第39話 報告
今日はステラ師匠の火傷に効く軟膏作りの手伝いをするため師匠の店に来ている。
メンバーは、ニーナとレイラ。そこに何故かシスティーナさんとルカさんも加わっていた。
『それでウチの弟子は水の精霊に呪われちまったわけかい、バカだねぇ』
「バカとは酷いですね。正しい主張をしただけです。できないことをできないと言って何が悪いんですか」
『相手は女の子だったそうじゃないか。だったら言い方ってものがあるだろう』
「相手は精霊ですよ。見た目通りの年齢とは思えないし、少女の姿をしてましたが、本当に女かどうかだって怪しい相手です」
『それでも女の子の姿だったら女性として扱ってやるもんだよ、ねぇみんな?』
『『『そうですね!』』』
くっ、全員口を揃えて答えやがって、全員敵か。
『で、呪いってどんな呪いっすか?』
「まず、水魔法を覚えられない。そして水魔法のダメージが倍増する」
『女の子をイジメた罰として受け入れるしかないっすね〜』
まぁ、水魔法を使う奴とやり合う時に気を付ければいいだけだ。それほど重い呪いじゃないのが救いだな。
しかし受付嬢が3人も休んでギルドは大丈夫なのか?
「今日はたまたま3人の休みが合ったのか?」
システィーナが呆れたように答える
『どっかの誰かさんが精霊の出現報告なんかするから、ほとんどの冒険者がギルドの依頼なんか受けずに湖に行ったわよ。ここ数日は暇でしょうね』
『ギルドマスターが、誰も依頼を受けねぇ!って泣いてたっす』
精霊の出現なんて、そこら辺の酒場に行けばいくらでも転がってる与太話だ。普通なら誰も信じない。
だが今回は奴隷のレイラがいた。ギルドへの依頼達成報告の際、奴隷の首輪によって嘘をつけないレイラにキッチリ精霊の出現報告をさせたのだ。一番混んでる時間帯を狙って公衆の面前でリザードマンを倒せば加護をくれると言っていたことや、水の精霊と会った詳しい場所も包み隠さず報告させた。
「今頃湖ではリザードマンの大量虐殺が始まってるだろう。
これであのクソ精霊の思い通り、リザードマンはいなくなる。もっともリザードマン以上の人間が水精霊の領域とやらに押し寄せて水の精霊を探してるだろうから、相当騒がしくなってるだろうよ」
女性陣からヤジが飛ぶ。
『そんな嫌がらせのためにギルドに報告したの?』
『ケツの穴が小さい男ね』
『最低っす』
『それはどうかと思うよ、マスター』
散々な言われようだが、この報告にはもう1つ意味がある。いや、釣れれば意味が出てくるといったところか。
『さあ、おしゃべりはここまでだよ。ウチのバカで最低な弟子に軟膏のレシピを教えてやるよ』
「師匠まで…」
・・・・・・
ー 数日後 ー
『ガレス、いい加減しろよ。今度は何をやらかした?』
いきなりギルドマスターに執務室に連行されて開口一番そんなことを言われた。
知らんがな。何が起こってるのかすら言わんのかい、この筋肉は。
「何の話か分かりませんが、全く身に覚えがありませんね」
『身に覚えがないのに侯爵家から呼び出しがかかるわけねぇだろ』
「侯爵家?」
オレは精霊の出現報告の際、出現フラグ(恐らく魅力500以上)についてはレイラに伝えていない。
フットワークが軽い冒険者はすぐに湖に行くと予想できた。貴族が出てくるのは、その冒険者の結果を確認してからになる。冒険者の捜索結果が良くなければ、貴族は水精霊と遭遇したオレたちが何か特別な行動をしていないか確認するためにコンタクトしてくるだろうと予想していたが、まさか侯爵家が釣れるとはね。
『そうだ、フェアリーテール侯爵家からお呼びがかかったんだよ、お前にな』
「これはまたファンタジーな家名ですね」
『フェアリーテール侯爵家の歴代当主は妖精との契約してたり、精霊の加護を授かっていたりと妖精や精霊とつながりが強い家だ』
「だったら先日の水精霊の件で呼び出さたってことでは?」
『その可能性が一番高いだろう。だがお前は信用ならんからな』
「人をトラブルメーカーみたいに言わないでください」
『十分トラブルメーカーだろうが!いいか、侯爵家に失礼がないよにしろよ。侯爵家相手じゃオレの力なんてないようなものだからな』
「分かっています。さすがに侯爵家に対してはやらかさないですよ」
そう答え、侯爵家が指定した屋敷に向かうのであった。




