第41話 レイラ、デレる
『なるほど、ガレスは面白いスキルを持ってるのね。じゃぁ早速魅力を上げるのを手伝ってよ』
『お嬢様、お戯れがすぎますよ』
『冗談よ。さすがの私でも初めてくらいは好きな相手…とはいかないまでも雰囲気くらいは大事にしたいからね』
『今のスキルの説明を聞いて思ったけど、ガレスが奴隷パーティーを組んだ理由はスキル効果を十分に活用したいからでいいのかしら?』
「はい、仰る通りです」
・・・クリスティーナ嬢の様子が少し変わった?
『レイラと言ったかしら。貴女、幸せ?』
急に質問受けたレイラがキョトンとしているが、すぐに優しく微笑み自分の想いを伝える。
『はい、今まで生きてきた中で一番幸せな時間を過ごしています』
そうか、幸せと言ってくれるか。
『私は元盗賊で犯罪奴隷…盗賊時代、周りにいた男はクズばかりで、自分勝手で他の人を思いやる気持ちなんて1ミリもない。自分以外は生きるため財を奪う対象でしかない。自分の欲を満たすためなら何をしてもいい。そう思っている連中しか周りにいない状況で生きてきた。そして私もクズ共に染ってしまった。
盗賊団が壊滅して犯罪奴隷に落とされてから、奴隷として買われれば、盗賊と似たような人間に、もしかしたら盗賊以上に悪辣な人間に飼われると思っていたわ。
でも違っていた。私を買ってくれたマスターはとても優しくて、奴隷の私でも気遣ってくれる。大切にしてくれる。ベッドの上ではちょっと意地悪なところもあるけど、私を精一杯愛してくれるの。
人として、女として、これ以上の喜びはないわ』
『ふふっ、恋人の惚気話を聞かされてるみたいね』
『当然よ。最愛の人の惚気話をしてるんだから』
レイラの想いは素直に嬉しい。嬉しいが、友達と恋バナしてるわけじゃないんだがなぁ
『ゴホンッ!』
オットーさんが強めに咳払いする
さすがにレイラも自分の無礼に気付く。
『あっ!これは…失礼しました…』
『ねぇオットー、ガレスは警戒するような人間じゃないと思うのだけど、どうかしら?』
『私もお嬢様の考えと等しゅうございます』
「警戒?」
『そう、警戒。
奴隷を雇う奴なんてほとんどがクソ野郎で、かつ、一癖も二癖もあるような異常者よ。
実際、精霊の出現条件を伏せて貴族を引っ張り出そうとするなんて常人がすることではないわ。
まだ聞いてないけど、精霊の出現条件を教える代わりに、私に…というかフェアリーテール家に何かして欲しいのでしょう?その何かを警戒していたわけ。
でも実際会ってみたら反吐が出るくらいの甘ちゃんなんですもの』
もうちょっと言い方ってものがあるだろう。
『警戒するのが馬鹿らしくなったわ。アナタの言う事何でもきいてあげるから言ってご覧なさい』
「・・・クリスティーナ様が精霊の加護を授かった後でなくてもいいのですか?」
『別にいいわよ。加護が授かれなかったとしてもアナタの言うことをきいてあげるわ。
ぶっちゃけるとね、気に入ったのよ、アナタのことが』
『はい、レイラ。いちいち反応しない。そういう意味じゃないから』
『ぁぅ…』
レイラ、今日は完全にデレてるな。
『純粋に、奴隷に最愛の人と言わしめた男が気に入っただけよ。さあ、言ってご覧なさい。アナタは何を望むの?』
「ありきたりで申し訳ありませんが、後ろ盾ですね。奴隷パーティーはただでさえ風当たりが強い。冒険者として強くなるつもりですが、冒険者の実力だけではどうにもならない状況に陥るかも知れない。そうなった時・・・」
レイラと目が合う。
そうなった時、オレはこいつらのために命を張れるのだろうか?・・・あ。
『コイツを守る力が欲しい。とかかしら?格好良いわねぇ』
うぅ、うるさいな、ニヤつき過ぎなんだよ、この嬢ちゃん。
「そ、そうなった時、後悔したくないと言おうとしたんです。第一、奴隷は増やす予定ですからレイラだけが特別ではありません」
『ふ〜ん、そういうことにしておいてあげる。
それに後ろ盾ね、いいわよ、なってあげるわ』
「ありがとうございます。クリスティーナ様のご判断に心からの感謝を」
『かたい!かたいな〜、態度が硬すぎるわ。その態度を改めたら後ろ盾になってあげる。何?まだ緊張でもしてるわけ?』
いやいやいや、そうじゃねーんだよ。
ここで元凶のオットーがようやくしゃべりだす。
『お嬢様、彼等が感じているのは緊張ではございません。恐怖ですよ』
『え゙、私ってそんなに怖い?』
『お嬢様ではございません。彼等は私に恐怖しているのです』




