閑話 クリスティーナ再びゴーレムと戰う
「宣戦布告ですって!?」
学長室に呼ばれるとバルト学長からそう告げられた。
『ええ、ファフニール帝国から我が国に宣戦布告がなされました。そして国境警備隊から連絡が入りました。ファフニール帝国の2個中隊とゴーレムの様な兵器5体が学園都市を目指して侵攻中とのことです。国境警備隊はゴーレムの様な兵器の攻撃により無ず術なく撤退を余儀なくされました。戦力があまりにも違いすぎます。クリスティーナ様には急ぎ自国に戻っていただき安全を確保してください』
「学長や殿下はどうなさるおつもりですか?」
『私は王族です。民を守る義務があります。可能な限り敵を足止めし、できる限りの民間人を逃がします』
逃げないのね。その言動は尊敬に値する…だけど死ぬわね。
殿下をはじめ、この学校の人達、この街の人達は私を快く受け入れてくれた。私はきっとそれが気に入っている。
今からでは民間人の避難は間に合わずに略奪が発生するでしょう…私を受け入れてくれた人達が悲惨な目に遭う、勝てる見込みがあるのに黙って見てるわけにはいかないわ。
「私も戦います」
ソフィア団長が間髪入れずに反論する
『なりません。学長の仰る通り自国に戻るべきです』
「分かっているわ、ソフィア団長の言っていることの方が正しいってことくらい。でもね後悔したくないのよ。私に策がある。街の人達を助ける手段があるの。だから私を戦わせて!」
『……はぁ〜、仕方ありませんね、その策というのを詳しく話してください。もし成功しそうな策なら付き合いますよ。でもあまりにも無謀な策なら強引に連れて帰りますからね』
「ありがとうソフィア団長。じゃぁ、早速策について話すわね。ファフニール帝国軍はゴーレム以外2個中隊しかいないわ。ゴーレムがいなければ、学校の生徒と、私の護衛で対処出来ると思うの。で、肝心なゴーレムの対応だけど…」
・・・・・・
『…なるほど、それならゴーレムを一網打尽にできますね…分かりました。その策に賭けましょう。ただし失敗したらクリスティーナ様には最優先で逃げてもらいますからね』
「分かったわ。ジオ殿下、ゴーレムは私たちで対処します。殿下は生徒から攻撃魔法を使える生徒の有志を募りファフニール帝国軍の侵攻ルートに二手にわけて配置してください。我々がかゴーレムを潰した後で構いません。攻撃をお願いします。あ、私たちが失敗したら逃げてくださいね」
『我々はゴーレムに攻撃しなくていいのかい?』
「あのゴーレムの魔法障壁は強力です。学生レベルの魔法では無意味なので攻撃しないようにしてください。唯一ダメージを与えられるとしたらソフィア団長だけです」
『???分かったが…まるであのゴーレムと戦ったことがあるような言い回しだね?』
「え?ええ、まぁ、以前戦って勝ちましたね」
『は?一体いつ、どこで…』
「その話は後にしましょう。有志を募るのに時間もかかりますし…」
『そうだな、では生きて戦いを終えることが出来たら聞かせてくれ』
・・・・・・
ー 2時間後 ー
影から魔導ゴーレムがもうすぐ森を抜けるとの報告があった。
「サンドラ、ナターシャ、ゴメンね、付き合わせちゃって」
『これがお役目です。気になさらずに』
『クリスの無茶はいつものことよ。もう慣れたわ』
この作戦は先手必勝。敵の攻撃の前に全てを片付ける。だが、ゴーレムには遠距離攻撃がある。もし魔弾を撃たれたら、私は魔法に集中するのでサンドラに弾いてもらうしかない。攻撃が続くようならナターシャに囮になってもらう。その役目を二人は引き受けてくれた。
『クリス、来たわよ』
森を抜けた魔導ゴーレムがこちらに向かってくる。
「始めるわ」
今から使うのは水の上級魔法。アクア様の加護を授かってから
蜘蛛のサポートなしでも使えるように修行を続けてきた。
『水よ、集え、集え、集え!』
まだ実力不足なのは自分がよく分かっている。でもアクア様の加護の効果、水場でのステータス10%アップもある。今の私なら出来るはず!
『水よ、我が意に従い敵を押し流せ!タイダルウェイブ!!』
ここは元々大量に水が満ちている。その水がゴーレム5体に襲いかかる。上級魔法の発動には成功した。ゴーレムにダメージは全くないが、狙い通り戦場全体が水浸しになった。
「オットー!!」
『お任せを、アースクエイク!!』
土の上級魔法。極地的に放てば地割れを発生させることすらできる魔法だが、今回は広範囲に放ってもらい、地面をシェイクしてもらった。
『おぉ〜、思った以上に戦場が泥化したわね』
そう、狙いは戦場全体を泥にすること。これでゴーレムたちは動きが鈍るだけでなく、踏ん張りが利かなくなった。
『ソフィア団長、オットー、仕上げを!』
『承知!!』
ソフィア団長が魔力を全開放する。相変わらず凄まじい。
『この魔法はグロいうえに使いどころを選ぶので実戦で使うのは初めてですなぁ、マッドハンド!!』
ゴーレムの周りから泥の手が無数に生える。そして踏ん張りが利かないゴーレムを強制的に移動させる。5体のゴーレムを一列縦隊に並ばせた。
『断ち割れろ!エスパーダ・カタストロフィア!!』
有無を言わさぬ一閃により、5体のゴーレムは全て同時に真っ二つになり沈黙したのであった。




