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第21話 絶体絶命

オレは田中と一緒にバスクの西にある森に来ている。主に出現するモンスターはゴブリンだ。繁殖力が人間の数十倍なので常に討伐依頼がある。この世界のゴブリンはおおよそ12〜13歳くらいの人間と同程度の強さ。単体なら油断しなければオレ1人でも倒せるだろうが、オレはレベル1だからな、安全を確保するため田中とパーティーを組んだのだが・・・何かおかしい。

さっきから一匹たりともゴブリンに遭遇しない。

そして田中だがどんどん森の奥に進んでいる。まるで一度来たことがある道を進んでいるように見える。

田中はバスクにきてから初めての討伐依頼だと言っていたはずだ。

何かがおかしい・・・




  !!!!!




くそっ!急にオレの「不意打ち耐性」が反応した!今まで経験したことがないヤバい反応だ!


「田中!まずいぞ完全に囲まれている!!この反応は・・・ゴブリンじゃない?」


そこら辺の木の陰や、草むらからガラの悪い連中が出てきた。盗賊か?後ろからも出てきやがった。逃げ場がない。


「おい!田中・・・!?」


田中は無防備にガラの悪い連中に向かって行き、そして敵であるはずのやつらに背を向け・・・俺の方を向いた。


さすがにここまでくればオレにも分かる。田中がこの連中を手引きしてオレを誘い込んだんだ!


『教えてもらった通りだ。不意打ち耐性持ちをハメる方法、おびき寄せる役と殺す役を分担する。つまり殺意さえなければ不意打ち耐性は反応しないのさ』


確定だ。田中はオレを殺すためにオレをおびき寄せた。だが何のために?どういう理由でオレを殺そうとしている?王都の人間に恨まれる覚えはないぞ。


『神託が下ったんだ』


『500年前にある転生者が暴走し、大勢の人が殺された」


どっかで聞いた話だな、おい!


『その暴走した転生者に力を授けた神が、再び転生者に力を与えた。と』


オレのことか。


『再び悲劇起こる前にその転生者を殺せと!つまりガレス、お前を殺せと神託が下ったんだ!!』


なんとなく読めてきた。

500年前の天使の試験で残念天使の転生者が大暴れして大量の人間を殺した。

恐らく、その殺された人の中に、田中に神託を下した天使の転生者も含まれていたんだろうな。

500年前の恨みかよ!完全にとばっちりじゃねーか!!


「オレは無害なレベル1の冒険者だぞ。お前らの邪魔なんざしようと思わないから見逃して欲しいもんだね」


『ダメだな』


田中ではなく、別のマッチョな男が

答える。


『Cランクパーティー"クルセイダー"のリーダー、ダンだ』


Cランクなのに、どこの馬の骨かも分からん転生者の神託を鵜呑みにするバカがいるのか!


『神託なんか関係ない。お前はオレの女であるニーナに手を出した。だから殺す』


・・・ただのバカだった。付き合ってるかどうかの事実確認すらせずに殺すのか。

再び田中が口を開く。

『お前は、邪悪な転生者だからな。いたるところで恨みを買っていた。神は神託でその恨みを全てをオレに教えてくれた。オレはその恨みをこの場にまとめただけだ』


「オレはそんなに恨みをかっていたか?」

ここ3ヶ月真面目に生きてきたはずだが。


『ああ、買ってたね。ダンの女を奪っただけでなく、不当にポーションを安く売り薬師ギルドに迷惑をかけた。そして前世知識を悪用し、自分に都合のいい店だけ流行らせ利益を独占している』


はぁ?ステラさんの話だと既に薬師ギルドとは話がついているはずだ。


それにダルさんの店はサービスを良くしただけで商品自体は他の店とさほど変わらない。サービスが悪い店が淘汰されるのは必然だろ。


『その間違いを正すため、薬師ギルドと被害を受けた魔導具屋の店主が裏稼業を生業としてるモレロ一家(ファミリー)にお前の殺しを依頼した』


田中よ、敵となったオレが言うのも難だか、神託に受けた自分に酔いすぎだろ。いくらなんでもしゃべり過ぎだ。

と思った瞬間、モレロ一家(ファミリー)と思われる集団から田中に脅しがとぶ


『おい、田中と言ったか?

ウチの一家(ファミリー)は依頼人を明かさないポリシーがある。ベラベラしゃべり過ぎだ。殺すぞ』


『お、オレは神託に従っているだけだ。どうせコイツは死ぬわけだし、多少暴露しても問題ないはずだ』


『・・・ふん、まぁいい話を進めろ』


『と、とにかく、神託に従いこの場でお前を処刑する!!』


やれやれ。いくら田中がポンコツとは言え、20人に囲まれていて、確実に20人全員がオレよりレベルが上だ。はっきり言って詰んだ。

普通に考えればそう思うだろう。


だがたった一つだけ、この状況を切り抜ける方法がある。

オレはこの方法を3ヶ月かけて準備してきた。だから感謝しよう。この方法を準備するキッカケを作ってくれたアイツに。

もう一度、最大限の感謝の言葉を贈ろう・・・









    「川村グッジョブ!!」






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