについては我が国が20機、貴国が80機保有でよろしいでしょうか」


『魔導ゴーレムの起動方法を教えていただけるのであれば、それで問題ない』


我が国は研究用に20機あれば十分。戦略魔法があるので防衛戦力としては考えていない。

ニーズヘッグ王国の方は軍の再建が急務であり、再建までは魔法ゴーレムを戦力として扱うらしい。ただ、魔導ゴーレムを研究し尽くしたわけではない。まだ隠された機能があるかもしれないので、ファフニール帝国に対抗する戦力としては使用しないという約束のもと、80機を譲る決定をした。先日の御前会議で決まった通りファフニール帝国とは外交で対応してもらう。この辺りの戦後処理は陛下より委任されている。戦争を終息させるという基本方針さえ守ればいい。


『と、ところでペドロ殿、クリスティーナ嬢は婚約者は居ないと記憶しているが間違いないだろうか』


「そうですね。ですのでご子息が口説いても一向に構わないと思いますよ」


『そ、そうか、ならばウチの愚息には頑張ってもらいたいものだ。ペドロから見てどうだろうか?』


「ジオ殿下とクリスの関係ですか?脈はあると思いますよ」


ニーズヘッグ王国としたら縁を結んでおきたいところたろう。クリスが悪乗りししたせいでアクア様ありきの戦略魔法と思われているからな。

まぁ色恋沙汰は私には関係ないので静観させてもらおう。


・・・・・・


(クリスティーナ視点)


『クリス…すまなかった』


ファフニール帝国軍を退けてから三日、ジオ殿下が私に謝罪している。何故謝罪しているかというと、ニーズヘッグ王国の貴族の令息たちがこぞって私に求婚してきたからだ。

さすがにファフニール帝国軍との戦い前のジオ殿下と私の様子を知っている貴族からの求婚はなかったが、知らない貴族の大多数が求婚してきた。

御前会議に出ていたタヌキ(高官)どもは恐怖していたが、オオカミ(貴族の令息)にとってはそんな事(氷漬け)なんてお構い無しのようだ

私は混乱して、これは何かの陰謀ですか!?と思わずジオ殿下を問い詰めてしまった。

慌てたジオ殿下は自国の貴族たちを何とか統制して今に至る。統制するのに3日間かかったけど何があったのだろう。聞きたくない…

ちなみに軍に配備されている通信用の魔道具で特別にお父様と話させてもらったが、自国でも似たような状況で、私に宛てに釣書が届きまくってるらしい。アクア様の加護を授かった直後も酷かったが、今回はその上をいっている。


『クリス、少し歩こうか』


「はい」


今は王城にある庭園にいる…告白には最適な場所かもね。

ジオ殿下の気持ちは既に分かっているし、時間もあったので答えは決めている。

貴族の結婚なんて家柄で決まる方が多い。相手の外見、性格なんて二の次だ。

それを考えれば私は恵まれているのろう。ジオ殿下は最初こそアレだったが、外見は整っているし、性格も良い。私への細やかな配慮も感じられる。優良物件だな、うん。

しばらく歩くと庭園を一望出来る場所に着いた。


「わぁ、綺麗ですね」


私が庭園に見惚れているとジオ殿下が私の前で片膝をついた。


『クリス、私は君のことが好きだ。これから先、何があろうと君の事を守り抜くと誓おう。

私の想いに応えてくれるだろうか?』


私はジオ殿下の手を握り応える。


「はい、喜んで」


殿下の顔がパァっと明るくなる。私的には断る選択肢はないと思うのだけど、不安だったのかな?とても喜んでいるし、安心しているようだ。


『良かった』


そう言って私を抱きしめる。

わっ…護衛とかいるからちょっと恥ずかしいのだけど、まぁいいか。

優しい抱擁。ほんの少し見つめ合う。想いが伝い合ったかのように、どちらかともなく顔を寄せ合い唇が重なり合う……



庭園からの帰り道…


『君を守り抜くと言ったが、先の戦では我が国が君に守られた形だった。今後は有言実行出来るようにしないとね』


「いえ、ジオ様は守ってくださいましたわ、貴族から」


『ハハハ、いや、あれは申し訳なかった。こちらの貴族の統制がとれてなかったよ』


「いいえ、ニーズヘッグ王国だけではございません。我が国でも私に釣書が大量に届いている有様でして、そちらも気にしなくて済むようになりました」


『なるほど、どこの国だろうと考えることは同じか。役に立てたなら良かったよ』


今後のことはゆっくり決めることにした。休戦協定が結ばれるまでしばらくかかるのでその間に話し合う。ウチの国としてはジオ様に婿に来てほしいだろうな。私を外に出したくないだろうから。

私としても、兄上が精霊の加護を諦めているのでジオ様には婿に来てほしい。ジオ様自身加護を授かっているから、フェアリーテール家の当主としても申し分ない。けど他国の王族の降家先として侯爵という爵位は微妙かしら。そのあたりは陛下やお父様にも相談してみよう。


・・・・・・


リンドブルム王国軍の宿舎に戻るとペドロ師団長とミサキが待っていた。


『どうだった?』


「…どうせ隠したところですぐに分かるから言いますけど、ジオ様とお付き合いすることになりました」


ミサキが明るく祝ってくれる。

『まじっすか?良かったじゃないですか。イケメンGETできるだなんて羨ましいです』


続いてペドロ師団長


『そうか。それは良かったな』


あら、普通に返されたわ。意外。


『何だ、その意外そうな顔は。人の幸せをけなそうとは思わんぞ』


あら、顔に出てたわ。


「ありがとうございます。ところでミサキがいるということは何か技術的な進展でもありましたか?」


『蜘蛛15体が進化可能になった。マジック・スパイダーからエーテル・スパイダーに進化出来る。既に13体は進化済みだ。残り2体は君たちから借りた蜘蛛だからな。返そうと思い連れてきた。』


姿を隠していた蜘蛛が現れて寄ってくる。


『ちなみにコイツらの名前は勝手に決めさせてもらった。クリスの蜘蛛はアイン、オットーの蜘蛛はツヴァイだ。名前を勝手に付けた詫びというわけではないが、蜘蛛用の魔武具はそのまま使ってくれ』


「また安易な名前を勝手につけたものですね。いいですけど。アイン、おいで」


久しぶりの従魔との触れ合いだ。いいこいいこしてあげよう。ナデナデしながら進化先を確認する…ん~?

進化先が2つあるな。


「ペドロ師団長、蜘蛛の進化先は一つだけでしたか?」


『ああ、進化した13体はエーテル・スパイダー1択だ。そんな質問するということは2つ以上あるのだな?』


「ええ、アクア・スパイダーがあります』


これは完全にアクア様の影響ね。ペドロ師団長とミサキはアクア・スパイダーへの進化を推してきた。研究者としては当然か。私も迷わずアクア・スパイダーへの進化を選択した。


えーと、アクア・スパイダーの加護はないのね…代わりにスキルがあるわ。


スキル:大精霊の従僕

スキル効果:主人の大精霊の加護の内容を引き継ぐ。ただし、主人から離れると効果が薄れる。


おぉ凄い。一緒にいればアインが大精霊の加護を持っているようなものね。それに流石に水属性に寄ったので水魔法は覚えたみたい。

するとペドロが興味深そうに言う


『研究のためにもう一度貸してくれ』


「返してもらって3分しか経ってないのよ。また貸すわけないでしょ!」


そんな話しをしていると、そこへ魔法師団の1人が血相を変えて部屋に入ってくる。


『今し方、フェアリーテール侯爵から緊急の連絡がありまして、詳細は不明ですがクリスティーナ様に伝言を頼まれました』


「え?お父様から?どうしたの?」


『それが…ノルン・クルス子爵令嬢が国家反逆罪で逮捕された、とのことでございます!』


え…?

とりあえず戦争を終わりまで書こうと思ったら閑話がだいぶ長くなってしまいました。次から本編に戻ります

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