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閑話 クリスティーナ留学先へ向かう

『1ヶ月休んだと思ったら今度は3ヶ月間も留学って忙しいわね。はぁ〜寂しくなるなぁ』


「ゴメンね、ノルン。私としてもゆっくりしていたかったけど、外交的な意味合いが強いから断りづらくて…」


『ううん、いいの。帰ってきたら色々聞かせてね』


「わかったわ」


・・・・・・


1週間後、私はニーズヘッグ王国へ向かう馬車に揺られていた。


「で、何故貴女がここにいるのですか?ソフィア団長」


『え?クリスティーナ様の護衛ですが』


「団長自らですか?」


『あのですねぇ、クリスティーナ様はもう少し自分の立場を理解された方がよろしいかと』


ま、自分の価値くらい理解してるつもりよ。高位貴族の令嬢で、かつ、アクア様の加護を授かってる。外交的な立場で言えば大臣クラスに匹敵する…いや、下手したら王族に次ぐくらいの立場になっていると思う。第3騎士団は貴婦人を護衛する役目を担っているからソフィア団長が護衛に就くのも頷けるけど、この人の場合…


「…3ヶ月間、団長の激務から解放されて嬉しそうですね」


『はて…何のことやら?』


「これから向かう学園都市は森の恵みを使ったスイーツが有名とか…楽しみですね」


『ご、護衛任務があるので行く機会あるかどうか…』


「クィーンの討伐の時にサンドラと休暇を楽しんだんですよね?ホセから聞いてますよ。まだ足りませんか?」


『足りないわ!もっと休みが欲しいし、もっと美味しいものを食べて回りたいのよ!…はっ!……えー、私の欲望は置いておいてですね、私にクリスティーナ様の護衛を命じたのは陛下です』


さっきも言った通り私は国の要人と言える存在だ。この留学はニーズヘッグ王国からの要請ではあるものの、国内外に我が国とニーズヘッグ王国との関係は良好であるとアピールするのにはもってこいの事柄だったようで、陛下はふたつ返事で承諾したらしい。つまり陛下のお考えは、我が国とニーズヘッグ王国は良好な関係であるとファフニール帝国に思わせて、戦争を仕掛けることを牽制しているってことかしらね。それで合ってるかソフィア団長に確認してみると…


『陛下はもっと悪辣なことを考えておいでですよ』


「悪辣?…あ、もしかしてペドロ師団長の研究で何か進展がありましたか?」


『はい、あの男は自分の興味があることについては異常なまでに優秀ですから。報告によると戦略魔法陣構築時間の大幅な短縮に成功したそうです。既に実験も終えて、今は追加で威力上昇の魔法陣を組み込む研究をしているそうですよ』


「つまり、リンドブルム王国としては戦争の準備は整ったわけですね」


新たな力を得ると試したくなるのは人の性…陛下としては戦略魔法陣を試すため早く戦争をしたいとお考えではないかしら。しかし為政者として、新しい力を試したいからなどという理由で戦争を仕掛けるなんて愚かなことは間違ってもできない。そんな状況の陛下にとって今回のニーズヘッグ王国からの私への留学要請は渡りに船だった。なぜなら、私の存在が戦争の火種になり得るからだ。

今回の要請に応えれば、我が国とニーズヘッグ王国は関係はある程度友好的な方向に傾く。で、あるならば、ニーズヘッグ王国を攻めたいファフニール帝国から見れば、ニーズヘッグ王国に味方がつくことになる。可能であるなら、それを避けたい、邪魔したいはずだ。

そういった状況でリンドブルム王国の要人がニーズヘッグ王国に長期滞在する。もし要人が何者かに暗殺されたらどうなるか?ニーズヘッグ王国は警備上の責任を問われることになり、我が国とニーズヘッグ王国の関係は悪化するだろう。

恐らく陛下はそれを狙っている。暗殺者を捕らえ、暗殺がファフニール帝国によるものだと証明できれば、要人を殺そうしたことへの報復という戦争の大義名分を得ることができる。


「…つまり、私は暗殺されに行ってこいという勅命を受けたわけですか」


『表現が辛辣ですね。まぁ間違ってはいないですが。

そもそもあんな物(魔導ゴーレム)を作っておきながら何もしないなんてことはあり得ませんよ。早いか遅いかの差です。攻められて後手に回るより大義名分を得て仕掛けた方が被害が少なくて済む。陛下はそうお考えになったのでしょう』


「それは理解できますが、暗殺される役回りを押し付けられた者としては文句の1つも言いたくなります」


『クリスティーナ様の気持ちは分かりますが、警備は万全ですのでご安心ください』


そう、万全なのだ。出発前にオットーが言っていた。護衛に着いた『影』の数が異常だと。その時は陛下は過保護だなぁと思ったが、暗殺されることが前提なら頷ける。


『もしかしたら何もない平和な留学になる可能性もワンチャンありますし、警備は我々に任せて気楽にしててください』


「そうね、そうさせてもらうわ」



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