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閑話 クリスティーナ再び討伐する

目的地の村に着いた。

ソフィア団長一行は休暇を装っており、旅を楽しみながら行くと言って早めに出発したので既に着いている。

ミゲル副隊長一行は馬車なんて性に合わないと言って、馬での移動なのでこちらも既に着いている。

最後のペドロ師団長と私が今到着して全員揃ったことになる。

先に着いていたソフィア団長とミゲル副隊長が喧嘩していないか不安だったけど、別々の宿で休んでおり顔を合わせてないようだ。

だが、流石に顔を合わさないまま討伐なんてできないので、私が泊まる宿の一室に全員集まってもらった。


『ペドロ、ミゲル、久しぶりね』


『ええ、久しぶりですね』


『おう、久しいな』


…あれ?喧嘩腰で話をすると思ったけど割と普通ね。

まぁトラブルが起こらないのであればそれにこしたことはないわ。さっさと話しを進めましょう。


「では私から今回の討伐について詳細をお話しします・・・


今回のクィーン討伐の方法と陛下の意図、機密性を説明した。

討伐において3人の魔武具使いのスキルレベルがLv10となれば、それぞれ派生スキルを習得するだろう。

個人レベルではあるが、軍事面において強力な攻撃手段の一つが増えることは間違いない。

そしてマジック・スパイダーについては、旅の道中ペドロ様と話を詰めたが、どこまで魔方陣を習得できるか、

戦略魔方陣を習得できるかが、今後の検証の肝となるだろう。

戦略魔方陣を習得することができ、圧倒的な速さで魔方陣を構築することができれば軍事的に優位に立てる。

こと軍事に関してこの3人は、腕も良いが頭も良い。今回の討伐の重要性についてすぐに理解してくれた。

するとソフィア団長が話はじめた。


『今回の討伐について諸々の事情は理解したわ。スキルレベル10になれば新たに派生スキルを習得できるでしょう。

その派生スキルを私がクィーンで試させてもらわよ。ちゃんと言っておかないとミゲルあたりが殺しちゃうからね』


「私は構いませんが…お二方は?」


『『構わん』ねぇ』


思ったより聞き分けが良くて助かるわ。聞いていたより仲は悪くないのかしら。


「では明日の朝から討伐に向かうので、今日は体を休めてくださ・・・い?」


そういってその場は解散するつもりだったが、よく見るとナターシャの鎧や服に血が付いている。ここに来る道中に何かの戦闘があったのかしら?


「ナターシャ、鎧に血が付いているどここに来るまでに戦ったりした?」


『うん、道中、暇だったからミゲル副隊長に頼んで稽古をつけてもらってたのよ。実戦形式でやったから軽い怪我をしてその時の血が付いたんだと思う。

あ、勘違いしないでね、低級ポーションで治る程度の傷だから、ミゲル副隊長は手加減してくれたわ』


ふーん。ナターシャは向上心が高いから稽古をつけてもらったというのは本当のことでしょうね。でも妙にナターシャとミゲル副隊長の距離が近いというか何というか…?気のせいかしら。そう思っていたところソフィア団長が忠告してくれた。


『ナターシャ、気を付けた方がいいわよ。最初は厳しく稽古をつけているけどね、そのうち褒めだすのよ。そして甘い言葉もかけるようになってくる。で、最終的に体を許しちゃうのよ。まったく、女性騎士なんて恋愛に免疫がないからね、ウチの団員が(第三騎士団の団員が)何人そいつの毒牙にかかったことか…犠牲者が出るたびに切りかかってやったわよ』


あー、それが仲が悪い原因の一つなのね。ん?ナターシャ?何で青い顔してるのかしら?今、危なかったと言ってなかった?しっかり罠にハマってたみたいね。ソフィア団長がいてくれて良かったわ。


・・・・・・


翌朝、討伐メンバー全員が揃う。相変わらずオットーは執事の服のままだ。お三方が何か言いたげだが気にしない。


「では出発しましょう」


前回のクイーン討伐でのレイラとヤエの役割はオットーが担う。オットーも隠密スキルを持っているから完璧にこなしてくれるだろう。

歩きで1時間ほどかけて国境付近の森に到着する。そこから細い林道を進む。林道ではあるもののクイーンが住み着いたせいで使われなくなったのか、今は草が生い茂っており歩きにくい。それでも1時間ほどで巣の近くに到着した。


「さて、巣に着いたわね。蜂の方も私たちを警戒しているようだし、早速始めましょう!」


オットー以外の全員が、蜂の先行部隊を蹴散らす。前回の討伐ではウチの騎士だけだったので全力で先行部隊と戦ったが、今回はペドロ師団長がいる。

上級範囲魔法で先行部隊を一瞬で殲滅したら、オットーが出入口を塞ぐ時間が稼げないので、ある程度手加減してもらう。


『本気を出せないとは、歯がゆいものだな』


ペドロ師団長が向かってくる蜂だけ下級魔法で撃ち落としながら愚痴る。

しばらくすると、オットーが戻ってきたので速攻で先行部隊を全滅させた。3人が揃っていると恐ろしく早い。


全員で巣に近づく。オットーの土魔法で出入口が檻で塞がれいて蜂が外に出れないでいる。

ミゲル副隊長が素直な感想を述べる。


『間抜けな構図だな。今までこんな間抜けな奴らを倒すためにに騎士団と魔法師団が出張ってたのか』


「今まではそれで対処できてしまっていましたからね、他の倒し方を模索するという考えにならなかったのでしょう。さぁ煙を送りましょう」


今回の目的はソフィア団長、ミゲル副隊長、ペドロ師団長のスキルレベルアップなので、まずは3人にハンディファンで巣に煙を送ってもらう。

開始早々スキルレベルが上がったのかソフィア団長から感嘆の声が漏れる。


『こんなあっさりレベルが上がるなんて…今までの苦労はなんだったのかしら』


15分経ったところで3人とも魔武具使いのスキルレベルがLv10に到達した。

そして煙を送る役を既にテイムしてある蜘蛛2体に交代。

せっかくなのでサンドラにも煙を送ってもらってスキルレベルを上げてもらう。


・・・・・・


30分が経った。

蜘蛛2体は無事進化条件を満たしマジック・スパイダーに進化した。

興味津々のペドロ師団長は2体に対して魔方陣の講義をしている。私とオットーの蜘蛛なんだけどな。

サンドラはLv9までは上がったが、どうやらそこで打ち止めのようだ。

もうちょっとだったのにぃ~と悔しがってるところ、前回同様地鳴りが始まった。


「さぁ真打登場です。クイーンが出てきますので気を引き締めてください。サンドラ、先ずは全開の風魔法で毒霧を吹き飛ばしてください」


『必要ない』


その声の方を見ると、ソフィア団長が魔剣の魔力を全開放していた。凄まじい魔力だ。


「は?ちょ、ソフィア団長!?」


地中からクイーン・キラービーが現れる。次の瞬間ソフィア団長の派生スキルが発動する。


  『エスパーダ・カタストロフィア』


刃を振るった後の一瞬の無音。巨大な風の刃がクイーン・キラービーを縦に断ち割った。いや、クイーンに止まらず森ごと断ち割られていた。

刃に触れた物は例外なく断ち割られており、終わりが見えない。今までの派生スキルとは別次元の威力だ。


『さすがLv10の派生スキル。想像以上の威力ね』


と、ソフィア団長は満足気だ。

命令無視みたいなものだけど、まぁいいか。目的は果たしたからね。

魔武具使いのスキルレベル10到達に蜘蛛2体の進化。クイーンの討伐。思いのほかトラブルはらしいトラブルはなかったし、完璧に勅命をこなせたわ。

あとは、素材回収して帰るだけ。前回の失敗を踏まえて王家所有のマジックバッグを借りてきたからね。クイーンの巨体でも余裕で入るわよ。

ようやく肩の荷が下りたと思って喜んでいたが、何故か3人が厳しい表情をしている。

え?何で?どうしたの?と思ったところ、森の奥から一人の男が現れた。


『おや?Aランクの魔物を探知したので来てみれば既に倒された後でしたか。その装いは冒険者ですか?まったく無駄足を踏ませてくれますね』


ミゲル副隊長が低い声で問う


『てめぇ何者だ?』


『くくく、本来なら名乗りませんがね、あえて名乗りましょう。私はファフニール帝国 魔道研究所開発主任 ジョーイ・バートンという』


『その帝国のクソッタレがこんなところで何してる?』


『今我々はある研究のテスト段階でねぇ、魔物相手に試運転していたところなのだよ。せっかく高ランクの魔物の反応を探知したので来てみたのだが、君たちが倒した後だったというわけだ。残念ながら魔物との戦闘データは取れないようだが、対人戦闘データも重要でねぇ。Aランクの魔物を倒せる冒険者なら申し分ない。君たちには私たちの研究の糧になってもらおう』


そう言うと、ジョーイという男の後方に巨大な影が現れた。

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