第40話 クリスティーナ
レイラと共に呼び出された場所へ向かう。バスクで1番大きな宿屋…というかホテルだ。
受付にフェアリーテール家に呼び出しを受けた旨を伝えると、恐らくスイートルームであろう部屋に案内された。
ゴツい騎士が数名部屋の前に立っていたので話しかける。
「冒険者のガレスという者ですが、フェアリーテール侯爵家の方に呼び出し受け、こちらに参りました」
すると高圧的な返事が返ってくる。
『貴様、奴隷を連れてくるとはどういう了見だ。お嬢様に奴隷を会わせる気か?』
ムカつく野郎だ。だが、ここで喧嘩を買うのはいささか早計だろう。仕方ない謝って、レイラをさがらせるか。
そう思った矢先、部屋の中から女性の声がした。
『構いません。部屋に入れなさい』
騎士は渋々従い、オレたちを部屋の中へ通す。
部屋に入ると美しい少女と中年の執事の男性。そして部屋の外にいた騎士とは違い、女騎士が2人いた。
ん?・・・レイラの顔を見る。
『はじめまして、私はフェアリーテール家長女、クリスティーナ・フェアリーテールよ』
「私は冒険者のガレスと申します」
クリスティーナは人懐っこ笑顔で笑う
『そんなに緊張しなくていいわ。公式の場ではないし敬語とかも適当でいいから、楽しくおしゃべりしましょう。』
「お心遣い感謝いたします。クリスティーナ様」
『もう、堅っ苦しいなぁ、クリスって呼んでいいわよ』
この嬢ちゃん自由奔放だな。仕方ないと思い執事に目配せする。
『お嬢様、無理を仰らないでください。公式の場ではないとはいえ、平民が貴族と会うなど早々ございません。ましてやお嬢様は高位貴族でございます。相手は平民ゆえ、多少の無作法は目をつむるとしても、ある程度の礼儀は必要にございます。』
クリスティーナが不満そうに答える
『えー、面倒なお茶会や夜会じやないんたからいいじゃん。オットーは頭が固いなぁ。
あっ、この頭が固い執事はオットーっていうの』
『ご紹介にあずかりましたオットーです』
「これはご丁寧に・・・」
『ねぇねぇ、早速なんだけどさ。ガレスは水の精霊に会ったって本当?』
「事実でございます」
『ふーん、その割にはあなた以外の冒険者は水の精霊に会えなかったって聞いてるわ。何でかわかる?』
『確証はございませんが、恐らく精霊に会えなかった冒険者はある条件を満たしてないと思われます』
『フッ、ハハ、アハハハハハ。ガレスっていい性格してるねぇ。あえて一部の条件を伏せて冒険者に探索させた。冒険者が精霊に会えなければ、後から探索に来るであろう権力持った人間は最初に精霊に会ったがレスに精霊に会った時の様子を聞きに来る。それを待っていたって感じで合ってるかしら?』
「概ね合っております。1つ訂正させていただくなら、私は特殊なスキルを持っておりますが、それを他人には伏せております。今回の条件はスキルが関係するため伏せていたというのが正確なところでございます」
『なるほどねー。それで、条件があるところまでしゃべってくれたってことはフェアリーテール家はアナタのお眼鏡にかなったのかしら?』
「はい。ただフェアリーテール家ではなく、クリスティーナ様だからこそ話すに気になりました」
『あら、お世辞でも嬉しいわね』
「お世辞ではありませんよ。本音です。条件を聞けば分かると思いますよ」
『へぇ、では条件を教えてちょうだい』
「その前に1つ、無礼なことを申し上げてよろしいでしょうか?」
『何かしら?』
「先ほど申し上げた通り、私は自身のスキルを伏せています。
可能な限りの人払いをお願いいたします。今の人数がその状態ということであれば、そのままお話しいたしますが」
『ふむ・・・サンドラ、ナターシャ、席を外しなさい』
『お嬢様…』
『貴女たちの言いたいことは分かってるわ。でも大丈夫だから席を外しなさい』
『かしこまりました』
2人の女騎士が部屋を出ていく。
『さぁ、話してちょうだい』
「はい、恐らく精霊を出現させる条件は魅力が500以上あることでございます」
『500以上?あぁ、それでフェアリーテール家ではなく、私がお眼鏡にかなったと言ったわけね。でもちょっと過大評価してるかな。私、魅力500もないのよね。40くらい足りないかな〜。・・・あれ?それが条件だとしたらガレスかそっちの奴隷が魅力500 を超えているってこと?そんな風には見えないけど。』
「魅力が500以上あるのは私です。特殊なスキルによって魅力が高い状態なのです」
『人のスキルを詮索するほど野暮じゃないけど羨ましいスキルね』
『お嬢様。確かローラ様が魅力を上げるアイテムをお持ちだったと記憶しております』
『お母様が?じゃぁ借りるために出直しかしら。王都に戻るのが面倒ね。
はぁ、ガレスどんなスキル知らないけど、アナタのスキルで何とかならない?』
オレはレイラと顔を見合わせる。そりゃ一発ヤれば計算上40以上上がるけと、物理的に首が飛びそうだ。
あ、まずい。黙ってしまっていた。これじゃ肯定してるようなもんだ。
「え〜っと、魅力を上げるまともな方法はありません。な、レイラ」
『ええ、まともに上げる方法はありません』
お、嘘をつけないレイラが上手く追従できた。誤魔化せるか?
『つまり、まともではない方法なら魅力を上げる方法があるのね』
くっ、完全に見透かされてる。
オットーさんが凄みながら語る
『お嬢様に対する虚偽は万死に値すると心得よ』
あー、こりゃあかん。
「分かりました。私のスキルについて話します。ただし、魅力を上げる行為を実行するかどうかの判断はオットーさんがすることが条件です」
クリスティーナ嬢に任せたらノリでやるとか言いそうだからな。
『別に構わないわけど?オットーもいいわよね』
『無論、問題ございません』
「では、説明しますね・・・」
オレは仕方なく夜の帝王について説明するのであった。




