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第65話 救援へ(ニーナside)

ギルドの朝の受付ラッシュは既に過ぎ、昼の比較的暇な時間帯になった。

ガレスたちはランブラス街道の調査で明日の夕方まで帰ってこない。調査がメインとはいえ相手の盗賊はBランクパーティを全滅させている。仕事がない時間帯は心配でついつい考えてしまう…はぁ、考えても仕方ないか、とりあえずお昼でも食べようかな。


ん?ギルドの入り口がザワついてる?


『ニーナ!!』


え!?レイラ?何で?依頼中のはずでしょ?何で戻って来たの?何で一人なのよ?レイラは汗だくで息を切らして私の前に走ってくる。


『ニーナ、ハァハァ、ギルマスに報告がある!今すぐギルマスと話させておくれ!』


「ちょっと待って!!ガレスは、ガレスはどうしたのよっ!!』


『マスターは…マスターは私を助けるために、敵を食い止めるために残ったわ…』


「はぁ?貴女奴隷でしょ!!主人のために命を張るのが奴隷じゃないの!?なのにっ…!」


横から逞しい腕が伸びる。


『よしな、ニーナ』


「あっ、ミレーヌさん…」


『レイラ、ガレスが主人として逃げろと命じたのね?奴隷の貴方はその命令に強制されて逃げざるを得なかった…』


堰を切ったようにレイラが涙を流しながら話し始める、まるで幼子のように


『わ、わたし、ガレスを守るためなら命なんて惜しくないのにっ、そう思ってたのに、足手まといになって、ガレスが、ガレスが、俺が敵を食い止めるから逃げろって、そんなことできないって言ったのに、言ったのにぃ、ガレスが命令だって、ローナに戻って助けを呼んで来いって、私は、大切な…大切な人を見捨てる命令に従うしかなかったっ!何もできなかった!』


「ごめんなさい、レイラ。私も混乱して貴女を責めたりして…」


『レイラ、落ち着きな。とにかくギルマスの執務室に行くわよ、救援を送るしてもギルドからのから指名依頼だからリーゼ婆に話を通さないとねぇ』


・・・・・・


ギルマスの執務室にギルドマスター、ミレーヌさん、レイラと私が集まった。


『レイラ、状況を詳しく話しな』


『はい、敵は盗賊ではありません。ケンタウロスです』


『なんだって?犯人は魔物だというのかい?』


それからレイラが語るには、遠目ではあったものの明らかに普通のケンタウロスではなかったこと、400mという長距離からでも木を貫くほどの矢を放っていたこと、レイラの宵闇の衣を使った隠密をあっさり看破したこと、などの情報がもたらされた。そしてギルマスが結論を出す。


『…恐らく変異種だね。変異種は魔法やスキルを使える場合が多い。レイラが隠密状態にも関わらず狙われたのは看破スキルを持っていたからだろう。そして変異種は知能も高い。魔物には必要ない金目の物も奪って盗賊を装うことくらいするかも知れん…なるほどケンタウロスか。今まで襲われた馬車はいずれも食料を多く積んでいたんだ。魔物が犯人ということであれば納得いくね』


『それで、途中まで一緒に戦った感じ、ガレスは生き残れそうなのぉ?』


『わかりません。マスターは不意打ち耐性を持っているので、相手の矢はギリギリ躱せていましたが、本当にギリギリだったのでどうなるか…それに問題はこちらの攻撃です。ケンタウロスは400m先からでも、こちらを殺しうる矢を放ってきました。しかし、マスターの攻撃はギリギリ届く程度。それで勝てるかどうか…』


『リーゼ婆、私が出るよ、変異種となると油断ならないからねぇ』


『今すぐ動けるAランクはミレーヌしかいないから仕方がないね。あんたなら大丈夫だとは思うけど、射貫かれたりするじゃないよ』


『分かってるわぁ。さて、レイラ、疲れてるところ悪いけど案内はよろしくね…ほら、シケた面しないの。ガレスは別れ際に何て言っていた?』


『…死ぬつもりはないって』


『だったら大丈夫よぉ、男は女と交わした約束を守るために格好つける生き物だから、きっと生きてるわぁ』


こういうとき私は何もできない。分かっていることだけど、情けなくなってくるわ…


「レイラ、さっきはゴメン。ガレスをお願いね」


『ええ、分かったわ』

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