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閑話 クリスティーナ自国に戻る(複数視点)

(ジオ視点)


凄い、魔導ゴーレムを全て倒した。よし、これであとはファフニール軍だけだ。私は有志の生徒たちに檄を飛ばす。


「敵の要である魔導ゴーレムはクリスティーナ嬢が倒した。敵は動揺している。今が攻め時だ!全員それぞれ得意な魔法で構わない。一斉に放て!!」



魔法の一斉射一定の戦果を上げる。ファフニール軍は障壁を張るべくこちらに魔法使いを多く傾けるが、逆方向から学長が率いる一隊からも魔法の一斉射があり、たまらずファフニール軍が引き始める。

元々魔導ゴーレムを頼りに進軍してきた軍だ。油断していて陣形はバラバラ。統率が取れていないところへの魔法攻撃だ。こちらの数は学長の部隊と合わせて100名程度の攻撃だったが、大きな戦果を上げる事ができた。さらにそこに影の部隊が追い討ちをかけ、壊滅的な打撃を与えることに成功した。我々は勝利したのだ。


「勝鬨をあげろ!我々の勝利だ!」


・・・・・・


「ありがとう、クリスティーナ嬢。貴女のおかげで勝つことができた。」


『いいえ、例え策があったとしても、ファフニール軍に対抗するためには、こちらの陣営を率いる人間が必要でした。貴方が死を覚悟して残ると仰られたこそ勝利を掴めたのです。胸を張ってください。これはニーズヘッグ王国軍の勝利です』


「そうか、ありがとう…よし、今日は全てがうまくいった。事後処理はあるが今日くらい勝利を祝お…う?え?」


『ちょっとー!うまくいったじゃないわよ!』

『泉が泥だらけじゃない!』


いつの間にか水の精霊2体がそこにいた。


「こ、これは作戦上、仕方ないことでしで、ねぇ、クリスティーナ嬢?」


『え、ええ、まぁそうですね。でも、こうなった責任は軍を率いた者が取るべきかと…』


「…ひどくないですか?」


『あはは、とりあえず私も水の浄化はできますので、事後処理をしつつ復旧に務めましょう』


その後、何とか精霊をなだめ、事後処理にあたった。

そして翌日、今後の方針を決定した。今回ファフニール軍を撃退できたものの、学園都市は防衛には向かないのは明らかであったため、民間人全員を防壁がある近くの都市へと避難させることが決定した。時間はかかるが、再侵攻より先に避難させることくらいはできるだろう。学園都市に再侵攻があるかどうかは不明だが。

私は民間人を避難させたあとは王都に戻り、ファフニール軍との戦いに挑むことになるはずだ。クリスティーナ嬢から以前ゴーレムと戦った時のことを聞いたが…かなり苦しい戦いになるだろう。覚悟しなければな。

そしてクリスティーナ嬢は一旦自国に戻ることになった。


ー 別れの日 ー


「クリスティーナ嬢、貴女には本当に世話になった。精霊のことも、ファフニール軍との戦いのことも貴女がいたから全てが上手くいった」


『殿下、お気になさらないでください。私は自分のやるべきことをやっただけです。

それと…私たちは共に戦った仲です。クリスティーナ嬢と、他人行儀な呼び方ではなく、クリスとお呼びください』


「そうか…ではクリス、私のことも殿下ではなく、ジオと呼んでくれ」


『えっ…はい、ジオ…様』


「フフッ、様もいらんのだかな。まぁいい。

私はこれから王都に戻りファフニール帝国軍との戦いに身を投じることになる。戦いが終わり平和になったら、またクリスと会えるだろうか」


『会えますよ。お忘れですかジオ様、私の留学期間はまだ2週間ほどしか経っておりません。あと2ヶ月以上あるのですよ』


「ははは、そうだったな。私もあと1年精霊魔法大学に通い卒業するのだった」


私はクリスの前で跪き、手を取り甲にキスをする。


「平和になったらまたこの地で会おう」


『え、えぇ、是非』


・・・・・・


(クリスティーナ視点)


『クリス、顔が赤いわよ』


「うるさいわよナターシャ、まさかあんなことされるなんて思ってなかったから…」


『クリスティーナ様はジオ殿下にとって、恩人であり、戦友です。そしてなにより美人です。ジオ殿下が惚れてもおかしくないですよ』


「ソフィア団長までからかわないでください」


『からかってはいません。本気でそう思っています。クリスティーナ様はアクア様の加護を授かっておりますし、今回の迎撃戦でも大活躍、今やその名声は王族をも凌ぎます。ジオ殿下のお相手として何ら問題はないでしょう。

まぁジオ殿下は第3王子ですし婿に来ていただける可能性もありますね。そうなればフェアリーテール侯爵家としても喜ばしいのでは?夫婦揃って精霊の加護持ちになるのですから』


『やめてください。第一、今回の迎撃戦で一番活躍したのは他ならぬソフィア団長でしょう?魔導ゴーレムを5体倒したのですから』


『戦果というものは指揮した人間に帰するものですよ。帰ったらきっと陛下よりお褒めの言葉をいただけると思います』


「お褒めの言葉だけで済めばいいなぁ…」


・・・・・・


帰国してその日の内に陛下から呼びだされた。


「陛下、ただいまニーズヘッグ王国より戻りました」


『うむ、よくぞ無事に戻ってきた。ゴーレム相手に勝利するとは大したものだ。名を上げたのぉ』


「ソフィア団長の剣の腕があってこその勝利です。私一人では何もできませんでした」


『まぁそう謙遜するな。策を弄したのも、指揮したのもクリスであろう。それに今回は民に犠牲が出なかった。それが1番の功績よ。大いに胸を張るが良い』


「はっ、ありがとうございます」


『さて、戦争の戦況はどこまで聞いておる?』


「帰国したばかりで何も…」


『ニーズヘッグ王国の城塞都市ルシオールが落ちた』


「!!…宣戦布告から10日も経っていませんが城塞都市が落ちたのですか」


『そうじゃ、ニーズヘッグ王国軍はルシオールで迎撃するため戦力を集中させていた。戦は守る方が有利じゃから守りを固め、ファフニール帝国軍を疲弊させようとしたのであろうな。だが、ゴーレムによってあっさり城門は突破され街は戦場と化した。ニーズヘッグ王国軍の名だたる武将たちは勇敢に戦ったが急激に力を増したゴーレムになす術なく散ったそうだ』


「エクストラモードですね…」


『ニーズヘッグ王国軍はルシオールに戦力を集中させたことが完全に裏目に出た。全軍の4割と、王都の防衛拠点を失ったことになる。次は王都が攻められると王都の民は大混乱。防衛の準備ですらままならん状況らしい』


「それでは王都が落ちるのは時間の問題ではありませんか」


『いや、ファフニール軍はしばらく進軍せんよ。2〜3週間くらいはルシオールに留まるのではないかのぉ。何せ略奪、強姦、虐殺にと大忙しだからの』


「…クズですね」


『だがそのおかげで王都の防衛を整える時間ができる。

ニーズヘッグ王国から我が国に援軍の要請があった。この要請に我が国はペドロ師団長をはじめとした魔法師団の派兵を決定した』


「…先程から気になっていたのですが、今までの説明は軍事機密並みの情報ですよね。たかが侯爵令嬢にすぎない私に話す内容ではないと思いますが」


『いやいや、関係あるから話しておる。魔法師団と共にクリス、お主も一緒に行ってもらうのだからな』


はぁ、やっぱりこうなったかぁ…


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