第9話 異世界初日3
『一緒に依頼をこなさないか?』
転生者か。
現状、戦闘力を上げる手段がないから、パーティーを組むのもありだがどうしたものか。
「オレはガレス。
アンタ日本人か?」
『ああ、そうだ。
そういうアンタは外国人か?』
「いや、体を再構築する際に外見を変えた」
『そんなことが出来たのか』
「女神様から説明がなかったか?」
『なかったな。
とにかくモンスターを狩りまくれと言われた』
ふむ、コイツの天使はシンプルな指示しか出さずに異世界に送ったのか。
『で、どうだ』
「依頼内容は?」
『ゴブリン討伐だ。
オレは昨日こっちの世界に来てな、昨日も依頼を受けて何匹か狩ったぜ』
「アンタのスキルを聞いてもいいかい?」
『身体強化だ
前世は体が弱くて20歳になる前に死んだ。強い身体が欲しいと願った結果さ』
理想的な仲間かもしれないー
だが・・・
「すまないが、またの機会にするよ」
『そうか、わかった。
じゃ、また今度な』
川村はそう言って去って行った。
ソロで依頼をこなすのだろう。
オレが誘いを断った理由。
それは何の意味もないただのこだわりだ。
「異世界の最初の依頼っていったら、薬草採取一択だろ」
オレは薬草採取の情報収集を始めるのであった。
・・・・・・
薬草の群生地の情報、出現する可能性があるモンスターの情報などあらかた把握し、依頼ボードから依頼票を持ってニーナさん話しかけたその時だった。
ギルドの入り口から若い冒険者の報告が聞こえてきた。
『さっき出ていった転生者が死んでたぜ。死体の損傷具合から見るにゴブリンに集団で襲われたのだろう。ギルドカードを回収してきたから確認してくれ』
・・・は?
川村死んだ?
そんなあっさり死ぬのか。
『あの・・・ガレスさん?
大丈夫ですか?』
ニーナさんが心配そうに話しかけてくる。
『えっと、ガレスさんのせいではありません。だから気にしないでくださいね』
オレのせい?
あぁ、さっき川村の誘いを断ったのを見てたのか。
一緒に行けば川村が死ぬことはなかったと、オレが川村の死の責任を感じているようにニーナさんには見えるわけだ。
ニーナさん、、、
全っっっ然、違います!オレはそんな良い人間でありません。
むしろこの世界の厳しさを他人の死で知ることができてラッキーと思ってます。川村グッジョブと思ってます。
異世界転生して浮ついていた心が一気に冷めた。ここからは徹底的に"安全"を最優先する!!
「ニーナさん!!」
『は、はいっ!』
「薬草採取の依頼はやめます!
武器も防具も今は使いませんのでお返しします!」
『えっ?・・・えっ?』
「そして」
オレは依頼ボードに走り、ある依頼票を取ってくる。
「この依頼を受けます!」
『はぁ、わかりました』