第68話 魔物の転生者(複数視点)
ー サクヤ視点 ー
連隊長クラスの天使が集まって最近問題となっている魔物の転生者につて会議が開かれていた。
私は生きている魔物の転生者を確認した者としてこの場に呼ばれており、同じ立場の天使が何人かいた。
『ではシステムに問題はないと』
『ええ、そもそも天界で管理しているシステムです。天使以外の介入などあり得ません』
『となると転生先での問題ということね。何者かにより転生先で魂が魔物に転生させられているということになりますね。転生者の記憶はどうでしょう?』
あ、私記憶については確認してないわ。と思ったら別の天使が答える。
『私が管理してる転生者が遭遇した魔物の転生者は2つの前世の記憶があったそうです。地球での記憶と、1度目の転生者の記憶、2度目の転生が魔物だったことになります』
『ふむ、魔物の種族は?』
『ハーピィでした』
『私はマーマンでした』
私も言わないといけないわね
「私はケンタウロスでした」
『…人間にある程度似てる種族か、一部が人間の種族ですか。そして生息域は空に海に陸とバラバラ…どうにも情報が足りませんね。もう少し情報収集に務めましょう。ある程度数が増えれば地理的な場所が特定できるかもしれません。今日はこれで解散とします』
「メーテル連隊長、引き続き監視する感じでいいんですよね」
『そうね、情報が集まって犯人が特定できればいいけど、もう少しかかりそうですね。それまで大きな事件が起きなければいいですが…』
「そうですね…」
・・・・・・
ー ガレス視点 ー
1ヶ月後
ランブラス街道の盗賊騒動はミレーヌさんが盗賊を全滅させたということで決着した。ケンタウロスのことは伏せられた形だ。ギルマス曰く『神様が生かせと言うのなら仕方ないね』とのことだった。
そして今日はギルマスからの指名依頼でケイローンに会いに来ている。今のところ週に1回のペースで様子を見に来ている。
「ようケイローン、何か変わったことはないか?」
『特に変わったことはないし問題もない。生活用品や食料を提供してもらっているからな。特に調味料は助かっているぞ』
ケイローンには街道の脇に広がる森に住み着いてもらい、ゴブリンなどの魔物を狩ってもらっている。ローナはダンジョンがあるからダンジョン以外の討伐依頼の人気がない。ゴブリン狩りにしたってわざわざがギルマスが低ランク冒険者に指名依頼しているほどだ。ケイローンがゴブリンを減らしてくれて助かっているとギルマスが言っていた。
…あ、そうだった。
「奥さん、これお菓子です。子供たちと一緒にたべてください」
『あり…がとう』
雌のケンタウロスにローナで買ってきたお菓子を渡す。早速子供たちのところに行き一緒に食べるようだ。
「普通に人語を話せるようになるんだな」
『口があるのだ。喋れるさ』
「あ、そうそう、これを渡しておく。従魔の証だ。プレートにしてもらった。腕なり首なり見えるところ付けておけば、一応街に入れる…が、初めて街に入るときはミレーヌさんと一緒に入らないと街が騒ぎになるかもな』
『わかった…街に入れるかどうか別にしても、今は我らは魔物として認識されているわけだろう?街道にさえ出なければ人と会うことはないが少々不安だな』
「魔物として討伐の対象になるかも知れないからか?そのうちギルマスからお呼びがかかる。そのときミレーヌさんの従魔となったことと、この森にケンタウロス住み着いたことが公表されるだろう。従魔だから人を襲わないと伝えるはずだからそれまで静かにしてればいいさ」
『うむ、理解はしているつもりだがな…』
「やっぱり不安か?…じゃぁ積極的に動くか?」
『積極的にってどういうことだ?』
「お前との戦いで気付いたが気配察知のスキルもっているだろう?それで街道の警備をするのさ。魔物や盗賊に襲われている商隊がいたら助けてあげればいい」
『なるほど、自ら評判を上げるわけか』
「息子も何人かはもう一人前なんだろ、一緒に警備すれば良い群れとして認識されるだろうさ」
『面白いかもしれん、正直狩り以外は暇な時間が多くてな、やってみる価値はありそうだ』
何気ない会話から始まったこの構想は後に現実のものとなる。ランブラスの森に住み着いたケンタウロスは群れを成し、地域の治安維持に貢献する。
地域の住民は感謝の思いをこめ、彼らケンタウロスのことをこう呼んだ「ケイローン弓騎兵団」と。




