第15話 受付嬢のお茶会(ニーナside)
私はニーナ。冒険者ギルド バスク支部の受付嬢だ。今日は同僚のシスティーナと後輩のルカと休みが合ったので、街のカフェでお茶をしている。会話のネタは専らシスティの婚活だ。
『Aランクパーティーの"黒点虎"が王都に移って以来、ウチの支部はパッとしないわねー、いい男がいないわ』
『システィ先輩、リーダーのアレクさん狙ってましたからね〜
しようがないですよ、貴族に気に入られてちゃったんですから』
『貴族って本当に碌なことしないわね。はぁ、アンタは楽しそうね、ルカ。羨ましいわ』
『私の彼氏は騎士団員ですからね。よっぽどのことがないと異動はないですし。あ、彼の知り合い紹介しましょうか?』
『騎士団員か〜給料固定でしょ?
私は高ランク冒険者ゲットして玉の輿狙ってるのよ。諦めないわ』
「彼氏ねぇ・・・」
『何よ、ニーナ。狙ってる男でもいるの?』
「あなたじゃあるまいし、いないわよ。ただ、ちょっと気になる子はいるのよね」
『え!?誰ですか、誰ですか、ニーナ先輩』
『当ててあげようか、転生者のガレス君でしょ?』
『えぇ、ニーナ先輩って年下の男の子が好みなんですか?
あ、転生者だから見た目通りの年齢じやないか』
「狙ってるとかそういうのじゃないって。ちょっと不思議な感じがするだけよ」
そう、不思議なのよ。
彼がギルドを訪れた初日、魔導具量販店の販売員という、おおよそ誰も受けそうにない依頼を受けると言ってきた。それから1ヶ月間街に引きこもっていた。そのせいで周りの冒険者達からウチのギルド始まって以来のチキン野郎と言われるようになった。
でも1ヶ月過ぎたあたりから変わり始めた。人気がない薬草採取の依頼を受け始めたのだ。そして、短い期間で薬品精製のスキルを取得したらしく、ポーションも作るようになった。最下級ポーションではあるものの、ポーションの品薄が若干解消されたのだ。
未だにレベルは1らしいけど、それ以降、彼を悪く言う人は少しずつ減っている。
でもそれだけではない。理由はわからないけど、上手く説明できないけど、彼には人を惹きつける何かがある。まるで、舞台俳優や貴族みたいに魅力が高い人と同じ雰囲気を感じるわ。
『ま、ニーナには幼馴染みのダンがいるからね』
『ちょっ!システィ先輩、それ禁句・・・』
「あ?何か言ったか?」
システィ&ルカ
(怖っ!)
そう、私には最悪の幼馴染みがいる。Cランクパーティー"クルセイダー"のリーダー「ダン」だ。
強さだけで評価するなら優秀でCランクでも上位に位置しているが、頭と素行が絶望的に悪い。
メンバーは他に5人いるが、こいつらも、類は友を呼ぶの典型的な例と言わんばかりに頭と素行が悪い。ウチのギルドのトラブルの4〜5割くらいは、こいつらが絡んでる。
実力はあるのにランクアップできない見本のようなパーティーだ。完全に名前負けしてる。
そのダンが『ニーナはオレの女だ』と公言してる。いい迷惑よ。
一度、こっそり誰にもバレないように男性と付き合ってたことがあった。1年くらい経った頃、ダンにバレたのだけど、即、クルセイダーにリンチされた。当然許されることではなく、犯罪者の一歩手前までいったけど、今までの冒険者としての実績があったからCランクからDランクへの降格のみで済んだ(今はCランクに返り咲いている)。いっそ牢屋にブチ込まれればよかったのに。リンチされた彼からは『命が惜しい』と別れを告げられた。
それ以降、私を本気で口説こうする人はいない。。。
婚期を逃す前に街を出ようか本気で考え始めてる。
「はぁ〜、ダンのやつ・・・」
システィ&ルカ
(・・・・・・)
「死んでくれないかな」
システィ&ルカ
(こっっっわっ!!)