閑話 クリスティーナ死闘を繰り広げる
誤字報告ありがとうございます!
ジョーイという男の後から巨大な影が現れた。
「あれは…ゴーレム?」
ゴーレムであることは分かる。だが素材は何なの?それに肩や腕の膨らみ…明らかに何かを仕込んでいる。するとペドロ師団長が見解とともに注意を促す。
『全員聞け、ゴーレムではあるが素材は分からん。たが魔導研究員とか言うその男が作ったとなると一般的な物理一辺倒のゴーレムと思わん方がいい。遠距離攻撃がある前提で動け』
ゴーレムが前衛にいるフィガロとホセに向けて右手をかざす。腕の膨らみから魔力が送られるように腕の魔導回路が光り、その光が手のひらに到達した瞬間、手のひらから高威力の魔弾が放たれる。2人とも間一髪のところで躱す。
『あっぶなっ!』
『忠告がなければヤバかったですね』
やっぱり遠距離攻撃があったわね。ということは肩の膨らみもそうかしら?
ペドロ師団長から指示が飛ぶ。
指揮系統が統一されてないと混乱するわ。こと戦闘に関してはペドロ師団長の方が圧倒的に慣れている。ここは任せよう。
『全員、敵の攻撃を警戒しつつ攻撃に移る。まずはコチラも遠距離攻撃を放て』
『エアスラッシュ!』
『アーススピア!』
「ウォーターカッター!」
魔力を帯びた攻撃がゴーレムに当たったと思った瞬間、魔法障壁に弾かれた。自動で障壁を展開したように見えたわ。厄介ね。
『その程度の魔法攻撃など効かぬよ』
『サンドラ、もう一度だ。ソフィア、サンドラに合わせろ』
『『エアスラッシュ!!』』
サンドラの風の刃が魔法障壁に当たった瞬間、同じ所にソフィア団長の風の刃が当たると障壁を突き抜けゴーレムに斬撃が届いた。しかし見た目通り何らかの金属でできており、斬撃は若干ボディをヘコます程度のダメージしか与えない。しかし、よく寸分違わぬ同じ箇所に斬撃を当てることができるわね、さすがソフィア団長だわ。
するとペドロ師団長が独り言のようにつぶやく。
『魔法を防ぐ障壁はかなりのものだが、魔剣のように物理を伴う攻撃ならつけ入る隙があるか。そして純粋な防御力はソフィアの斬撃に耐えうる程度。それなら何とかなりそうだな。むっ!全員私の近くに寄れ!』
『ちっ、ふざけるなよ一気に殲滅してくれる!』
ゴーレムの肩の膨らみが扉が開くよう開いた。そこには幾つもの円錐状の何かが敷き詰められており、爆音とともに全て射出される
『フハハハハ!魔導誘導弾だ。一つ一つが中級爆炎魔法以上の威力があり回避不能だ。この数では躱せまい!』
ペドロ師団長の魔手甲が変形する。ペドロ師団長が開発した魔手甲はその状況によって最適な形に変形し、術者をサポートする。
『防御形態・魔盾ガラハッド』
ペドロ師団長の前に巨大な魔法障壁が展開される。敵の魔導誘導弾とやらが展開された盾にぶつかり爆発するが、その程度ではびくともしないようだ。
『ミゲル、近接戦闘を仕掛けてみてくれ』
『おう、任せろ』
ミゲル副隊長が魔槍斧で攻撃を仕掛ける。魔力は解放していない。純粋な物理攻撃だ。
ミゲル副隊長の膂力と技と魔槍斧の質量があれば、大抵の戦いはすぐに片がつく。しかし魔導ゴーレムは鈍重な見た目とは裏腹に高速で腕が動き、ミゲル副隊長の攻撃を捌いている。攻撃を弾くときに魔法障壁が見える。恐らく今度は物理に対しての障壁だ。あ、上手い、フェイクの攻撃を混ぜて胴体部分を攻撃した、えっ!胴体にも障壁!?
危ない!ミゲル副隊長はギリギリでゴーレムの腕を躱し、距離を取った。
…いや、躱せなかったみたい。ミゲル副隊長の額から数滴の血が垂れる。
『ハハハ、うまく躱したじゃないか。私が開発した魔導ゴーレムは我が国の騎士が敵わなかったのだ。貴様ら冒険者ごときが敵うわけなかろう』
『ミゲル、キレるなよ。お前がキレると後先考えずに突っ走るから手に負えん』
『ああ、分かってる。俺は成長した。この程度の傷でキレるわけねぇ…だが、お前ら手を出すなよ。この木偶はバラッバラになるまで俺がブッ壊す!!!』
(((キレてるじゃん!)))
あ、魔力解放したわね。あの派生スキルは一度見たことがあるわ。
『食らいやがれ!魔槍連弾!』
魔力を帯びた槍斧の連撃、普通なら耐えられないけど…連撃でゴーレムの両腕を弾いて胴を薙ぎ払って吹っ飛ばした!?
えぇ?吹っ飛ぶゴーレムに追いついた?どういう脚力してるのよ。
ミゲル副隊長は槍斧を振り下ろし地面に叩きつけた後、お返しだと言わんばかりに連撃を叩き込む。ゴーレムは装甲が壊れ、剥がれ始めている。
『い、いかん!エクストラモード発動!』
男の声に呼応しでゴーレムから周りの物を吹き飛ばすほどの魔力が溢れ出す。魔武具の魔力解放に似てるけど、放たれている魔力が桁違いだ。
『くっ!!なんだぁ?吹っ飛ばされたぞ』
『貴様らごとき冒険者相手にExモードを使うことになるとはな。まぁいい、このExモードはな、搭載されたAランクの魔物の魔石から魔力を一気に解放させることで出力を上げる奥の手だ。全ての性能が通常時の5倍に跳ね上がるのだ。魔石は壊れてしまうがな。貴様らを殺して、そこに転がってるクィーンキラービーの魔石を補充させてもらおう』
『今にも壊れそうな木偶が一時的に力を得たところで、壊れそうなことに変わりはねぇ。このままブッ壊す』
ミゲル副隊長が再びゴーレムと対峙するが、今度は結果が逆になり、ミゲル副隊長が吹っ飛ばされる。
ゴーレムは後を追う動作はせず、私たちに向けて手をかざした。ヤバい!と感じた瞬間、私は魔力障壁を張って咄嗟に横に飛び、射線から外れる。そこに上級魔法並みの高威力の魔弾が撃ち込まれ、辺りには瓦礫が飛ぶ。
なんてことなの、殆どタメ無しで今の威力って!?有り得ないでしょ!
ミゲル副隊長が叫ぶ。
『ペドロ、オットーさん!何とかヤツの動きを5秒とめてくれねえか?』
『仕方ありませんね、何とかしてみましょう』
何気にオットーも強いから何とかなっちゃうかも。はっ…!サンドラ!?
サンドラは、さっき飛んできた瓦礫が頭に当たったのか、頭から血を流してふらついている。
そしてゴーレムの腕がサンドラに向けられ無情にも高威力の魔弾が放たれる!
『おぉらぁぁぁ!!』
魔力を開放したソフィア団長が魔弾を魔剣で弾く、いや、弾ききれず吹き飛ばされた。クィーン相手に魔力を消費し過ぎたんだ。でも魔弾の軌道は変えることができたわ。
『『グラン・グラビティ!』』
ペドロ師団長とオットーによる土の上級重力魔法。
重力によってその場に釘付けになる。その間にミゲル副隊長が魔力を全開放する。
『ついでにこの魔槍斧、ロクラ・アラバルタの力も解放してやる』
うっ…ミゲル副隊長の魔槍斧からヤバい雰囲気の力が溢れ出し脈動する、まるで槍斧が生きているようだわ。
『これが最後の攻撃だ!』
ゴーレムに対して魔槍斧の魔力を叩きつけた。ゴーレム中心にクレーターが出来上がり、ゴーレム自体は文字通り腰が砕けた。次の瞬間、叩きつけた魔力が反転して噴き上がる。それによりゴーレムも宙に浮く。
落ちてきたゴーレムに対して高速で突進。宙に浮いていて躱すことが出来ないゴーレムに全力の攻撃を敢行する。
『エテルノ・インパクト!』
ゴーレムは腕を十字に構え障壁を張り耐えよとしたが、ミゲル副隊のスキルレベル10の派生スキルに耐えられるわけがない。魔槍斧は障壁、腕もろとも胸を貫き、胸にポッカリ穴が空いた状態で吹っ飛び完全に沈黙したのだった。
・・・・・・
ふ〜、何とか乗り切ったわ〜。まさか最後にこんなトラブルが発生するなんて思ってなかった。
まだ、事後処理とか私たちに喧嘩を売った馬鹿な男の処遇とか色々あるけど、さっさと王都に戻ってゆっくりしたいわ…
クリスティーナの思いとは裏腹に事態はより混沌をふかめてあくのであった。




