第38話 水の精霊
『水魔草?何に使うんだい?』
薬師でもない限り使うとこはないからレイラが知らないのも無理はない。
「火傷に効く薬の原材料になる草だ。今度、騎士団がどこぞの岩場に沸いたサラマンダーを討伐に行くらしい。そこで師匠のところに薬の作成依頼があったけど材料が足りなくてな、師匠からオレに水魔草採取の指名依頼が来たわけだ」
『その水魔草の生息域は分かってるのかい?』
「この前オーガを狩りに行った場所あるだろ。そこから山を1つ越えたところに湖があるんだが、そこらしい」
『ふーん、街道からは行けないのかい?』
「街道の方から湖に行こうとするとリザードマンの巣があってな、高確率でリザードマンと戦闘になるらしい」
『ウチのパーティーじゃリザードマンには勝てないね』
「だろうな。鱗を矢で貫ける自信がない。だから山側から行くのさ、オーガなら何とかなるしな。それじゃ採取に行くとするか」
『了解だ、マスター』
・・・・・・
『ようやく湖に着いたねぇ。さすがにここまで山奥だと手付かずの自然が広がっていて神秘的だわ』
「そうたな、水魔草も浅瀬に繁ってるし採取し放題だ。レイラは気配察知で敵が近づいてこないか確認しててくれ」
『・・・!!マスター、湖から何か来るよ!』
水面がゆっくりと盛り上がり、次第に女性の姿をかたどっていく。湖面も薄っすらと光り、周りは若干の霧に包まれている。明らかに人外の存在だ。だが邪気は感じない。
『水の精霊かい?』
レイラがつぶやくと、美しい少女の姿になった何かが答える。
『ええ、アナタの言う通り、私は水の精霊よ。ここに人が来るのは久しぶりでね、おしゃべりしたくてついつい出てきてしまったわ』
ふーん、精霊で確定か。思いの外、友好的なんだな。精霊といったら滅多に人前に現れないから人を毛嫌いしてるかと思った。
『アナタはとても不思議な雰囲気を纏っていますね。何と言うのでしょうか、高貴な感じがするというか、妙に惹きつけられるというか・・・』
なるほど、精霊出現のフラグは魅力500以上ってことか?
「生憎オレたちは仕事でここに来ててね。長くおしゃべりに付き合っている暇はない。もし用件があれば可能な限りきくぜ」
『あら、おしゃべりできないのは残念ね。でもアナタの予想通り頼みごとがあるの。この湖に住まうリザードマンが最近増えてきてね、私たちに水の精霊の領域に度々侵入してくるの。私たちが直接相手をしてもいいのだけど、同じ属性には魔法が効きにくくて面倒なのよだから。ちょっとリザードマンの数を減らしてくれないかな?』
「断る」
『・・・は?今なんて?』
「だから、断るって言ったんだ」
『あぁ、そうか、そうよね。いくら何でもタダでお願いするのは虫が良すぎたわね。もしリザードマンを減らしてくれたら私の加護をあげるわ。それならいいでしょう?』
「おぉ!加護って凄いのか?」
『それはもう凄いわよ。水魔法の威力が上がるし、水属性の攻撃はダメージが半減するわ』
「へぇ~それは凄いな」
『でしょでしょ?やる気出た?じゃぁ早速リザードマンを・・・』
「だが、断る!!」
このセリフ、言ってみたかったんだよな〜
『・・・なんでよ、なんで断るのよっ!』
「その答えはいたってシンプルだ。オレたちではリザードマンに勝てないねからだよ」
『何言ってるの?ここに来るまでに狩って来たでしょう?リザードマンの巣が街道沿いにあるんだから!奴らを倒さないとここには来れないじゃない!』
「オレたちは山側から来たんだよ。リザードマンは一匹も倒してねぇ」
『山側はオーガの縄張りのはずよ、それを越えてきたの?』
「ああ、オーガなら何体か倒したな」
『オーガを倒せるならリザードマンも倒せるでしょ!どちらかといえばオーガの方が若干強いんだから!』
めーんーどーいー
超面倒くせぇなこの精霊。
面倒くさいけど説明してやるか、
「まずオーガは矢に毒塗って射るわけだ。かすり傷がつけば倒せるわけだが、リザードマンに通用すると思うか?しねーよ。矢なんて鱗に弾かれて終いだ。
そして見てのとおりオレら2人は斥候系だ。スピードで相手を翻弄する戦い方が得意なわけだ。リザードマンが棲息する水場で人間が素早く動けると思うか?絶対無理だぞ。
オマケにリザードマンの上位種は水魔法をつかうだろ。水場で水魔法使う相手と戦うとかありえねーから。以上、お前のお願いを断る理由だ。文句あるか?」
『お前なんか・・・お前なんか・・・』
「あ?」
『お前なんか嫌いだぁー!!』
「なっ!?」
水の精霊がオレに向かって何かを放った。オレの体が光る。。。ダメージは・・・ない。いったい何が起こった?ステータスを確認する。
「あのクソ精霊、なんてこしやがる!」
そこには加護が1つ追加されていた。
水精霊の呪い




