第53話 キャロル
『いらっしゃいませ、ガレス様。お待ちしておりました』
2人目の奴隷を買いに奴隷商のハンスさんのもとを訪れている。
ニーナとレイラは移住するために入り用になる物を買い出しに行っているのでオレ1人だ。
ハンスさんからは依頼に合った奴隷が見つかったと連絡はあったものの少々訳ありらしい。諸々納得できるのであれば買うことになる。早速何が問題か聞いてみる。
「目当ての奴隷が見つかったが、何か問題があるそうですね。詳しく教えてもらえますか?」
『はい、端的に申し上げますと不感症ですな。容姿は特定の方には受けが良く、需要はあるのですが。彼女の性行為での反応が悪く。2度返品されております。』
不感症か。オレのスキル効果が勝れば感じさせることが出来るだろう。例え感じる事が出来なくても罠師としては雇いたい。とりあえず会ってみるか。
「不感症でも構わないから、とりあえず会わせてもらえるかな」
『承知いたしました。こちらへ』
部屋に入ると背の低い少女がいた。可愛いらしい容姿、発達途中に見える胸。なるほど、特定の方には受けが良いとはロリコン連中に受けが良いってことか。
『彼女の名前はキャロル。ドワーフのクォーターです。そのため人族より多少寿命が長く、背が低いです。人族としてみると成長途中に見えますが立派な成人で34歳。幼い頃に盗賊団に拾われ、ドワーフの血をひいているせいか手先が器用であり、盗賊団では鍵の開錠や罠の作成、設置、解除などを担当していたようです。その容姿から性行為の方も引く手数多だったようですが、いつしか心か、体か、あるいはその両方か分かりませんが完全に壊れたようで、性行為には反応しなくなりました』
「はじめましてガレス様、キャロルと申します」
…自己紹介はそれだけか?笑わないし喋らない。壊れているのは恐らく心だ。であればオレのスキルで何とかなる。
ステータスを確認させてもらう。
名前:キャロル Lv32
年齢:34
加護:なし
スキル:罠設置Lv7 罠解除Lv7 開錠Lv7 闇魔法Lv2
称号:罠師
力:64
耐久:69
俊敏:65
知力:78
精神:68
器用:224
魅力:112
運:55
体力:156
魔力:105
罠師だけに器用特化だな。
年齢の割にレベルが低い。ステータスの伸びも良くない。罠師の称号取得条件に敵を罠に掛けた回数1000 回以上とある。恐らく今まで直接的な戦闘はせずに罠だけで敵を倒してきたから
ステータスの伸びが悪いのだろう。
罠師の効果は以下の通りだ。
設置した罠のダメージ2倍。
罠の被ダメージ50%カット
罠の設置速度50%アップ。
罠の解除速度50%アップ。
ステータスアップがないし罠以外は何ら効果がないだけに、罠に関しては色々上がるな。
闇魔法は何に使うのだろう?
「闇魔法は何かに使うのか?」
『あまり使いませんが、ダークネスという魔法で周りを暗くして罠に気付きにくくするくらいでしょうか…』
「なるほどな…ハンスさん。キャロルを買います」
『不感症の方はよろしいのでしょうか?』
「多分何とかなります」
『では手続きいたしますので少々お待ち下さい』
・・・・・・
『お買い上げありがとうございました。またのお越しをお待ちしております』
ハンスさんがお決まりのセリフを述べるが、だがまたのお越しは移住するからあるかどうかわからない。一応移住について伝えておこう。
「ハンスさん、ウチのパーティーはローナに移住してダンジョン攻略に挑むつもりです。今後、ここに来る機会は無いかもしれません」
『左様でございますか。奴隷を購入するつもりがなくても寄っていただきたいと思います。お売りした奴隷の活躍をお聞きするのも奴隷商の楽しみの一つでございますので』
「そうですか。ではバスクに戻ったら必ずここに寄りますよ」
『ええ、その時はこの老骨に冒険譚をお聞かせください』
そうしてハンスさんと別れ、改めて借りた宿屋にキャロルを連れて戻ってきた。
部屋に戻るとニーナとレイラは買い出しを終えて既に部屋にいた…ん?何か二人からの視線が痛いのだが。
『マスター、そういう趣味があったのか』
『年端もいかない子を奴隷にするのは引くわ』
はぁ~、この容姿ならそういう反応になるか。
「新しい奴隷を紹介する。名前はキャロル。ドワーフのクォーターだから見た目通りの年齢ではない。お前ら2人より年上の34歳だぞ」
『『え!?そうなの』』
「容姿はさて置き、罠師として優秀だ。罠師の称号を得ているからな。
キャロル、二人を紹介する。こっちがニーナ、ギルドの受付嬢。で、こっちがレイラ、元盗賊の犯罪奴隷でキャロルの先輩ということになる」
『よろしくねキャロルちゃん…ってちゃん付けでもいいかしら?』
『構わない。好きにして…』
『よろしくな、キャロル。マスターの相手は大変だけど頑張ろうな』
『大変なの?でもどうせすぐに興味が失せると思うわ』
ニーナとレイラは少し困ったような顔をしてる。何もかもをを諦めているように見えるキャロルを見て、どう接すべきか迷っているのだろう。
何にせよまずはウチのパーティーの洗礼を受けてもらう。
「レイラ、悪いけど今夜はニーナの部屋に泊まってくれないか」
『わかったよ』
さて、オレのスキルで心を直す事が出来るか試してみるか。




