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第55話 ダンジョン都市ローナへ


オレたちは今、馬車でダンジョン都市ローナに向かっている。 

行商人の護衛依頼を受け、商隊を護衛しながらの3日ほどの旅だ。


バスクでは奴隷パーティーの俺たちと深く付き合う冒険者はほとんどいなかったが、何人か世話になった人にはちゃんと挨拶して出てきた。


ダルさんは魔道具の販売方法をオレから学んだと言っていた。オレの接客を見て色々真似しながら売り上げを伸ばせるようになったらしい。若造のオレから学び、よく意見を聞いてくれた。器がでかい人だ。きっとダルさんの店はもっと大きくなる。


ステラさんは別れ際に中級ポーションの作り方と効果を上げるコツを教えてくれた。私に教えられるのはここまでだよと言っていたが、十分です師匠。薬品精製スキルは色々役立ってくれた。ステラさんには感謝しかない。


ギルドマスターとジャックさんはローナに活動拠点を移してからのことを心配してくれた。

奴隷パーティーは風当たりが強い。奴隷パーティーというだけで絡んでくる輩がいるかも知れない。揉めた場合の対策は考えてあるが、最悪フェアリーテール家の名前を出す。こういう時のために後ろ盾になってもらった訳だからな。


そしてシスティーナさんとルカさん。ニーナのことを頼まれた。友人として当然か。

まぁ、ニーナが抜けて忙しくなるという文句も一緒に言われたが。


そして旅の途中、久しぶりに連絡があった。


『おひさ〜元気してた?』


「サクヤじゃないか、久しぶりの神託だな。何かあったか?」


『何もないわよ。コッチはね。

でもそっちは色々あったわね。Aランクパーティーが一緒だったとはいえ、よくクィーンを倒せたわ。あれで相当徳が稼げたわよ。

もっとも、権天使昇級まではまだまだだけどね』


「あの戦い見てたのか。あれは作戦が上手くハマってくれただけたよ。いつもああならいいけどな」


『それで、移住するんだって?』


「ああ、今、移住先に向かってるところだよ」


『そんなガレス君に朗報です。移住先での生活をちょっとだけ手助けしてあげようと思ってます。』


「マジか。そういう神託を期待してたんだよ」


『ローナを拠点にしてる冒険者を管理する天使がいるの。一応、友好的に対応してもらうように神託でお願いしてくれるらしいわ。本当に友好的にしてくれるかどうかは、その冒険者次第だけどね』


「いい、いい、十分だよ。味方がいる可能性があるだけで気が楽になるよ」


『そっか、じゃぁまた連絡するから、うまくやりなさいよ〜』


相変わらずノリが軽い神託だ…ん?何か周りが注目してると疑問に思ってたらニーナが質問してくる。

『大丈夫?いきなり独り言を言いまくってたけど…というかサクヤって誰?』


あぁ、そう見えるよな。ちゃんと説明するか。

「今、神託があったんだよ。サクヤっていうのはオレに神託を授けてくれる天…じゃなかった、神様だよ」


『『『神託!?』』』


『転生者は神託を授かる頻度が高いって聞いてたけど、本当なのね。それでどんな神託だったの?凄くノリが軽い気がしたけど』


「ノリが軽いのはアレだ、フランクな神様なんだよ、うん。で、神託の内容は、最近頑張ってるなって褒められたことと、頑張ってるからちょっとだけ助けてもらうことになった。ローナのある転生者パーティーに、オレたちと仲良くしてくれと伝えてくれるらしい」


『いいじゃない。1番の悩みどころを解決できるかもしれないわね。流石、神様だわ』


・・・・・・


ー ダンジョン都市 ローナ ー


この世界のダンジョンは色々な使い道があるため、発見されると自然とダンジョンの周りに街ができるし、国も管理に乗り出す。このローナのダンジョンは約700年前に発見された。階層は100階層。優秀なAランクパーティーなら踏破できるレベルと言われている。

ダンジョンを中心に街が広がっており、人口だけなら王都を凌ぐ。ちなみにローナのように管理されているダンジョンでスタンピードの可能性はほぼゼロだ。そんな街にオレたちはやってきた。

移住前に一度来ており、一軒家を借りる手続きを済ませてあったので、今オレたちはその住処にいる。

今後の予定だが、今、ニーナだけが冒険者ギルドに行っており、ギルド員の転属手続きを済ませている最中だ。明日、ニーナが受付してる窓口でオレたちのパーティーの転属手続きを済ませることにした。可能な限りトラブルが無いように手続きを進めたいが…トラブルは起こるだろうな。

どんなトラブルが発生するか想定できるから、レイラとキャロルとは対応策を共有済みだ。


夜になってニーナが帰ってきた。

「ニーナ、お疲れ様。ギルドはどんな感じだった?」


『悪くはないわ、ただ、人が多いこともあって、その分腐った連中は一定数いるわね。明日はトラブルに巻き込まれるでしょうね』


「オレたちの他に奴隷パーティーはいたか?」


『いるわよ、AランクとBランクにそれぞれ1組ずつ。強さ的に一目置かれてるみたい。特にちょっかい出すやつはいないと聞いたわ。ただ、今日はいなかった』


周りの連中に認められれば奴隷パーティーでも活動はできるのか。神託のパーティーと連携が取れればと思ったが、サクヤはパーティー名とか教えてくれなかったから向こうからのコンタクトを待つしかない。


『ところでパーティー名はどうするの?』


「何でもいいな…じゃノーチェで」


『どういう意味?』


「夜、だな」


『ふーん、スキルが夜の帝王だからかしら、安易ね』


名前なんてどうでもいい。

これからダンジョンで実力をつけてのしあがってやるさ。


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