第33話 奴隷商
品の良さそうな初老の男。その男について長い廊下を歩く。
清潔な廊下の先にある応接室に入ると華美にならない程度の調度品がいくつか飾られている。どこかの貴族の邸宅といわれれば納得してしまうような雰囲気の部屋。
『本日は当店にお越しいただき誠にありがとうございます。
私は奴隷商のハンスと申します。
以後、お見知り置きを』
そう、ここはバスクで一番繁盛してる奴隷商の館。どんな奴隷がいるか今から楽しみだ
『まず、ガレス様は転生者とのことですので、この国の奴隷制度について説明させていただきます ー』
この世界には借金奴隷と性奴隷と犯罪奴隷がある。
借金奴隷はお金がなく、自身を借金の形として身売りした者のこと。借りてるお金分の働きをすれば奴隷から解放される。
性奴隷は基本的に借金奴隷と同じだが、早期の奴隷解放を望む者が性行為を許可した場合の奴隷だ。
犯罪奴隷は重い罪を犯した者が罰とて奴隷に落とされる場合だ。よほどのことがない限り奴隷から解放されることはない。
借金奴隷と性奴隷は前世で言うところの人権があるが、犯罪奴隷に人権はない。犯罪奴隷だけは理不尽に扱っても、殺しても罪に問われない。
奴隷がどの種類の奴隷か魔導具の首輪で判断する。この首輪は結構優秀で奴隷が規則に反する行為(主人から逃走など)をしようとすると首が絞まり行動を制限する。
そして主人が規則に反した場合(借金奴隷なのに性行為を強要するなど)、色が変化し主人側の違反を知らせる。
嘘がつけないようになっており、嘘をついた場合は怪しく光るし、奴隷商に限り奴隷のステータスも読み取れる。
オレが望むのは犯罪奴隷で戦闘もこなせる女奴隷。そして次点で性奴隷。借金を返し終わったら奴隷ではなくなってしまうが、夜の帝王があれば女性を虜にするなど容易いことだろう。
オレの望みをハンスに伝え、条件に合う奴隷がいるか尋ねる。
『そうですな、そもそも女性で戦闘をこなせる奴隷は数が少いので条件に合う奴隷は2名しかおりません。元冒険者の性奴隷と元盗賊の犯罪奴隷です。ただ犯罪奴隷の方は少々問題がありまして・・・』
「とりあえず連れてきてくれないか」
『かしこまりました』
・・・・・・
こちらがご希望の条件を満たす奴隷となります。そしてこれがこの者達のステータスとなります。
奴隷商は首輪を付けた者達のステータスを確認できる。早速ステータスを確認してみる。
名前:ダニエラ Lv:39 年齢:19
スキル:剣術Lv5 盾術Lv5 風魔法Lv5
【能力値】
力:154
耐久:149
俊敏:188
知力:125
精神:127
器用:176
魅力:201
運:52
体力:386
魔力:231
良くも悪くも平均的だな。
前衛から中衛を過不足なくこなせるであろうスキル構成。
そして女とし美しくあろうとしているのだろう。魅力が200を超えている。風俗嬢と比べれば劣るだろうけどあちらはプロ。ダニエラは十分魅力的だ。だがオレの戦闘奴隷としては魅力は要らない。
もう1人は?
名前:レイラ Lv:68 年齢:27
スキル:気配察知Lv10 短剣術Lv8 隠密:Lv6 盗み:Lv10(封印)
【能力値】
力:84
耐久:91
俊敏:412
知力:96
精神:123
器用:324
魅力:88
運:32
体力:456
魔力:121
ほう、完全に俊敏特化。典型的な盗賊か。気になるところは盗みの封印と、女性なのに魅力が100以下なことか。外見的にダニエラと比較しても遜色ないと思うのだが?
ハンスさんに聞いてみるか。
「ハンスさんレイラの方の盗みの封印というのは?」
『犯罪に使われる可能性があるスキルは使用制限が付きます。制限の解除は貴族に雇われた場合か、冒険者ランクB以上に雇われた場合に可能です』
「なるほど、あともう一つ。レイラの外見は十分美人に見えますが、魅力が100以下です。何か理由があるのでしょうか?」
『理由はございます。先ほど申し上げようとした問題に起因します。レイラ、服を捲りあげて胸を見せなさい』
レイラが服を捲り上げると、左の肩口から袈裟斬りにされた大きな傷跡が露わになる。よくこの傷で生きていられたと思うくらい広範囲の傷。つまり左胸がないのだ。
ハンスさんが語る
『ステータスの魅力は外見的特徴に直結いたします。傷があれはそれだけ女性としての価値が下がるということでございます』
なるほどな。
正直、自身をどのように強化するか迷っていた。性奴隷がもっと大勢いてどのステータスでも意図的上げられる状況なら平均的にステータスを上げるのもありかと思っていたが、バスクで一番繁盛してる奴隷商でも戦闘をこなせる女奴隷は2人だけ。
そして美意識が少しでも高ければダニエラのように魅力が一番高くなるだろう。となると、夜の帝王でステータスを平均的に上げるというのは現実的ではない。
この状況で例外と言える存在が盗賊だ。盗賊は定期的に狩られていて数は少ないが女盗賊もいる。彼女達は普段の生活で美貌より生存を優先した生活を送っているはず。魅力より俊敏か器用のステータスが高いはずだ。そして女盗賊はほぼ犯罪奴隷に落とされるだろう。
そうなると当面は女盗賊をメインに奴隷を買って、斥候系のパーティーを組む方が現実的だ。敵を見つけることに特化した斥候ならオレ自身の生存率も上がるはずだしな。
もし他の都市の状況を確認して意図した奴隷が買えるようなら方針変更してもいい。今は女盗賊をメインに雇うことにしよう。
ついでに言えば、傷物でかつスキルが封印されているレイラの方が値段も安いしな。
「ハンスさん。レイラを購入します」
『差し出がましいようですが、貴方様の弓士も大別すれば斥候系に分類されるでしょう。
レイラは元盗賊で、パーティーの役割は斥候となるでしょう。役割が被りますが、その点はよろしいのでしょうか?』
「構いませんよ。考えあってのことです。」
『かしこまりました。では手続きを進めさせていただきます』
さて、初めて夜の帝王で魅力意外がアップする。ちょっと楽しみだな。




