第34話 レイラ ep1(レイラside)
私の名はレイラ。
サンティア神聖国では名の通った盗賊さ。いや、盗賊だった。
ちょっとばかし仕事に励んだら神聖騎士団の連中に目を付けられちまって、仲間を皆殺しにされた挙げ句、私はとっ捕まって奴隷に落とされちまった。
それでも運は良かったのかね。神速の二つ名を持つ聖騎士ソフィアとやり合って生き残れたんだから。
いや、運が良かったら奴隷になんか落とされないか。犯罪奴隷なんて死んだ方がマシなんてことは普通ある。しかもソフィアとの戦いで私は片方の胸を失った。そんな女を愛でる酔狂な男なんていないだろうからね。
傷が完全に癒えた頃、私は競売にかけられた。奴隷商だけが参加できる奴隷市だ。昔はここに商品を卸す側だったのに、情けないことに商品に成り下がっての登場だ。見知った奴隷商からは因果応報だの、ザマぁないだのと声が聞こえてきやがる。チッ、散々稼がせてやったのに恩知らずな連中だよ。
競売では当然胸の傷は晒される。不良品とか売り物にならんとか、いちいち聞こえるように言いやがって胸糞悪い。そう思ってると1人の初老の男が私を競り落とした。何考えてるんだろうね、この爺さんは。
私を競り落としのはハンスという隣の国、リンドブルム王国の奴隷商だった。奴隷は商品ということで思っていたより大切に扱ってくれた。奴隷として売られるまで、それなりの生活が保証されるのは悪くない。
帰りの道中、暇だったので私を買った理由を聞いてみた。
『戦闘が出来る奴隷が不足していましてね、その補充のために買ったのです。そして小耳にはさんだのですが、アナタはあの神速と戦って生き残ったというではありませんか。
もしかして、スキル盗むがLv10に達した際、特殊効果を得たのではありませんか?』
この爺さん、他のボンクラな奴隷商と違って優秀だわ。
スキルが上限に達すると稀に特殊効果を得られる時がある。
「ええ、その通りよ。私は攻撃の威力を盗むことができる。簡単に言えば条件次第にだけど攻撃を無効化出来る可能性があるってことね。さすがにあの神速の一撃は無効化できなかったけどさ」
『いえ、神速と対峙して生き抜いた。それで十分ですよ』
それから2ヶ月が過ぎた。
何度か客の前に出たが、私の胸を見ると誰もが私から興味を無くす。
ま、ハンスさんところで商品としてのんびり出来るからいいけどさ。
そして今日も客の前に出るように言われた。
今日の客は随分と若いわね。隣には私より若くて綺麗な奴隷。どうせこの若い客も私の胸を見たら興味を無くして私を選ぶことはないだろう。
若い客とハンスさんが何度か会話した後、その若い客が言い放った。
『ハンスさん。レイラを購入します』
え?隣の若い女の子ではなく私?
本当に?一体この客は何を考えているのだろう?
そう疑問に思いながら、不安も抱えていた。ハンスさんのところいれば一定の生活は保証される。
だがこの客が私をどう扱うかは未知数だ。
一旦手続きのため奥に下がったとき、その不安を知ってか知らずから、ハンスさんが優しく語りかける。
『レイラ。これでも私はこの道40年で、人を見る目はあると自負しています。あのお客様はきっとアナタを大切にしてくださいます。だから安心してください。』
不覚にも不安が顔に出ていたらしい。情けないねぇ、盗賊だったときこんな弱気な考えは1度たりともしなかったじゃないか。
そうさ、誰が主人になろうが私は私だ。今まで通り図太く生き抜いてやるさ。




