閑話 クリスティーナ暴走を危惧する
「暗殺が2回もあったんですか?ファフニール帝国によるものであることは証明できたのでしょうか?」
『残念ながら…』
ソフィア団長の話では余裕で撃退し、暗殺に使われた組織は2つとも壊滅させたが依頼元をたどらせない対策がなされていたらしく、証明は出来ていないとのことだった。
『今は外部の組織を使っている様ですね。そろそろ痺れを切らして帝国の暗部を使ってくるのではないでしょうか』
「…暴走しなければいいのですが」
ファフニール帝国の皇帝ゼクト・ファフニールは確か武門の出だったはず。暗殺が上手くいけば問題なかったでしょうけど、こうも失敗しているとなると正面切って戦争を仕掛けてこようとするのではないだろうか…
・・・・・・
ー ファフニール帝国 ー
ファフニール帝国は8年前までニーズヘッグ王国と戦争状態にあった。この2国は昔から仲が悪く散発的に小競り合いが発生する状態が長く続いていた。しかし、8年前、皇帝ゼクト・ファフニールの即位により、5年間の休戦協定が結ばれた。ファフニール帝国は好戦的な国と思われており、この5年間は大攻勢のための準備期間と目されていたが、8年経った今でもファフニール帝国は沈黙を保っていた ー
ー 皇帝御前会議 ー
(皇帝ゼクト視点)
「暗殺は失敗か、小細工が過ぎたやもしれんな」
ニーズヘッグ王国とリンドブルム王国の関係悪化を狙って暗殺を仕掛けたが、警備が万全のようだ。まるで暗殺を仕掛けるを待ち構えていたように。さて、どうするか。今まで外部の組織を使っていたが、ウチの暗部を使えば成功するか…いや、これ以上は無駄な気がする。
以前、魔導ゴーレム1体と研究者1名がリンドブルム王国の国境付近で消えた。恐らく我が国が戦争を仕掛けようとしていることを読んでいる…か、研究者が何らかの情報を吐いたのだろう。リンドブルム王国はニーズヘッグ王国と友好的な関係を見せつけて我が国が戦争仕掛けることをを牽制しているのか?時間を稼ぎ、手に入れた魔導ゴーレムについて研究しているかも知れん。いたずらに時を与えるのは愚策というものだろう。
「リョウスケよ。現時点で戦場に投入できる魔導ゴーレムは何体だ?」
『150体前後かと』
魔導ゴーレム。余が即位する直前、転生者リョウスケによってもたらされた新たな力。当時は設計段階で実現するためには時と金が必要だった。私はニーズヘッグ王国と休戦協定を結び、その力を現実のものとするため注力した。ようやく勝利を確信出来るだけの戦力を整えたつもりであったが、ここ最近、思い通りに行かぬことが起こっている。
「リョウスケよ。ニーズヘッグ王国、リンドブルム王国の両国を相手に戦争を仕掛けても勝てると思うか?」
『勝てると確信しております。魔導ゴーレムがあれば、戦略的不利な状況でも戦術的勝利で覆すことが可能です。ただ1つ懸念点があるとすれば、我が魔導研究所の恥を晒すようで申し訳ございませんが、情報が漏れた可能性があること。いたずらに時を重ねれば何らかの対策を取られる可能性がございます』
「うむ、余は考えすぎていた!この8年間でニーズヘッグ王国を叩き潰せる力を得たというのに、リンドブルム王国が介入してくる可能性を考え、暗殺など余らしかなぬ手段を選んでしまった。例えリンドブルム王国が介入してこようが、両国とも叩き潰せば良いだけのことであった!ニーズヘッグ王国に宣戦を布告せよ!これより戦争に突入する」
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『陛下』
「何だ?宰相」
『精霊魔法大学の方はいかがいたしましょう?ニーズヘッグ王国の王都を目指し進軍いたしますので放置しても問題ないかと思いますが』
「ああ、放置でよい…いや、先に攻め滅ぼすか」
『何故でございますか?』
「もしリンドブルム王国からの援軍があるとすれば、あの学園都市を通るであろう。先に攻め滅ぼし、防衛拠点として整備せよ。いずれリンドブルム王国も滅ぼす。その橋頭堡にするもよしだ」
『なるほど、かしこまりました』
「大学に魔法使いが多くいるといっても都市自体が大した規模ではない。魔導ゴーレム5体と、軍隊としては2個中隊も送れば十分であろう」




