■内側:ただいま
タケルの背にまたがって、たてがみに埋もれていると、急に睡魔が襲ってきた。
「おい、寝るなよ。危ないぞ」
タケルがそう言ってるのが遠くの方で聞こえるが、眠すぎて目を開けていられない。
「おい、寝ちまったのか?」
タケルはルカが落ちないように、たてがみをどうにかこうにかルカに巻き付け体に縛り付けて、あまりスピードを出さないように、ゆっくり飛んだ。
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目が覚めた時、辺りはほんのり明るくなっていた。一瞬自分がどこにいるかわからなかったが、ああ、ここは、懐かしいあの場所だ、ということにすぐ気が付いた。標高四二三メートルの、いつもの場所。周りを見ると、龍がとぐろを巻くように眠っており、ルカはその真ん中で眠っていたようだ。龍のうろこは固いけれど、暖かい。
ルカはとぐろの中から抜け出して、少し歩いた。
「みんな、ただいま」
そう言うと、島がおかえり、と答えてくれてるような気がした。
タケルが目を覚ますと、ルカはすでに起きていて、朝日が昇ろうとしている海面を眺めていた。
タケルは龍の変化を解き、いつものように司の姿に変化した。
「もうすぐ日の出か」
今や仲間といっても過言ではないルカに何気なく話しかけたとき、ルカはタケルの方へ一歩近づき、「じゃあ、外すよ」といって首に手を伸ばした。
タケルは一瞬何を言われたのかわからなかった。
「何を外すんだ」
「何をって、錠だよ。約束だろ?」
ルカは当然のようにいうので、タケルは思わず退いた。
「まだ、いい」
「え?」
「外さなくていいっていってんだ」
「なんで?」
不思議そうな顔をするルカを見て、タケルは少々心が痛んだ。確かにすべてが終わったら首の錠を外す約束だった。何もおかしなことはない。でも、なんだろう。こんなにあっさり外すべきものではないだろう。
「また行くんだろ? 外側に。その時に俺が必要だろ」
「そうだけど……」
「いずれにしても、境目には、誰かがいなきゃならんからな」
したり顔で言ってみたものの、タケルは自分の発言がよくわからなかった。
あれ程待ち望んだ自由が目の前にあるのに、それを掴まないなんて。いや、あえて、掴まなかったんだ。
錠がなければこいつは俺を呼ばない。なんらかの方法で、次の門番を使役するとかして外側の世界へ行くのだろう。
それは、いやだ。
俺は、こいつの今後を見たいんだ。
そのためにこの錠が必要なら、不自由も甘んじて受け入れよう。
ルカは不思議そうな目でタケルを見る。
「ねえ、ほんとにいいの? あんなに外したがってたのに。外さなきゃ、不自由なんでしょ?」
「その不自由を、受け入れたんだ、俺は」
そこまで言われると、ルカは引き下がった。
「わかったよ」
もうすぐ朝日が昇る。遥か遠くに見える地平線からは、今日もたくさんの荷が流れてくる。浜辺に溢れる不要の分別をしに、もうすぐドミニクがやってくるだろう。
いつもの朝が始まろうとしている。




